どれだけ行けば




「おお。でけーな」

「ん?」

「月。知ってたか? 今日は満月なんだぜ」

















 まだまだ暑い日が続く9月の半ば。

 黒羽快斗は、空を見上げて微笑う。







 ・・・・その横で白馬探は大きな欠伸をしていた。

















「何だよ寝てねーの?」

「流石の僕でも飛行機で熟睡は難しくてね」

「ファーストクラスの身分で何言ってやがる」

「・・・・・君には寝不足なんてなさそうだな」

















 冷夏だった今年が嘘のように暑苦しい。

 なのに探はスーツのネクタイを緩めもせず、涼しい顔して隣にいる。



 そうしてまたひとつ欠伸をした。



















「わざわざ迎えに来てやったんだ。メシおごれよ」

「本当に驚いたよ。まさか君がいるとは」

「ばあやさんに頼まれたら断れねえだろ――――――――――・・・・色々、世話になってるし」

「ああ、そう言えば暫く実家に帰ってると言っていたな」

「・・・・・息子さんが子供連れて来てるんだってな。嬉しそうだった」

















 新宿駅。

 夜遅くなっても人の波が消える事がない街に、2人は降り立つ。



 蒸し暑さが相変わらず身体に纏わり付きつつも、快斗は今朝会った白馬家の『ばあや』の表情を思い出した。





 









「悪かったな。君にも予定はあっただろう」

「あったけどもう済んだよ。今何時だと思ってんだ?」

「・・・・19時。まだ宵の口だ」

「満月の夜は大人しくしとかねえと――――――――――・・・・が起きるか解んねえんだから」

「は?」

「今日のは特にヤバそうだ。お前も気を付けろよ」

















 そう言って微笑う快斗の視線の先には、本当に言葉通りの月。

 紅く大きく、妖しい色を放つ月。



 こんなに蒸し暑いのに、探はどうしてか寒気を感じる。









 









「何ボーっとしてんだ」

「あ・・・いや」



























 出逢ってから数年。











 『怪盗キッド』という存在。

 それが、2人を巡り逢わせた。













 ・・・・・それがなかったら、一生知り合うこともなかっただろう。

























 工藤新一と肩を並べる、東の探偵である白馬探。

 数年前に事故死した父親の真相を探るべく復活した、怪盗キッド。





 











 相反する立場にいる彼らは―――――――・・・・



 本当ならば一番避けて通るべきの『友達』という関係を、この数年続けてきていた。
































Fin