Telephone Line




「・・・・・まだ話中や」















 じっと、平次は受話器を見る。





 今日は珍しく早い時間に家に戻れた。

 飲みの約束もなかったし、稽古も早めに終わったし。



 だから久しぶりに新一と食事でもしようと、携帯を鳴らしながら駅へと歩いていた。









 ・・・なのに。

























「お前――――――・・・2時間以上も誰と話とんねん・・・」

























 ずっと新一の番号は話し中。

















 何度も何度も。

 駅に着くまででも、着いてからでも。



 平次は意地になってリダイヤルを繰り返した。

 けど、一向に繋がる気配は無い。













 ・・・・だから、もう自分の家に戻ってきてしまった。



















 刻は21時。

 野球は終わってしまったし、見たいテレビもない。



 ・・・とにかく、新一に繋がらない事が気になってしょうがない。











 確かに今日も逢った。

 昼飯も一緒に食べたし、だから、離れて数時間しか経ってはいない。























 ――――――・・・明日になれば、また逢えるんやけどな。

























 そうして。



 諦めて受話器を置こうとした時。

 突然、手の中のものが存在を主張した。



















「おわ!?」















 慌ててボタンを押す。

 そして、聴こえてきたものは――――・・・・・













『服部か?』

「・・・・工藤?」

『てめえ、今誰かと一緒か』

「は?」













 それは間違いなく思ってやまない声。

 さっきからずっと・・・聞きたかった声だった。















『質問に答えやがれ』

「俺ひとりやけど・・・」

『ホントだな』

「何やねんな。嘘ついてどないするん」

『・・・・わかった』

















 そして次に聴こえてきたのは・・・・・

 玄関の、ドアホンだった。



























「え・・・」















 まさかと思いながら、平次はドア越しにレンズを覗く。

 そこに居たのは本当に新一。









 静かに、鍵を開ける。































「工藤・・・・・」

「・・・」













 信じられないといった表情の平次。

 新一はというと、少しご機嫌ナナメな顔。



 平次を睨み上げる。



















「別に・・・・お前が誰と電話してようが、一緒にいようが構わない。構わないけど――――・・・・ムカツク」

「は?」

「ムカツクから、ここまで来ちまったじゃねぇかよ・・・」

「・・・・・工藤」















 平次は、頭の中を整理する。

 そして解った。



























 ――――――――・・・・お互いが、お互いに電話をしていたから。




 だから、ずっと繋がらなかった・・・・・・?























 家に戻ってからは携帯の電源は切ってしまったし。

 リダイヤルしまくりだったし。



 工藤家の電話は、ずっと留守電だった。

























「話し中やのに、何で他の奴とおる思うんや」

「受話器・・・外してたのかと思って」

「何の為にや」

「――――――――・・・何のって・・・・・・」



























 俯き、新一は言葉を止める。























 ・・・・・誰かと一緒にいたんだったら・・・・



 邪魔されたくねーから・・・・受話器を外してたのかと思ったんだよ。



































 心の声は口には出さない。













 そんな事はないだろうと思っても。

 考え始めると・・・・・・・止まらなかった。





























 新一は夕方突然平次に逢いたくなった。







 いつも逢ってはいるのに。

 学校以外では最近、逢ってなかったから。





















 ・・・・・でもずっと話し中だった。

































 『話し中』は嫌いだ。

 電話に出ないことよりも、許せない。









 だってそれは、自分以外の誰かと時間を共にしているということ。































 ・・・・・自分ではない、他の誰かと。

































「まあええわ。入り。雨降ってきたで」

「・・・・」

「あったかい珈琲入れるし。泊まってくやろ?」





















 未だ新一の表情は晴れない。

 でも、確かに平次の部屋には誰もいないようだ。



 そんな新一を平次は嬉しそうに見る。





























 ・・・・工藤の嫉妬は久々や。





























 だから、このまま秘密にしよう。

 自分も実は、新一の携帯にかけていたから『話し中』だった事は。









 その方が・・・・































 ―――――――――・・・夜は、もっと楽しいだろうから。

























Fin