自分のマンションにいるはずの男が何故ここに?

 新一は、その声が平次と信じられない。


 



















 だから暫く黙っていた。

 すると扉の向こうの人物は息をつき、何か発信音を出す。



 途端に新一の手の携帯が振動を起こした。













 ・・・・そろそろと電話に出る。























「も・・・・もしもし?」

「『オラ。目の前のドア開けんかい』」

























 声が重なって聞こえる。

 やはり、平次だった。





STUDY AFTER SCHOOL[02]







 でも。



 ・・・・・・こんな姿を、見せられる訳がない。

 





















「出来るわけ・・・・・ねえだろ」

「そんな状態なのにか? 解放、さしたるで」

「!」

















 確かに。



 足音の主が平次だと解り、冷めたはずの身体が熱さを取り戻してきている。





 しかも今度は生身の平次だ。

 今の新一は、この身体をとにかく落ち着かせないことには外に出られない。












 ・・・・・・・・・だから鍵を開けた。





 



























 数時間ぶりの平次の顔を新一は仰ぎ見る。

 しかし次の瞬間、恥ずかしさのあまり視線を逸らした。



 携帯をポケットにしまいながら、平次は霰もない格好の新一に目を奪われる。

 ごくりと、喉を鳴らした。





 ジーンズを膝下まで下ろし座っている姿が何とも言えない。


 狭い個室に入った平次は、そのまま鍵を閉めた。
















「・・・・・・誰が今風呂上がったばっかだって?」

「まあまあ」


「って事はどこかで見てたのかよ。悪趣味・・・・・・」


















 微笑いながら、平次は新一の顔を覗き込んだ。







 ・・・・・・・・耳まで赤くなっている。























「・・・・・・これ以上は俺も我慢でけへんわ。行くで」

「んっ・・・・・・」



















 噛み付くように唇を重ねる。

 持っていた携帯を握る力もなくなり、新一はゆらりと腕を下ろすとそれを足下に転がした。
  








 ・・・・・・両手で平次の腕にしがみつく。


























「・・・・・っ・・・あ・・・・・」

「むちゃくちゃ感度ええやん・・・・・・・電話でこんな、感じとったんか」

「うるせえ・・・・・・責任、とれ・・・・・」

「望むところや」

















 首筋に、鎖骨に唇を降らせながら。

 平次は新一のシャツのボタンを手際よく外して行く。
 


 現れた白い肌。

 それは蛍光灯の人工的な光の下で、妖しく揺れていた。 


























 服は脱がさず前だけはだけさす。











 ・・・・・・・・その姿は、全裸よりも遙かに艶めかしい。































 身体を起こし蓋の上に座らせる。

 既に外気にさらされている新一のものを、平次は口に含んだ。



 ・・・・・次にひざまずく形で新一のものに刺激を加え始める。

 絶頂寸前の新一自身は、2、3度歯を立てられただけで放出してしまった。




 大きく喉を鳴らしながらそれを飲みきった平次。

 瞳を閉じ、余韻を感じている新一の腰を撫でる。











 いきなり感じた冷たい感触。



 新一は、びくりと大きく身体を反らした。































「・・・・・・・・・・そろそろ俺も限界や」








 そう言いながら平次はベルトを外し、準備万端な自分のものをさらけ出す。

 次に新一の足を抱え目指す場所へ突き刺した。

























「────────っ・・・・!!」





















 静寂なこの空間に、淫らな音と息遣いが響く。






















 やがて絶頂を迎えた二人。





 ・・・・・・・・・・互いの鼓動を感じながら、口付けを交わした。






























ひとくぎり

























 そそくさと服の乱れを直して個室を出る。

 目の前の鏡に映った自分に、新一は反射的に瞳を反らした。



















 ――――――――――・・・・・・・こんな所で何やってんだ、俺は。



























 軽い自己嫌悪。






 やっぱり俺はおかしいのかも知れない。

 何度も何度も手を洗いながら、大きな息を付く。





















「・・・・・俺車やから送ってくわ」

「ひとりで帰れる」

「そないな顔して、電車に乗るつもりなんか」

「そんな顔・・・・・?」














 新一は解っていない。

 自分が今どれだけ、危うい表情をしているのか。
















「・・・・やっぱ行かせられへんな」

「ちょ・・・・・おい服部!?」











 腕を掴み強引に外に連れ出す。

 停めてた車に新一を押し込むと、さっさとエンジンをかけ車を走らせた。
















「どうしてそう強引なんだ!? 俺の都合も考えろ!」

「何か問題でもあるんか」

「明日までの課題が終わってないんだ。ここんとこ・・・・・・家に、帰ってねえから」


















 本当だ。

 提出しないと、単位がもらえない。

















「・・・・そら悪かったな。ほんなら、俺も手伝うたる」















 そう言うと車線変更して右に曲がる。

 その乱暴な運転に、新一は慌ててシートベルトを締めた。














「なに、怒ってんだ・・・・・・」

「別に怒ってへん」













 明らかに不満な表情。

 しかし新一は、『怒るんならこっちだろが』という目で平次を睨む。



 すっかり日が落ちて薄暗くなった街並み。

 何となく会話もないまま、新一の家に着いた。
















 ・・・・・・・・・車庫に入り、降りようとしてロックされているのに気付く。





























「おい、開けろよ」









 新一がそう言った途端、顎を掴まれ唇に暖かいものが触れた。

 平次の唇だ。













 角度を変え与えられる感触。





 ・・・・・・数分も経つと、新一から身体の力は抜けてしまった。


 



























「・・・・・・・は・・・・っとり、・・・・」











 上手く喋れない。

 しかし次に平次は、助手席のリクライニングのレバーを思い切り引いた。




















  ──────────・・・・・!!?





















 一瞬何が起こったのか新一は解らなかった。

 でも薄暗い中で、ぎしりと音を立てて覚えのある重みが上にのしかかってくる。









 ・・・・・・至近距離に吐息がかかった。





















「おい・・・まさか」

「いっぺんやってみたかったんや。車ん中」

「!?」

「・・・・・・・・ええやろ?」













 平次はそのまま口を塞ぐ。

 新一は逃れようとするが、逃げ場所などあるはずもない。


 耳元で囁く平次。

 その手は、既に熱くなり始めている新一の中心に触れた。













 ・・・・・・・絶妙な刺激を加え続ける。
























「ん・・っ・・・」

「・・・・・ほら、俺もこんなや」


















 平次は新一の手を自分のものに導く。

 ジーンズの上からでも解るその状態に、どくんと鼓動が鳴った。



 舌で白い肌の感触を味わいながら、キツそうなジーンズのベルトを外して圧迫をなくす。

 必要なものだけを出し、平次は右手でそれをやんわりと掴んだ。



















「・・・・っ・・!」











 肩につく手が震えている。

 更に刺激を激しくすると、耐えきれず新一は両腕を平次の首に回した。





















「・・・・っ・・・・はっとり、もう・・・出る・・・・・・・・って」


「なに遠慮しとんねん・・・・・・出しいや」  

「出来るか・・・・っ・・・・・お前の、車・・・汚れち、まう・・・・・・・だろ・・・・・っ・・・・」

「!」

















 その言葉に平次は愕然とした。

 この状況で、そんな気遣いを見せられるなんて・・・・・・・・



















 ・・・・・・・ホンマ、お前には勝てないわ。































「――――――――・・・・俺のクチに、出せばええ」

「っ・・・・あ・・・・」















 平次は苦しそうに震える新一自身をそっと口に含む。

 ゆっくりと舌で転がしながら、右手を使い優しく揉み扱いた。



















「工藤・・・・・」

「─────────・・・っ!!」















 くわえたままそう呟くと新一は解放する。


 助手席のシートベルトを懸命に掴み、波に耐える新一を確認しながら平次は全てを飲み干した。





























 ――――――――・・・・・・・この次は、どうされるんだっけ?























 分かり切っている事を自分自身に聴いてみる。


 だが、予想とは裏腹にロックが外れる音がして新一は驚いた。


















「・・・・立てるか」

「え? あ、ああ」











 先に降りた平次は助手席のドアを開ける。

 新一は、ふらつきながらも外に出た。






















 ・・・・・・・・あんな所で止めるなんて、どうしたんだ?

























 自分はなんとか落ちついたが、平次はあのままでは辛いはずなのだ。



 同じ男だからこそ解る状態。

 先に家へと歩き始めた後ろ姿を、新一は不思議な表情で見つめていた。






















ひとくぎり

























「こうしてグラフ持ってきたらどや」

「そうだな。集計データとあとは・・・・・・・」







 課題の手伝いをさせ、夜の11時を過ぎた所で完成。

 新一は満面の笑みを浮かべた。









「サンキュー服部。助かったぜ」

「ほんなら、俺帰るわ」

「え?」









 しかし平次はそそくさと立ち上がる。

 予想もしてなかった言葉を聞に、新一は驚いた。


















「・・・・・・泊まっていかないのか」



















 その時向けられた新一の表情。

 上目遣いの視線が、平次の心を乱す。





















「困るんやろ?」

「え・・・・」

「俺はお前に触れたくてしゃーないんや。泊まったら、朝まで離さへんで」

「!」




















 ・・・・・新一は、目をそらした。



















「やっと目、覚めたわ。この一週間スマンかったな」

















 急にしおらしい事を平次は言い始めた。

 今までの言動が、嘘のように。



















「服部、俺は―――――・・・・・・・」

「お前のは友達の『好き』なんやろ・・・・・・・・ホンマは知ってた。今まで一緒に居って痛いくらいな。でも我慢出来んくて・・・・・・・酔わせて抱いた」

「!」

「快楽が嫌いな奴は居らんし、しかも工藤は男や――――――――――・・・・・・女やないのに、受ける側の感覚まで覚えさしてもうた」




















 ゆっくりと吐き出される言葉。

 すると新一は、逸らしていた視線を戻し平次を睨み付けた。


















「お前・・・・・俺を馬鹿にしてんのか」

「・・・・そんなつもりは」


「酔ってたって俺は正気だった。それに、足の蹴りひとつでお前を沈められる事くらい知ってんだろうが――――――――――・・・・・・・それをしねえでこの一週間、大人しく抱かれて来たんだ」



















 声はあくまでも静かだ。

 それとは裏腹に感情が高ぶっているのは、平次の腕を掴む震える手で解る。

















「・・・・・・」


「確かに、告白される時までは・・・・・・・・お前のことは普通の友達としか見てなかった。でも次の日、『お前にならいいや』って思っちまったんだ――――――――・・・・・・・嫌じゃなかった」


「へ・・・」




















 言葉を探して自分の気持ちを新一は語る。

 平次が、呆けた顔をした。

















「だいたい身体の反応で解るだろうが。相手を、どう思ってるかくらい」


「それて、つまり・・・・」

「俺もお前が好きだって事だ。そうじゃなくてセックス出来るか? 俺たち、男同士なんだぞ?」





























 ・・・・・・・新一は真っ赤だった。



 まさか、こんな言葉を口にするとは思わなかったのだ。



















 どうして気付かなかったんだろう。

 新一が、一番この気持ちを持て余していたことに。










 この感情が恋だと気付いたのは、あの日。

 大阪に呼んだ
新一(コナン)
が拳銃で撃たれ、自分の渡したお守りで命が助かったと知ったときだった。




 ・・・・・もしあのまま二度と逢えなくなっていたら。

 そう思い、眠れなかったあの夜。


















 今まで何度も事件に遭遇し。

 その度に、危険な目に遭う度に命が縮まる思いがして。



 何とか一緒の大学に通うようになった。

 でも。















 ・・・・・・・・一生この気持ちは隠し通すつもりだった。



























 当然だ。



 男が男に惚れたって、想いが叶えられるとは思ってなかったのだから。



































「そうか・・・・そやな」


「やっと解ったか」

「せやったら『困る』て・・・・・・?」

「・・・・・・困るだろうが。俺を、こんな身体にしやがって――――――――――――・・・・・・本当なら一生、受け入れる快感なんて知らずに過ごすはずだったのに」

「!」






















 誘うように新一は平次の首に手を回した。

 同時に、抱きしめられる。








 ・・・・・・腰に平次のそれが当たった。



















「ホント馬鹿だ。車の中も、俺だけイかせて」

「せやかて・・・・・」

「良かったな。ちゃんと、両想いになれて」

「他人事みたいに言うなや――――――――――・・・・」












 そのままどちらからでもなく唇が合わせられる。

 触れ合うだけですぐに離されるが、新一はとどめの一言を平次の耳元に呟いた。
































「・・・・・汗、かいたから風呂入ってくる───────・・・・・・待ってろよ」 
































 夜はまだまだ終わりそうにない。





 その言葉に、平次は大きく脈打つ。

 ダイレクトに伝わるその状況に・・・・・・・・・















 新一は、綺麗に微笑った。
























ひとくぎり



































 戻れない。





 もう、友達には戻れない。



















 ・・・・・・・それでも構わない。























 もう、行くところまで行くしかない――――――――――――・・・・・・・







































「・・・・・・入るで」

「!?」











 シャワーを浴びている最中。

 背後から、声がした。



 急に入り込んできた冷気。

 身体を震わせつつ、振り向く。















「服部・・・・」

「・・・・・もう待てへん」









 平次だ。


 何となく予想はしていたから、さして驚きもせず新一は呟く。



 濡れる髪を引き寄せ、開いた唇に強引に口付けた。

 服を着たままの平次。













 ・・・・・・・ゆっくりと湯が染みこんでゆく。





















 熱く火照った身体。

 新一は布の感触に酔いながら、裾から手を入れて平次の直の肌に触れた。




















「・・・・・・・服くらい脱いでこいっつの」















 言いながら平次の衣服を剥いでいく。

 現れた褐色の肌を、湯が弾いて綺麗だった。 























 ・・・・・・・・うわ。





















 新一はつい喉を鳴らす。

 その状況に、平次は口の端だけで微笑った。




















「────────・・・・・・・なあ工藤、こうゆう使い方知っとるか?」


「え、わっ!」













 平次はシャワーヘッドを取る。

 次に背中を向けさせると、新一を座らせた。



 白い両腕を後ろでひとつに掴み、自分も座り込む・・・・・・・
















「な、何するつもりだ・・・・・?」

「・・・・1人でも出来る気持ちええこと教えたる」

「!」













 耳元にそう囁き、平次は彼の足の間に熱いシャワーをぶっかけた。  

 突然の温度に新一は瞬間、足を閉じる。















「我慢しいや―――――・・・・・・すぐ、良うなるし」

「あ、熱い・・・ん・・・・っ・・・・」














 シャワーヘッドを動かしながら、新一のものに浴びせかける。





 強い水流。

 その温度も重なり、びくびくと痙攣のように新一の身体は震えた。




















「・・ぁ・・は・・・っ・・」

「どうや? ここなら汚れる心配あらへん・・・・・・・出したい時に、出したらええ」



















 唇は首筋。

 右手はシャワー。



 そして左手で新一の胸を転がしながら、存分にその感触を味わう。










 ・・・・・・・・初めての感覚に、新一はすぐに跳ねた。




 ゆっくりと平次にもたれかかり荒い息をはく。



















 余韻の残る身体。

 新一は、平次を見つめる。







 ・・・・・そっと頬に触れた。























「なるほどな。これならひとりで、楽しめそうだ・・・・・」

「水道代は気ぃつけや?」

「バーカ」





















 じゃれあう様に、繰り返す口付け。

 耳元に囁くような会話。



















 ―――――――――――――・・・・・・・二人はその後、少しだけ気恥ずかしそうに微笑った。




















ひとくぎり



































 この先どこに向かうのか。

 それは、名探偵にも解らない。





























 だから行ってみるしかない。
























 ――――――――――・・・・・その先に、確かなものがあると信じて。




























Fin