the Weak point





「・・・・いってー」

「?」

「ちっきしょ――――・・・まただ」

















 工藤新一。

 自分より背の高い位置にある本を取ろうとして、手を泳がせる。



 顔をしかめ、自分の口唇に触った。















「何やねん」

「今日、刺身系パスな・・・・」

「は?」













 書斎の机の前に腰を下ろしている服部平次。

 突然の呟きに顔を上げ、眉根を寄せた。



 目的の本を取り出した新一が、そばに戻ってくる。













「見ろよコレ・・・・」

「わ! 口内炎か? 痛そうやな~」

「この間、やっと治ったっつーのに――――・・っくしょー・・・・」























 腰をかがめて、新一は自分の口唇を裏返し平次に見せた。

 ぷっくりと小さなそれは・・・・



 忘れた頃にやってくる、恐怖の爆弾『口内炎』だった。



















「食生活直せ言うとんのに、聞かへんのが悪い」

「チョコラBB飲んでるのにな・・・・・・」

「薬に頼るなっちゅーの! それに最近あんま食べとらんやろ? 珈琲ばっか飲んどらんと、ちゃんと食え!」

「・・・・だって食う気しねえ」













 隣に、腰を下ろす。

 今取ってきたそれをパラパラめくり・・・・微かに息を付いた。



 ちょっと、だるそうに。























 夏は新一にとって苦手な季節だ。













 決して『嫌い』ではない。

 夏のスポーツは大体やるし、それは好きだ。



 でも。























 どうしても、食欲が出ない。

































「―――――・・・今日、冷しゃぶにしよか。好きやろ?」

「げ。染みるっつの」

「嫌なら食わんでええ」















 口唇に出来てしまったのなら、何を食べても同じ事。

 汁物系は否応なしに染みる。



 が。そう言っていたら何も食べられない。









 

 新一は、今度は大きく息を吐いた。















「冷奴も希望。万能ねぎとミョウガの千切りつきな・・・」

「お。食欲出てきたか」

「―――――・・・食わねーと、夜カラダもたねーし」

























 得意の目線。

 少し伏せ目がちの、けだるい表情。





 口の端だけで微笑う――――――――――・・・・・・・いつもの新一。

























「・・・・ええ心構えやな」

「性欲と食欲は比例しねーから大変なんだ。この季節」

「俺は比例しまくりやけどな~」

「お前と一緒にすんな」





















 時刻はもう17時。

 西日は、まだ窓から差し込まない。





















「おい服部。早く肉買ってこいよ」

「・・・・お前の行く気はゼロみたいやな」

「ったりめーじゃん。この暑いのに」















 実際のところ。

 2人には口内炎も夏も・・・・・





























 ・・・・・・・・この関係を楽しむ為の、イベントに過ぎない。


























Fin