夏の幻・・・





 ・・・夢。























 それは、残酷な幻。
































ひとくぎり































 相変わらず暑い、熱い夜。

 もう9月になろうとしているのに、熱帯夜は続いていて。







 いい加減、体力も限界にきていたのは

 自分でも解っていた。



















 ・・・でも。

























「――――――――――・・・・・・戻ってる・・・?」



















 何もしてない。

 何も、薬も飲んでもいない。



 だけど・・・・

















 夜中に目を覚ました時、暗闇に見えた自分の手。

 子供のそれでは無く、記憶ある高校生の自分のものだったから驚いてしまう。



















 なんでだ??



 今まで何を試しても、駄目だったのに・・・

















 こんな、突然――――・・・・・





























 今まで散々、戻ったと思って浮かれたことがあった。

 だから、この状態もただ、手放しで喜べない自分が居る。

























 これは、夢に違いない。







 こんなことが、あるはずが無い・・・・

























 まだ、黒の組織を見つけ出してない。



 問題は、何も解決していない―――――――・・・・・・

























 ゆっくりとベッドから起き上がる。

 窓は開けっ放しだったから、気持ちのいい風と月明かり。





















 ・・・そっと、自分の顔に触ってみた。























 口唇。



 頬。













 ・・・すこし伸びた感じのする、髪。

































 骨っぽい、身体。



 鎖骨。





















 蒼白い肌に・・・・・対照的な誰かの浅黒い肌を思い出す。





















「・・・・・・喜ぶかな、あいつ」

























 自嘲気味な微笑い。



 最近までは、元に戻ったら一番先に知らせたい相手は蘭だった筈なのに。

























 ――――――・・・どうしてこんな気持ちになったんだろうか。

























 裸足の感覚。



 絨毯の、感触。

















 暗闇の中を手探りに、扉へ向かう。































 ひんやりとする廊下を。

 音も無く、階段を。









 ゆっくり・・・ゆっくり、目的の場所へと進む。





















 鏡。



 それは、自分自身を映し出してくれるもの。























 ――――――――――・・・今の自分を、確かめるもの。























 そして開けた、バスルームの扉。

































「――――――――――・・・・っ・・・・」





























 ・・・・・・・服部・・・・・どう思う・・・?





 俺は、もう幻を見ることさえも叶わないのかな・・・・・・・・・





























 ・・・鏡の中に見えたのは、見慣れた小さな身体だった。

































 新一は、確かめたかった。

 ちゃんと、自分の目で自分の姿を確かめたかった。













 本当に戻れたのなら。

























 ・・・・これ以上、嬉しい事は無いのだから。























 改めて、自分の手を見る。

 そして目線の高さが、さっきと違うのに気付く。





 違うと言っても・・・・「コナン」の目線に戻っただけのことなのだけれど。



















 目元には、眼鏡。

























「はは。もう涙も出やしねぇや・・・・・・」

































 慣れすぎた、展開。

 微かな希望さえ、もう抱かないと決めたはずなのに。





 心の何処かで・・・やっぱり期待していた自分。

























 夏の、夢。

















 これは夏の幻・・・・

























 ・・・・残酷な、冷酷な幻想。


























ひとくぎり



























 そうして「コナン」は目を覚ます。















「・・・・・・・やっぱり夢かよ・・・」















 熱帯夜。

 窓から、そよとも風なんか舞い込まない。

























 ちいさな手。



 小さな、身体。















 眼前に、見慣れた天井・・・・















「あーあ・・・・たまに自分の家に戻って来たら、こーんな夢見ちまうなんてよ・・・・サイアク」













溜息。



この身体では広すぎるベッド。

















・・・夢。







それは、残酷な幻。





















Fin