secret of my heart







「もー24時まわっとるやん――――・・・・何やってんねん・・・」



























 此処は、服部平次の部屋。

 何故か独りで、日本酒を熱燗。



 ・・・・その表情は、珍しく酔っている。















 リビングのテーブルの上には、ラッピングされた箱類が積み重なっている。

 そのほとんどは、綺麗にそのままの形で。





 その様を見、半目がちに大きく溜め息を付く。





































「俺、やっぱアホやな・・・・」























 今日は、2月14日だった。

 ・・・「だった」と言うのは、既に日付が変わる24時を過ぎてしまったからだ。



 世間では、ST・ヴァレンタイン。



 例えお菓子会社の策略だろうが、恋人同士ならば

 浮かれるイベントだったはず。











 

 ・・・・なのに。





























 ――――――別に、約束してへんしな・・・・・









































 そう。



 逢う約束なんて、特別しちゃいない。

















 大学も違う。

 住む所も、近くない。





 例え、心の中で思っていても。

























 でも・・・平次は少し期待していた。























 もしかして、突然ドアを開けて新一が現れるのではないか・・・・?

 チョコレートなんか持ってこなくたって、逢いに来てくれるのではないかと。

















 しかし。



 結果は―――・・・・この通りだ。





























 既に、24時46分。

 ・・・・平次は少し顔を上げ、壁の時計を確認した。



 視線が、酔いが回っていることを告げている。























「くどぉ―――・・・・・たまにはお前から電話くらい、掛けろっちゅーねん―――――・・・・・」



























 そして、箱の乗ったテーブルに倒れ込む。

 がさがさと音を立てて崩れ落ちるが、そんな物はどうだって良かった。



 くれた女の子達には悪いが―――・・・・どうだって。

























「も・・・・・眠む・・・・・」



















 平次は、決してアルコールに弱くはない。



 だが・・・・



























「・・・・夢なら、逢えるんかな―――――――・・・・」































 そう、無意識に呟く。



 そしてそのままプレゼント群を巻き散らかし、床に崩れた。





















 ――――――・・・・・あれ・・・・冷たい空気・・・・?

 まぁええか・・・・何や気持ちええし・・・・

















 酒で火照った身体。



 何故か感じた冷気に、平次は気持ちよさそうに意識を眠らせた。





























「―――――・・・・なんで鍵開けっぱなしなんだか・・・不用心だな」







































 ・・・その時。





 音に出さない、声がした。

























「――――・・・?・・・・・寝てやがる・・・凍死しちまうぞ・・・」























 微かに、床が軋む音。

 ゆっくりとそれは、平次に近づく。



 そして散らかったその様を見て・・・・大きく息をついた。



























「案の定、目一杯もらってやがんな・・・」























 チョコレートに恨みは無いが、何となく睨む。



 マフラーを解き、コートを脱いだ新一。

 すやすやと眠りについている平次の側に、腰を下ろす。















 そして、もう一度息を付いた。





























 ―――――――・・・何だかんだ言って、来ちまった・・・・・・・・

























 迷った。

 しばらく逢ってないから、よけいに迷った。



 でも、電話なんて出来なかった。



















 便利そうに思えて―――――・・・携帯電話なんて、ぜんぜん便利じゃない。

 よけいな想いが、増えるだけ。













 ヴァレンタインに逢うだなんて、ベタな事はしたくなかった。



 でも。























 ――――――まぁ・・・・日付は変わっちまったけどな・・・























 やっぱり、来てしまったのだ。

























 同性同士。

 その事が、お互いの胸にいつも深くのしかかる。



 別に世間体を気にする訳では無いが・・・



















 ・・・・やっぱり。





















「・・・・ん・・・?」

















 その時、側の気配が動いた。

 平次が目を覚ましたようだ。

















「あれ――――・・・・俺まだ夢見とるんやな・・・・工藤が見える」

「俺の夢見てたのか?変な夢じゃねーだろうな」



















 久しぶりなのに、そんな雰囲気を新一は出さない。

 まるで、昨日逢ったばかりの様な言い方をする。



 目をこすりながら、平次は身を起こした。























「・・なんや・・・高校の時の制服着とって・・・・確か、授業中に居眠りしとる・・・場面やったなぁ・・・・・」

「は?」

「お前ん制服姿、見たことあらへんのにな・・・・ブレザーやったか・・・?」

「―――・・・そう、だけど・・・・」

















 新一は、何だか笑ってしまった。

 確かに――――・・・平次には自分の「制服姿」を見せたことは、無かったからだ。



 平次の『ガクラン姿』を、新一は見たことはあったのだが・・・











 『コナン』から『新一』に戻っても。

 高校を卒業するまでに、平次に逢っては居なかったのだから――――・・・





















「俺は此処にいるんだぜ?夢見てる場合じゃねーだろが・・・」

「工藤が来んの遅いんや」

「来るって、約束した覚えはねーぞ」

「・・・・・まあ、ええわ」















 ふわりと、平次が微笑う。

 本当に、逢えたことが嬉しいという表情で―――――・・・



















 だから、新一は目を背ける。





 その真っ直ぐな目は――――・・・やっぱり、心臓に悪い。





















「・・・俺に逢いたかったら、電話しろ」

「工藤は?逢いたい思てくれとったんやろ?」

「知るか」

















 これ以上逢ってたら、きっと戻れない。



 お前は―――――・・・・この関係を、どう思ってるんだ・・・・?

























「工藤?」

「・・・・うるせぇ・・・・」



















 その口を、新一は塞ぐ。

 これ以上言葉を出していたら、何を言うか解らない・・・・





















 こころの、秘密。



 それは言えない、自分だけの想い。















 いきなりの接触に、驚いた平次。

 だが・・・・すぐに主導権を奪うと、その髪に手を差し入れた。



 ゆっくり、すく・・・・





















 「・・・っ」

 「・・・・・ホンマに工藤や・・・」



















 確かめるように、ゆっくりと。

 平次は抵抗の無いことを感じ取ると――――・・・その身を進めていった。































ひとくぎり































・・・・・・ secret of my heart.























この気持ちは、いつまでしまっておけばいい・・・・・・?
























Fin