空に架ける想い




 ここ数日、東京はすこぶる涼しい。

 というか寒い。



 黒羽快斗は、タンスの奥から引っ張り出して来たジャージを穿きながらくしゃみをした。















『風邪か』

「ん? いやちょっと寒いだけ」

『ちゃんと布団被って寝ているのか? 君の寝相は半端じゃないからな』

「・・・・・ケンカ売ってんのかよ」













 

 携帯電話に向かって睨む快斗。

 しかし言っている事は事実だから、何も言わない。



 朝の9時10分。















『ところで。今日は大丈夫だろうね』

「今日? なんか約束してたか」

『・・・・夜はパーティがあるから来てくれと言ってあっただろう』

「そーだったっけ」

『・・・・・・』















 着替え終わった途端に、快斗はまたベッドに転がる。

 昨日は遅くまで新一の家で飲んでいたから、どうにも眠いのだ。



 あくびをしながらつい目を閉じた。

















 ・・・・白馬は何も喋らない。

























「白馬」

『・・・・何だ』

「新一や服部に、宜しく言っといてくれな」

『どういう意味だ。来ないつもりか?』















 窓から見えるのは白い空。

 台風が近づいているからか、朝から結構降っている雨。



 







 ・・・・部屋が静けさに包まれている。

















 少しのち。

 快斗は微笑い、小さく言葉を出した。

















「――――――・・・・・実はさ。今日はウチもパーティやるって言ってて」

『え?』

「何でもヨン様も今日が誕生日なんだと。いやー『冬ソナ』で母さんがハマっちゃってさ~今、レンタルで色々昔のドラマのとか借りてきて見まくってるんだコレが」

『それって、韓国のあの俳優の事か』

「そ。近所のおばさん連中みんなで集まって、飲んで騒いで今日は夜遅くまでDVD鑑賞会。俺も色々手伝えって言われてんだ。だから悪いな」

『・・・・そうか』











 



 これは事実。

 ヨン様ことペ・ヨンジュンは、白馬探と同じく8月29日が誕生日なのだ。



 それを知った時・・・・・『微笑みの貴公子』ってのは生まれる日も同じなのかと、快斗は笑ってしまった。
 





















 白馬探は白馬警視総監の一人息子だ。

 よってその彼の誕生日には、毎年盛大なパーティが屋敷で行われる。



 去年までは快斗も呼ばれて出席していた。

 もちろん東西の探偵達も。



 今年もとっくに、招待状をもらっている。















 ・・・・・・・なのに当日になってのこの返事。













 探は、受話器の向こうで息を付いた。



















『黒羽君』

「んー」

『今から行ったら迷惑か?』

「は?」

『どうせこっちは夜からだ。それまでは、時間あるし』

「・・・・断る」

『行く。逃げるな』

「おい白馬! はく―――――・・・・・・おい!!」



















 探は短くそう言うとプッツリと電話を切る。





 ・・・・ベッドの上でしばらく呆然としていた快斗。

 しかし、はたと気付き慌てて着替え始めた。






























Fin