ほんとうに大切なもの







「・・・・あのよ、昨日のメール何?」

「何とは何かな」

「嫌がらせか」

「気にいらなかったかい?」

















 6月21日の夕方。

 珍しく自宅へ真っ直ぐ戻った快斗のパソコンに届いていた、1通のメールがあった。



 それは全然、手紙じゃなくて。

 詩のような、小説のような・・・・まあ、綺麗な文章。





 差出人はwhite horse。

 ベタだが、白馬の事。

















「気にいる? お前神経麻痺してんじゃねえのか」

「・・・酷い言われようだな」

「どうせどっかの本だかに載ってたんだろ?」

「ええまあ。昨日図書館に行った時に目に付いた本があってね―――――・・・ちょっと考えさせられたんだ」

























 にっこりと探は微笑う。

 快斗は瞳を閉じた。





















「ふーん・・・・」

「君は欲しいものは手に入れる主義だったな」

「・・・何、その言い方」

「いや。訊ねてみたかい?」

「誰にだよ」

「考えただろう? あのメールを見て、一瞬でも」























 ・・・声が答えを求めている。







 快斗は仰向けのまま、ゆっくり瞼を開けた。





























「―――――・・・・さあな」

「相変わらず素直じゃないなあ」

「解ってねえのはお前じゃん」

「は?」

「・・・とっくに『そば』にきてんだからさ。今更考えねえっての」



























 そして枕に頬をつける。













 ・・・・・至近距離の探の表情が、僅かに赤くなるのを快斗は見逃さない。



































「ちゃんと言えよ」

「・・・何を」

「言え」

「―――――・・・・・君にはかなわないな」





























 少し上体を起こし、探はその身体を包んだ。

 自分よりも色の白い肌に瞳を細め、快斗は腕を廻す。























 ・・・その髪の毛からは、太陽のにおいがした。







































 



「――――――――・・・・・っっっ!!! お前、日本語で言えよな!」

「フランス語じゃダメか」

「ダメとかじゃなくてだな!」

「意味解るんなら、良いだろう」

























 今日は6月22日。









 ・・・・でも、今は零時を廻っているからもう23日。































 ここは白馬邸。



 その中の、探の自室の――――――・・・・白いシーツと羽根布団の中。































 ・・・・もちろん、何も纏ってはいない。































「お前逢うたんびに性格変わってくよな・・・・」

「君にだいぶ鍛えられたからね」

「・・・脱がすのも早くなったし」

「Tシャツじゃなく黒のシャツにすれば良かったな。やっぱり、首が面倒だ」

「はいはい、もう解ったよ・・・今度それ買ってくれ」























 探は今日、快斗に服をプレゼントした。

 1日遅れのバースデイプレゼントだ。



 ・・・・夏用の帽子と、黒地にに銀のラインの入ったTシャツ。

 それにアイボリーの半袖のジャケットに、赤のストレートパンツ。

















 全て快斗の好きなニコル製だった。



 一体総額いくらだったんだろう・・・・・・・・?































「黒羽くん、お腹空かないか?」

「へった。」

「はい、チョコレート。」

「お。サンキュ~」

「・・・・・食べたら、一緒にシャワー浴びよう」

「お断り」



























 ぽん、と口の中に放り込まれたのは小さなホワイトチョコ。

 しかし続けて言った台詞に、快斗は冷ややかな瞳で答える。

























「いいじゃないか。減るもんじゃなし」

「だってそしたらお前またヤる気だろ」

「好きだろう? 風呂場」

「・・・声が響き過ぎんだよ!」

「僕しか聞かないのに」

































 今更何を恥ずかしがってるのやら。

 

 探は微笑うと、甘い匂いを放つ口唇を塞ぎ・・・・己の舌で、中の甘さを解かした。











































 ・・・・たいせつなものは今、この腕の中に。



 










































Fin