Kiss Kiss Christmas Night





 今年の冬はおかしい。















「確か今日・・・クリスマスだよなあ」

「何や。ボケたか?」

「蹴られてーのか」













 おかしい。

 本当に、あと今世紀は数日か?











 そう新一がそう思うのも、無理はないだろう。


 だって。












 今日は・・・・マフラーが要らない程の陽気だったのだ。























「ホワイトクリスマスどころじゃねえよなぁ・・・・・・」

「せやなー。バイクで来る時なんて汗かいてもうたで? 不気味やったわ~」

















 今は夕方の6時。

 流石に冬だと思うのは、この時間でもう真っ暗だという事実。



 2人は平次が買ってきたケーキを囲み、テーブルで向かい合う。

















「この人形食えるみたいやな・・・・お、ロウソクも付いとるやん!」

「火い付けたらロウが垂れるだろ」

「ええやんちっとくらい。ムードのないやっちゃな」

「なら、そこの部分お前食えよ。あ、俺このチョコもらう」

「アホまだ食うなっちゅーに!」















 来る途中のミスドに寄ってきたという平次。

 そこで売ってたケーキの大きさが、2人で食べきる分には丁度良いと思ったらしい。























 ・・・しかし。



 この可愛らしい『PINGU』のケーキを買ったのかこの男は・・・・・










 妙に、新一は感心した。



























「工藤、電気消せや。せえので吹き消すで」

「うっわ~ お前コドモ」

「ごちゃごちゃ言っとると、シャンパン温くなってまうで」

「はいはい」















 呆れつつもリモコンで明かりを消す。

 すると、ちいさく灯っているロウソクの炎が柔らかにうねった。









 ・・・なかなかの、風情だ。























「はは。なんか小さい頃思い出すな」

「誕生日か?」

「・・・・・いや。ひとりでケーキにロウソク灯した時の事」

















 新一は少し寂しそうな顔をする。























 忙しい父親。

 でも、優しい母親はいつもそばにいてくれて。





 ・・・けど。















 たった1回だけ、新一はこの広い家で留守番をしていた時があった。







 それは確か今日と同じクリスマスの日。

 小さなケーキに、数本のロウソクが揺らめいていた夜。

























「危ないやん! チビの頃に火い使こたんか?」

「大事には至らなかったけどな。後でこってり叱られた」

「せやろな~」

「叱られた後は――――・・・・・・2人とも気味悪いくらい優しかったな」

「そーか・・・・・」





















 炎の奥に、新一。





 ・・・・そして視界に入るのは、薄く開いている口唇。























「工藤。吹き消すで」

「ん? ああ」

「よっしゃ、せえの!」



















 掛け声と共に、2人は向かい合って一気に火を消す。

 一瞬にして暗闇になったその時、新一は自分の顎に暖かな体温を感じた。























「・・・・ん」



















 ・・・・平次からの、口付けだった。


































ひとくぎり



























 長いキスも終わり、新一は手元のリモコンを押す。

 電気が付いた途端2人は笑い出した。



















「なーにやってんだかな、俺たち」

「・・・吹き消してそんままキスなんて、全然オトナやろ?」

「言ってろ。さっさと食うぞ」



















 グラスにシャンパンを注ぐ。

 それは音を鳴らしながら、可愛いPINGUを映していた。




















Fin