・・・・・星に、願いを。























 そばに居られなくても。

 ぬくもりを、感じられなくても。





















 宇宙を見上げれば、同じ星を見ることが出来る―――――――――・・・・・・

























 叶えられない願い。



 伝えきれない、想い。





















 ・・・・・・・・・積もり続けるそれは、まるで雪のよう。












i sing every shine for you







「クリスマスまで事件かよ・・・・・」

「全くやな」









 街は最後のクリスマス商戦。

 至る所で、ケーキの店頭売りの声が聴こえる。



 今日はクリスマス・イヴ。

 千年代最後の、聖なる前夜祭。









「あーあ。家帰ってもメシもねーし・・・・あのケーキでも買って帰ろっかなー・・・・」

「何や工藤。帰っても独りか」

「・・・・・いつ帰れるかも解んねーのに、待たせる訳ねーだろ」

「そーいや、そーやな」











 待たせる、とは蘭のこと。

 去年までは確かに、いつでもどんな時でも一緒に過ごした・・・可愛い幼なじみ。





 白い息を漏らしながら、新一が逆に問う。













「お前こそ、一緒に来てんだろ。早く行ってやれよ」

「は?」

「―――――・・・幼なじみ、だよ」

「・・・・そんな関係やないって、言っとるやろ」

「どうだかな」

















 やけに、つっかかる新一。





 いつでも、何処でも出逢う度に平次の隣いた遠山和葉(幼なじみ)

 吐き捨てる様に呟くと、視界に入ったケーキ屋に入っていく。

 

















 ・・・・平次は深く、息を付いた。

























 言いたいことは解る。それは痛いほどに。

 新一も平次も、それぞれに「幼なじみ」が存在し、少なからず想いを寄せられている。



 もちろん、嫌いじゃない。

 だからこそ、いつも一緒に来ても文句など無い。











 ・・・・でも。



























 ――――――――・・・・クリスマス・イヴか・・・・・・・































 西の服部。東の工藤。

 ・・・そう呼ばれて、もう何年経っただろうか?







 高校の頃に知り合って、大学になっても付き合いは続いて。

 示し合わせても居ないのに、お互い逢うと必ず事件に遭遇して。



 そのうち、もうお互いが居ることに疑問も持たなくなって。

 『居るのが当然』な空気も、とても居心地が良いものになって。









 ・・・・そして。





























『――――・・・信じられへんわ・・・・何でこないな気持ちになっとんのやろ』

『え?』















 逃げた犯人を追い、山道を登っていた時だった。

 鬱蒼と茂る草木を掻き分け進んでいたが、ふと足下から地上の感覚が消えたのだ。



 ・・・・浮遊感と共に、次に感じたのは衝撃感。















 2人は、ぽっかりと空いていた穴に、落ちてしまった―――――・・・・・

























『おい、頭でも打ったのか?』







 新一の下敷きになっていた平次。

 離れようとした新一の腰を、ぐいと引き寄せて離さないから・・・・心配になって覗き込む。



 その時返ってきた返事。

 同時に、妙な心臓の音を身体に感じた。













『・・・・服部・・・・? 悪い、オレ庇ったから・・・・・身体、平気か?』











 僅かな明かりからも解る、擦り傷。

 痛そうに歪む表情に、新一は急激に罪悪感に駆られてしまう。



 それを間近で見てしまった平次。

 ますます止まらない鼓動に――――――――・・・・思うより先に手が動いていた。













『うわ!!』

『・・・・・・工藤こそ平気なんか・・・・? 血ィ・・・・・付いとるで・・・口唇・・・』

『―――――・・・な』























 ・・・・ぺろり。





 平次の舌が、なぞるようにその赤い血を舐め盗った。

 突然の事に新一は対処出来ずに固まったまま。





 その後、もう一度名残惜しそうに続けて・・・ついばむように吸った。























『この深さじゃ、助けこんと登られへんな・・・・・・・ん? どないした工藤』















 いけしゃぁしゃぁと、平次は呟く。

 決して冗談を言っている風に見えない姿に、どう返していいか新一は解らなかった。



 それは、この行動の意味するものを知っているから。

 ・・・・そしてそれは信じられない事だったから。













『携帯、通じるやんか。コレで――――――・・・工藤?』











 ポケットに入れておいた携帯を取り出し、電波が通っているのを確認する。

 だが、それを新一は奪い取り電源を切った。



 今度は平次が驚く。













『・・・工藤』

『お前こそ・・・・・血、付いてる』

『!?』











 平次にまたがったままの体勢だった、新一。

 目の前の頬を両手で包み・・・・目を閉じ、自分の口唇を平次のそれに重ねた。





 ふわりと前髪がこそばゆい。





















『・・・・・』

『しばらく・・・・・このままで居ようぜ』























 お互いがお互いを、そんな気持ちで見ていたのだろうのか?

 ただ、肌寒かったこの季節に―――――・・・相手の体温が気持ち良かっただけかも知れない。

















 追いかけていた犯人の事は、もうどうでも良かった。

 あんなのは警察に任せておけばいいのだ――――――――・・・・・



















 妙に心臓が騒がしかった。

 無性に、お互いに触れていたかった。















 ・・・・・ふとしたキッカケで、接触を果たした2人。



















 そして、気付きたくなかった想いに気付いてしまったのを知ったのだ・・・・・・

































 自覚した互いの想い。

 吸い込まれるように、寄せた口唇。













 友達だった。

 仲間だった。









 でも――――――・・・気持ち悪いだなんて、全然思いもしなかった。

























 不思議なほど自然な成り行きな感じがした―――――――・・・・・・



























 ・・・あれから、どのくらいの刻が俺たちに流れたんだっけ?





























ひとくぎり





























「今日、全部食っちまおうぜ」

「うっそやろ!?」

「大丈夫。コレあんま甘くない筈」







 戻ってきた新一が、ケーキの箱を差し出す。

 さっきとはまるで違う笑顔に、平次は瞬間呆けてしまった。







「・・・何だよ」

「え、いや・・・・せやな、せっかくのクリスマスやし」

「そうそう」







 やけに嬉しそうな新一。

 解らず、平次が問う。







「ご機嫌やな。どないした」

「サービスだってさ」







 新一の手のひらに乗っているのは、赤と緑のワイン型のチョコ。

 それが入っている、小さな透明な袋だった。



 同じく赤と緑のリボンが付いている。







「多分、俺が彼女にケーキ買って帰る風に見えたんだろーな」

「・・・・・ほー」

「はは、まあそうだろな。食っちまお」









 中から取りだし銀紙を剥き口に運ぶ。

 ・・・・甘い感覚が、広がる。









「俺にも食べさせてーな」

「寝言は寝て言え」







 調子に乗って口を開けた平次。

 しかし返ってきた冷ややかな視線と言葉に、大人しく自分で剥いた。



 尚も、風は冷たく吹きつける。

 襟をたてて身体を縮ませながら2人は駅へと急いだ。



























ひとくぎり

















 街は、クリスマス模様一色。

 雪は無いけれど、イルミネーションや雰囲気は、心躍る。



 電車に乗り込んだ二人は、横並びの席に座った。













「お前んトコ、泊まってええか?」

「・・・・最初っからそのつもりのくせに」



















 ぶっきらぼうな物言い。

 いつもの、新一。

























 ――――――・・・・・・・ほんの少し赤くなるのも、いつもの事。




































 誰にも言えない。

 言える訳がない。



 俺たちの関係は、非条理もいいとこだ。























 住む所が違う。

 育ってきた環境も、違う。













 ・・・何より、同じ性を持って生まれて来てしまった。























 でも――――――・・・・・だからこそ出逢えたのも、事実。





























「正月は、ロス行くんか」

「んー・・・・ハワイの方の別荘だと思う」

「うちは親族みんな集まるねんで・・・・かったるー」























 金曜の、夜。

 目に付くのは恋人達。





 ・・・・・・・これから、お互いの想いを確かめる時間。

























「・・・・・羨ましいんか?」

「何が」











 隣でしっかりケーキの箱を抱える新一。

 その視線に疑問を持ち平次が聞いた。











「何や淋しそーな顔、しとるから」

「そんなんじゃねえよ」













 新一は決して顔を平次に向けない。

 そして、目を閉じる。













 平次も――――――・・・・・・視線を、向かいの窓の外に向けた。































 目的の米花駅まで20分弱。

 電車の揺れは、眠りを誘うのに充分なほど心地良かった。



























ひとくぎり





























「・・・・離せ」

「もうええやん。誰も見てへん」













 工藤邸の玄関に入った途端、平次は目の前の身体を後ろから抱き締めた。

 突然の感覚に、新一は思わずケーキを落としそうになってしまう。











「危ねえっつの!」

「――――・・・・・・・やっと触れた」

「何だ。飢えたケダモノみたいに」





















 間近で睨まれ、平次は胸が高鳴る。









 ・・・・好きな要素のひとつ。

 それは、この瞳。

















 工藤新一を形どる中で、平次が最も惹かれて止まないもの―――――――・・・・・



























「4ヶ月ぶりに逢うたんや・・・・・ずっとこうしたくて、たまらんかった」























 耳元で吐息と共に囁かれる低い声。

 それこそ久しぶりの感覚に、新一は手の力が抜けそうになってしまい、慌てて持ち直した。





















「・・・・離せ」

「工藤」

「俺は逃げねえよ。記念日くらい、ゆっくりケーキ食おうぜ」





















 逢いたかったに決まってる。

 電話線を通さない、機会を通さない声を・・・・・ずっと聴きたかったに決まってる。











 ・・・・・でも、そんな事を素直に言える性格は新一は持ってはいなかった。





















「・・・・せやな」

「解ったら離せ」













 名残惜しげに平次が離れる。

 ふと無くなった暖かい感覚に戸惑いながら、新一はそそくさとリビングへと入っていった。



 後に続き入ってきた平次をソファに座らせ、箱を開けさせる。

 ナイフとお皿、フォークを用意し・・・・さらに新一の手にあったのは、シャンパンだった。













「コレ、甘くてうまいぜ」

「おー。クリスマスっぽいやん」

「だろ」











 戸棚からグラスを取りだし注ぐ。

 すると淡い緑の色を放ち、ぱちぱちと泡が鳴り始めた。















「ちょーど24時だ。グッドタイミング」

「ほな、乾杯しよか」

「おう」











 合わせると揺れる液体。

 その後新一は、ケーキの箱に入っていた小さなロウソクを、ひとつひとつ律儀にさして行く。



 そして、ポケットの中からジッポーを取りだし火を灯した。





















「服部。電気消せ」











 平次の手元にあったリモコンでリビングの明かりを消す。

 僅かな数カ所の、灯火。











 ・・・やけに、暖かい雰囲気が伝わってきた。





















 そしてテーブルライトを付けると、一気にロウソクの火を吹き消す。

 ケーキを切ろうとしている新一の手元が見えにくいから、平次が部屋の電気を付けようとリモコンに再び手を掛けた、その時。

















「いい。このままで」

「せやけど・・・・・見えへんやろ? 危ないで」

「大丈夫」













 新一はそう制し、さくさくとケーキにナイフを入れて行く。























 ・・・・暗闇の中。

 新一の表情は、見えにくい。


















「工藤」

「・・・・・何」

「俺に逢うた事、後悔しとるんか」















 手が止まった。

 でもそれは一瞬で、すぐに動きを再開すると・・・・切り分けたケーキを皿にのせた。





 そして、平次の目の前に差し出す。





















「・・・・・・・お前に逢わなかったら、確かにこんな気持ちにならずに済んだろうな」

























 あの日、お前が東京に来なければ。

 ―――――・・・・・・俺が、あの時「コナン」にならなければ。













 お互い何処かで、その名前を聞く事があっても・・・・・・





















 東京と大阪。

 ・・・・巡り会う事など、無かっただろう。



















「俺は、もしあんとき逢いに行かへんかったら・・・・・こうして居られんかと思うと、ごっつ怖いわ」

「――――――・・・・服部」

「ん?」















 呼ばれて顔を上げるが、新一は何か言いかけ首を振った。





















「・・・・何でもねえ」

「?」

















 ケーキのかけらを、口に運ぶ。

 そして、残りのシャンパンをつぎ足し飲んだ。

















「今日の工藤は、ますます解読不能やわ」

「お前に俺の全部が解ってたまるか」

「へいへい」















 素直じゃない新一。

 甘え方を知らない、新一。







 自分の殻を、頑なに守ったまま。

 その内に忍び込めるのは・・・・・・いつの事なのだろう?





















「俺、後悔はしてねえから」

「ホンマに?」

「ああ」













 お前が居てくれなかったら俺は誰にこの寂しさをぶつければ良かった?

 お前が見つけてくれたから、俺は『コナン』の時も『新一』で居られたんだ。











 ―――――・・・・お前に逢ったのは、確かに「コナン」の時が最初だったのに。



 服部・・・お前は決して俺を『コナン』とは呼ばず『工藤』と呼んでくれた。



















 それが、どんなに嬉しかったか解るか?

























 ・・・・・・狂ってもおかしくない状況だったんだ。



 正直言って、あの時の俺は――――――――――――・・・・・・





























 それに気付くのと、想いを自覚するのは・・・・・・・同じ事だった。



























 月にしか見られて無かったあの時の俺達。

 暗い、狭い穴の中で――――・・・・・・・俺の方こそ、どうしようもなく胸が騒いでいたんだ。















 気付いたからって想いが遂げられる訳がないと思ってた。

 伝えたからって、どうなるものでも無いと解っていた。

















 ・・・・・・・・・あの後、すぐに地元警察が見つけてくれた。





 本音を言えば一晩、放っておいてくれて良かったのに――――――・・・・・・・・





























「工藤。そっち行ってええ?」

「・・・」













 無言の返答は、了承。

 テーブルを廻り平次はその隣へ座る。



 そして新一のその表情を覗き見たとき、少し驚いた。













「瞳ぇ赤いで。コンタクトしとるんやったっけ?」

「忘れてた。とってくる」

「おう」









 ぱたぱたと2階に上がっていく足音。

 去っていく時の新一がやたらと可愛くて、平次は一瞬にして身体が熱くなってしまう。



















 ・・・・・・・・まっさか、今日工藤と一緒に過ごせるとは、思わんかったわ。

























 相変わらずの推理力。

 クセの様に顎に手を掛けて考える姿も、無性に懐かしく。



 お互い見解も解析も違うけど、最終的に辿り着く結論は合致して。

 本当に良い意味でお互い刺激し合える――――――・・・・・・・唯一の関係。

















「何や熱いな・・・コレでも飲も」













 身体を醒まそうとシャンパンを飲むが・・・・余計に熱くなってしまい、自分の同様さ加減が解ってしまう。

 そうこうしている内に、新一が降りてきた。















「待たせた」

「おー。インテリインテリ」

「言ってろ」











 少し細い黒のフレーム。

 大学に入って視力の悪化が進んだ新一の、これが普段のスタイルだった。













「お前、目は良いんだよな」

「ええやろ」

「全く。羨ましいよ」

「――――・・・・・眼鏡、外すで」

「・・・・」















 新一は逃げない。

 そんな雰囲気を解っていたし、自分も待っていたからだ。























 ――――――――・・・・・・・今日、現場で逢った瞬間から。

























 割れない様にテーブルの上にそれを置く。

 軽く口唇同士が接触したあと、平次は今度は真っ正面から身体を抱き締めた。



















「あったかいなー・・・・工藤」

「そりゃ、体温はあるし」

「冬ってええな。こうしとると、ホンマなんか嬉しいわ」

「・・・俺も」















 平次が驚き顔を上げる。

 今日初めて聴いた、新一の素直な言葉だからだ。



















「何だよ・・・・・・俺だって、こんな時くらいは素直になるさ」

















 意外に、雰囲気に弱い新一。



 僅かな明かりの暗闇。

 クリスマス。





 そして、側には少なからず想っている相手。

























 ―――――――・・・・今度、いつ逢えるか解らないから。































「もう、千年紀も終わりだな」

「すごい確率で生まれて来たんやで? 俺ら」





















 そう。

 千年紀と、二千年紀。



 その変わり目を実際に体験できる時代に俺たちは生まれた。







 しかも、60億を突破した世界の人口の中。

 僅かな『出逢いの確率』で巡り会った。











 想いは通じても、叶う事はなく。

 口唇を、身体をいくら重ねても・・・・心の奥まで満たされる事は無く。





 それぞれが、違う生活が在り。

 築き上げてきたものが、確かにそれぞれには有って。















 『恋人』として一緒には居られなくても。



 『友人』として、いつまでも変わらない関係で居られる。























 俺たちには、これが最良の関係なんだ・・・・・・・・・





















 お互いの体温を知りながら恋人にはなれないなんて。



 ・・・・どうして、同性を好きになっちゃいけないんだろう?

























「明日、帰るんだろ」

「ガッコはもう休みやけど――――――――・・・・・・・和葉が待っとるしな」

「・・・・そうだよな」











 自分が蘭を、未だに大切にしている様に。

 平次にとっても、もう20年も兄妹同然に過ごしていた和葉は・・・・・・大事な存在。







 嫌いな訳じゃない。

 むしろ、好きだ。





 ・・・・だけど。

















「止めようや。せっかく久々に逢うたのに・・・・目の前に、お前が居るのに」

「考えすぎるのも、やな性分だな」













 自分に向けてくれる想いを、そのまま返してあげられたら。

 そうすれば、こんなに悩むこともなかったけれど・・・・







 一度気付いてしまった気持ち。



 しかも、それが『両想い』だったから余計に辛い。















 でも、今更悩んでもしょうがない事だった。























 新一が自嘲気味に微笑う。

 そろそろと両手が、平次の肩に昇ってきて・・・・その頬に掛かった。





















「・・・今度、いつ逢えるかな」

「逢おう思たら、いつでも逢える距離なんやで?」

「はは、違いない」



















 電話は嫌いだ。

 表情が見えない相手に、何を言っていいのか解らない。







 メールもあんまり好きじゃない。

 ・・・・文字は、余計な気持ちまで送ってしまいそうだから。











 俺は別に会話したい訳じゃない。

 同じ空間に、居てくれればそれでいい。























 ―――――――・・・それが、最大の我が儘で甘えだって事も・・・良く、解ってるんだけど。

































「・・・・工藤」













 平次が再び口唇を塞ぐ。

 新一は、ゆっくり瞳を閉じ・・・・・・やがて侵入してきた舌に、自分のそれとを絡め始めた。













 本当に久しぶりの、キスの感触。























「相変わらず・・・・上手いな服部」

「引っかかる言い方すんな。お前かて、妙に上達しとるやないか」











 お互いが、お互いを想う余りの気持ちの高揚。

 離れている時間が長すぎた2人には、当たり前の状況なのだが・・・・

















「ここでやっても、ええ?」

「歩ける状況じゃねえだろ、お前」

「あ。バレとった?」

「――――・・・・・解るさ。それくらい」















 同じ性を持つもの同士。

 お互いがお互いを欲している事くらい・・・・身体には、本当に正直に出る。

















「せや・・・工藤、ピアスの穴開けた言うたよな」

「? ああ」



















 開けたのは夏。

 ニューヨーク滞在中に思い立って、左にひとつ開けたのだ。



 今も、小さなプラチナが光っている。















「クロムなんやけど・・・・お前に合いそうやったから」

「え、くれんの?」













 ポケットに入っていた袋を、平次は取りだし渡す。

 ぱっと嬉しそうな顔をした新一に平次は瞬間、胸が騒ぎ出した。

















「・・・・何で?」

「へ・・・」

「だって、今日逢ったのは偶然だろ――――――・・・まさか、お前いっつもコレ持ち歩いてたのか?」





















 何故か、いつも特別逢う約束なんてしてないのに。

 でも、事件が起こる度に遭遇する確率は高くて。















「ポケットに入れとって、忘れとっただけや」

「へー・・・いつから?」

「ええやろ別に・・・・・・・要るんか、いらんのかどっちや?」

「もらっとく。サンキュー」













 そんな新一は、いつもの新一で。

 口の端だけ上げて微笑う表情には・・・・やっぱり見とれてしまう。















「俺、何も用意してねえぞ」

「・・・・そんなん期待してへん。工藤が居るだけで充分や」















 さらっと、そんな事を言う平次。

 新一は一瞬にして真っ赤になるがこの暗闇だ。





 平次には、見えていないだろう。



















「―――――・・・ほーんと・・・・上手いよな、服部」

「何がや?」

「何でもねーよ・・・・それより、やるのかやらねーのか、どっちだ?」

















 上目遣いに新一が覗いてきた。

 平次の足の間にすっぽり入ってきて、ジーンズの上から明らかな状態のモノを、撫でる。



















「・・・服部?」

「こんの・・・・今日は手加減せえへんからな」



















 その時の平次の表情。



 多分、自分の中で暴走しそうな想いを、有る程度落ち着かせたら・・・・雪崩れ込むつもりだったのだろう。

 先手を打たれたら、誘いに乗らなければ唯の馬鹿だ。















「手加減? 俺ってそんなにひ弱に見えるか?」

「俺よりかは、な」

「バーカ・・・・お前を基準にすんじゃねえ」















 そうして、新一の方から顔を寄せる。

 まずはこういった行為の中でも――――・・・・一番好きな、キスから。





















「・・・・ん・・・・・・・駄目だっつの・・・・・・・まだ、止めんな」

「ホンマ好きやなぁ工藤・・・・・・俺はそろそろ、我慢の限界やねんけど」

「もっとだ。もっと俺を欲しがれよ―――――――・・・・・久しぶり、なんだから」















 ゆっくり、這い上がるように新一の手が動く。

 色んな角度から攻めているキスだったが、まだ新一には足りていないらしい。





 息つぎで離れようとする平次を、無理矢理引き留める。





















「・・・・アホ、苦しいっちゅーねん」













 こんなに欲求をぶつける新一は、初めてで。

 嬉しい反面・・・何処か淋しさを感じる。

























 ――――――・・・・・明日までは、俺のものだ。

























 今、確かに平次は自分に触れている。

 1年前のクリスマスの頃には、こんな事になるなんて考えられなかった。



















 ・・・・・・・この俺が、誰かに心を奪われしまうだなんて。



 ただ逢えない、側に居ないだけで――――――――・・・・独りの夜が、もの凄く辛く感じられる時があるだなんて―――――・・・・・























「そんなにキスが好きなんやったら・・・・・隅々までしたるわ」

「え、うわ!」

















 ふと、一瞬の油断。

 そのスキに、平次が新一をソファに乗せ――――・・・・手早くジーンズを下ろした。



 ひやりと感じる冷気に瞬間身体は竦む。

 構わず平次は、現れたモノを口に含んだ。

















「・・・・・・ちょ、ちょっと!」

「なーんや・・・・? キスには違い無いやろが・・・・・ごちゃごちゃ言えんようにしたる」

「!」

















 貪りだした平次は、まるで喉の渇きを癒すかの様。

 余すところ無く、いやらしい音を立てて――――・・・・・・・・聴覚からも新一を攻めだした。





























 もう――――――・・・・ベッドになんか行ってる時間はない。































 逢える時間は限られている。



 今度、いつ逢えるかも解らない。























 いつ・・・・・肌を重ね合えるのか、解らないから。





































「工藤・・・・甘い味する」

「・・・ん?」

「ケーキ、食ったからやな・・・・そそるわ」

「・・・・・・バーカ」

























 どんなに触れ合っても。

 肌を、重ねあっても。







 ・・・・眠る前には、必ずお前の顔を見せろ。































 ――――そして・・・・・







 ・・・・・・瞳が覚めたときにも、必ずお前が。

































 地平線すれすれの月だった。

 それはいつもより遥かに大きく、窓辺から2人を照らしていた。



































「・・・工藤?」













 いつもよりも、かなりハイペースで飲み続けた結果であった。

 平次の腕の中、新一は―――――・・・・安心しきった表情で、眠りについていた。





























ひとくぎり





























 外は、多分冷え込みも厳しいだろう。











 ホワイト・クリスマスには、ならないけれど。

 世界中の恋人達が――――・・・・きっと、この瞬間、この刻を。

































 ・・・・・・・・・一番、大好きな人とともに。



































 想いは特別じゃない。

 叶えられなくとも、無駄にはならない。













 ・・・・・・雪のように降り積もっても。



 雪のように、いずれ消えようとも。



















 この世に無意味な事なんて・・・・何一つ無いのだ。

























 ――――――――――・・・・今日の、この日を。









 君と過ごせる事に、感謝しよう。





















 そして。

 願わくば・・・

























 ――――――・・・・来年も君と・・・



 一緒に、居られますように。





























・・・・・・なんてのは、やっぱり贅沢な願いなんだろうな。















































Fin