こたえはきっと心の中に[2]







「ハラ減った・・・・・」













 新一は腹を押さえる。

 もう何時だ? そう思い、携帯の時計表示をみると13時を過ぎていた。



 いつもならそんなに空腹を感じない時間なのに、さすがに2時間以上も歩いたからなぁと息をつく。











 視界に入ったコンビニ。

 そこでサンドイッチと珈琲を買い、川の方に向かった。









 平次が今住んでいるこの街は、新一の生活範囲内にはない。

 電車を2回ほど乗り継ぎ、さらに歩いて数十分という所にある。



 だから、この街のことをよく知らない。

















「俺が覚えてるっつったら・・・・あとこの川原くらいだ」



















 まだ、桜子が俺に慣れなかった頃。

 

 今よりずっとちっちゃくて。

 外に出るにも震えて、服部にしがみ付いて離れようとしなかった頃。













 ・・・・・でも、夕暮れの太陽が大好きでずっと見つめていたっけ。























 もうちょっと暖かくなれば、此処は子供達の良い遊び場所だ。

 でも、未だ日陰に雪が残る今は誰の姿も見えない。























「寝そべれやしねえ・・・・・」



















 一息付く。

 そして、近くのベンチに座った。















 ぱく。ごく。



 とりあえず、ひと口ずつお腹に入れる。

 熱い液体が喉を通るのが解り、何となく自分は生きてるんだなあと思った。































「――――――――――・・・・生きて・・・・・るよな」





















 何を・・・言ってるんだ俺は?























「――――――――――――・・・あいつを悲しませないよな・・・・・・?」





























 目頭が何故か熱かった。















 こんなに寒いのに。

 ・・・手も、こんなに冷たいのに。



















 予告もなくいなくなるのだけは、やめて欲しい・・・・・・・・・・・・・

































 新一は、何となく平次と連絡を取れなかった。

 『どうだ?』なんて聞ける状態ではなかった。





 もし、見つかってなかったら。

 もし・・・・・最悪な状況になってたら。











 





 俺は、あいつにどう声をかけていいのか解らない――――――――――・・・・・





























 全部食べ終え、立ち上がる。

 その時、川岸に何か光って見えた。



 新一は駆け下りる。















 そこには見覚えのある首輪が、水と泥を含み―――――――・・・小さな鈴を付けて横たわっていた。

































「これ・・・・桜子が付けてたのと同じだ」















 確か、平次が買っていたのを見たことがあった。

 これがここに落ちてるなんて・・・・・























 ・・・・まさか。

























「――――――――――――・・・・嘘だろ・・・・・・・?」





























 新一は川の流れを見つめる。

 そして、それを拾い・・・・暫く呆然としていた。
































ひとくぎり

























 風が強くなってきた。

 時間はもう、16時を過ぎている。



 駅前は学生が多くなり、女の子達が楽しそうに騒いでいた。















「・・・・ああ、今日バレンタインなんや」













 手に綺麗に包装された箱を持ち。

 それぞれの時間を過ごしている恋人達が視界に入る。



 改めて店のディスプレイを見て、平次は今日が2月14日だと言う事を認識した。

















「チョコ。好きやったなあ・・・・そういや」













 確かホワイトチョコがすごく好きで。

 いっつも、食べようとしていると跳ねては横取りして行ったっけ・・・・



















 横取り・・・・・?





 誰から?























『ああもう! コラ桜子~っ! それは俺の!!』

『にゃにゃ♪』

『・・・・こんにゃろ・・・・・・猫だと思って優しくしてりゃ、つけあがりやがって』

『工藤~ なに動物相手に本気になっとんねん』

『お前がこいつを甘やかすからだ!! これ、高かったんだぞ? ひとつぶ500円だぞ!?』





















 ―――――――――――・・・・工藤・・・・・・・





















 そうや、工藤や。







 あいつ・・・・ホワイトチョコが本当に好きやったっけ・・・・・

























「せや・・・・今、どこらへん見とんのやろ」















 そういえば朝別れてから全く連絡を取っていない。

 音沙汰ないのは、まだ見つかっていないからだとは思うのだが・・・・・



 路地の裏に入り、平次は携帯のボタンを押す。









 響く呼び出し音。

 しかし10回・・・・20回と鳴るのに、一向に出る気配がなかった。



















「・・・・?」















 怪訝な表情をする平次。

 その時、やっとプツッと音がした。















「何しとんのや、早よ出え」

『――――――――・・・・・は・・・・っとり・・・?』

「工藤・・・・どないした?」

『・・悪い、ちょっとドジっちまって・・・・』

「え?」















 その時電話の向こうから聞こえた音。



 それは救急車の・・・・・























「工藤、今どこや!? くど―――――――」

















 いい終わらない内に回線は切れる。

 そして同時に湧き上がる、とてつもなく嫌な動悸。





 平次はもう一度リダイヤルを押す。

 しかし、何度かけても再び繋がることはなかった・・・・・




























ひとくぎり

























「あ痛つつ・・・・・・あーあ、壊れたな・・・・・」













 新一は手元の携帯だったものを見る。

 液晶は濡れ、既に電源さえ入らない。



















「・・・・・この俺が足を滑らすとは」











 新一は、さっき桜子のと同じ首輪を拾った。

 もしや川に? なんて嫌な考えもあったが、とにかく周辺を探ろうと川沿いを歩いた。



 ふと、奥のほうに木々が生い茂っている。

 そこに一本の大きな樹を見つけ、そういや桜子は降りられないくせに高いところが好きなことを思い出したのだ。













 不安定な足元。

 革靴を履いていたから、気を付けながら進んで行ったのに。



 近くでみると本当にそれは大きな樹で。

 ほけーっと見ていたら、足の下の石がぐらぐらと揺れバランスを崩してしまったのだ。







 その時、ポケットから落ちた携帯が川に転落。

 右側の足も激しく打ってしまった・・・・・

















「ん――――――――――・・・・さて、どうすっかな」











 さっきの場所から此処は少し低い位置にあるらしく、新一の横に壁がそびえている。





 何メートルくらいあるだろうか?10・・・・いや、15メートル?

 とにかくこの上から樹は生えているから、まずは登らないと駄目だと思い、少しのでっぱりに足をかけた。



















「痛てっ・・・!」















 嫌な痛みが足を襲った、その時。



















 ・・・にゃぁ。









「!?」

















 微かに、上の方からなき声が聴こえた。





















「いるのか? そこにいるんだな!?」













 桜子じゃないかもしれない。

 けど、確かに聴こえたあれは猫のなき声だ。



 新一はコートとマフラーを外し、痛みも忘れ急いで壁をよじ登った。























 大きな樹。



 幹も太く、枝も大きい。

 しかも長くて、それが何本か川のほうに向かって伸びていた。







 その中の高い、一本に・・・・・・



























「―――――――――――・・・・・いた・・・・・・・」

























・・・・登ったはいいが、怖くて降りられない一匹の猫がしがみ付いていた。

























「桜子・・・・・心配掛けやがって」









 新一は、そのときふと身体の力が抜けた。

 見つけて安心して、気が緩んだのかもしれない。



 そして、足に何度目かの激痛。





















「―――――――・・・・つつつ、やっべーなこりゃ・・・・」











 運が悪いことに、利き足だ。

 でもそんな事をいってられる場合じゃない。







 もう17時になる。

 いくら日が長くなってきたとはいえ、もうすぐ真っ暗だ。



 携帯も壊れた今、平次と連絡を取れる手段もない。













 なーに。



 まだ左足があるから・・・・・平気だろ。













 新一は深呼吸をし気合いを入れて登り始める。

 枝の間から見える夕陽の、鮮やかな景色を眺めながら―――――――・・・・・






























ひとくぎり





























「アカン!! 全然通じんやんか!」











 平次は焦っていた。

 自分でも、かなり動揺しているのが解る。







 ・・・・新一の身に何かが起きた。



 とにかく、行きそうな場所を走り回っていた。















 最初に行ったのは、多分この公園。

 でも、気配はまるでない。



 その時・・・・流れてくる風と共に、ある音が平次の頭に響いた。















 ちりん。



 ・・・・ちりん・・

























 ―――――――――・・・・鈴・・・・・・?





























 この音は、首輪に付いていた鈴の音?



 でも、どこから―――――・・・・















 平次の視線が、もう落ちる夕陽に向く。

 赤く染めた方向に見える、水を反射している光・・・・・・









 ・・・・その中に、ひとつの大きな・・・・・























「―――――――・・・川原の樹・・・・・? あそこはもう最初に見たはず・・・・」























 バカかてめえは?

 動物って何て書くか知ってんのかよ。 『動く物』って書くだろうが。



 さっきまでと同じ所にいると思ってんのか?

 生きてんだから、移動すんのは当然なんだよ。











 ・・・・一度見たからって見落としてっと、相手の思うツボだぜ?

























「――――――――――――・・・・・せやったわ。俺もまだまだ甘いなあ」



















 新一は、あそこにいる。

 どうしてか平次は確信を持った。





 そして、鈴。





















「待っとれや。すぐ助けたる―――――――・・・・二人ともな」























 ・・・・桜子も、きっと一緒に違いない。

























 既に闇が支配し始めた頃だった。

 平次は、近道を通り最短時間で川原へと向かって行った。






























ひとくぎり























「ああ―――――――・・・・もう真っ暗だ・・・・」

「にゃにゃっ」

「ったくよ・・・・・俺まで降りれなくなっちまってどーすんだっつーの」













 何とか気力でよじ登り桜子をゲットした新一。



 かなり汚れて、お腹もすいていて。

 最初、手を差し出しても怯えているばかりだったけど・・・・・





 やがてその手が誰なのか思い出したらしく、おずおずと歩いてきて新一にしがみ付いた。















「お前も結構、怪我しちまってるな・・・・・俺も、足がだんだん感覚なくなってきた」















 靴は既に下に落ちた。

 コートもマフラーも川沿いに置いてきた。



 さっき少し濡れたお陰で、寒さが足から攻めてきてる。



















 ・・・・・・・今ある確かな温もりは、胸に抱いている桜子だけだった。

















 痛みが酷くなってきて、とても桜子抱えて降りられる状態じゃなかった。

 下から見たときはそんなに感じなかったのに、ここからみると地上はかなり下の方にある。





 特に、川沿いの方なんて―――――――・・・ここから落ちたら、間違いなく死ぬだろう。

















「お前、いつからココいたんだ?」

「み~・・・」

「・・・・ま、いっか」















 見つけられたから。



 

 ・・・・怪我はしてるけど、確かに元気だから。















「ん? そういや首輪・・・違うじゃん。アレ?? お前のじゃなかったの?」

「みゃみゃ?」

「―――――――・・・・じゃあ、誰のだったんだろうな」













 ポケットに突っ込んでいた拾った首輪。

 出したときに、また『ちりん』と鳴る。



 けど、その音は既に錆びれる直前で・・・・・























「工藤!! そこか? そこおるんやな!?」



















 ――――――――――――――――・・・・え・・・・・・・・・・?





















 新一は耳を疑った。

 暗くて見えない樹の根元に・・・・・でも確かに動く影がある。









「・・・・服部?」

「みゃ――――――っっっ!!」

「やっぱ桜子も一緒なんやな??」











 新一はそれ以上声が出なかった。

 まさか、この場所を・・・・こんなに早く見つけてくれるなんて思わなかったのだ。











「・・・・だ、大丈夫だ。ちょっと怪我してるけどな―――――――・・・登ったは良いけど、降りられなくなったみたいだ。けど、悪り・・・・・俺がちょっとヘマしちまって・・・・」

「ええか、今から行くから大人しくしとれや!」

「へ?」











 平次はコートを脱ぎ軽く身体を動かした。

 そうして「よっ」という掛け声と共に、軽々と登ってきたのだ。





 そして、あっという間に新一達のもとへと辿り着く。













「・・・・・・こんな薄着のまんま、寒かったやろ」

「服部・・・・」

「足、痛むか?―――――――――・・・・うわ、結構腫れとんな」

「・・・・ほら、桜子だ」











 新一の胸に隠れていた桜子。

 寒いから頭だけ出してたが、目の前に現れたのが平次だと知って急に飛び出す。











「みゃみゃみゃ・・・・」

「・・・桜子――――――・・・・堪忍なあ。ホンマ、堪忍・・・・・・・こんなに冷えてしもて・・・・早く家、帰ろうな」

「良かったな。桜子、お前がいないともう駄目だってよ」

「工藤・・・・」











 平次にしがみ付いて離れない桜子。

 それを愛しそうに見つめる目に、新一は今まで何度も嫉妬をしたけれど・・・・・







 ・・・・・今は、素直に『良かったな』としか思わなかった。













「お前、まずこいつ連れて先に降りて。俺ひとりだったら、何とか後で――――――――・・・っ」

















 月が、顔を出した。

 さっきまで雲に隠れて見えなかったのに、急に二人を照らした。







 ・・・・・そのとき同時に、新一の口唇に暖かい感触が降りる。

















「・・・・・・は・・・っとり」

「無茶・・・・せんでくれや――――――――・・・無事で良かった・・・・・それに、桜子見つけてくれて・・・・ホンマ感謝しとる」















 きゅうと。

 枝にまたがったまま2人は、軽く抱きしめ合う。





 桜子が居るから、軽く。













「バーカ。俺はそんなにヤワじゃねえ」

「・・・・頼むて。弱い強いの問題やない、その時っちゅうのは―――――・・・・誰にも避けられへんやろ」

「そりゃ、そうだけど・・・・」









 平次の目が、何だか遠くを見ている。

 だから新一はそれ以上言葉を出すのを止めた。











「降りよ。いつまでもこんなトコおったら凍死してまうわ」

「え、じゃあ俺あとで・・・」

「は? 何言うとるんや、ホラ桜子頼むで。そのパーカーの帽子んとこ、入れとって」

「え?」











 そうして背中を向ける平次。

 これはどう見ても・・・・















 ――――――――――・・俺をしょって降りる気か・・・・・?

















「お前正気? いくらなんでも、俺背負って降りれる訳ねえだろ!」

「うるさいやっちゃなー。足痛いて降りられへん言う奴が何ぬかしとるん?」

「途中で落とされたら俺死ぬだろ!」

「・・・・・そしたら、俺も一緒に飛び降りたるから安心し」

「!」

















 ・・・・この男は、どうしてさらっと殺し文句を言うのだろう。













 思わぬ返答に耳まで真っ赤な新一。

 もう何も言えず、大人しくしがみ付くしかなかった・・・・
























ひとくぎり





















「な? せやから大丈夫言うたやろ」

「・・・・お前の体力はどこから来てるんだ」

「日頃の努力の賜物や」











 難無く降りてきた2人。

 平次に言わせれば、コツがあるのだというが・・・













「工藤、靴。血い付いとったけど」

「平気だ。もう止まってる」

「上着は?」

「・・・・・あそこの下。壊れた携帯もな」











 樹の根元。

 そこから、新一がコケて足を滑らした川原が下に見える。



 しかし暗くて危ないことこの上ない。











「あれは明日にすっか・・・とりあえず、コレ着とって。歩けそうか?」

「・・・痛い」

「そーやろなぁ・・・・タクシー乗るにもこんなトコ通らへんし・・・・抱えて歩くしかないな」

「え!? いや、ウソ嘘、大丈夫歩ける―――――――・・・っっつー!!」

「観念せえ。だーいじょうぶやって、このコート羽織ってパーカー被ってしおらしゅうしとれば、ちょおでかいねーちゃんとしか思われへんて」

「そういう問題じゃねえ!」











 でも、どっちにしろ新一は歩ける状態じゃなく。

 ひとまずタクシーの通る道まで嫌がる身体を無理やり抱え、平次は歩き出した。













「誰も見とらんからええ加減大人しくせえ」

「桜子が暴れてんだっつの!」

「にゃにゃ!」

「・・・・・俺がこんなことされてっから、ほーら妬きもちやいてる」

「桜子おとなしゅうしとれ! 危ないやろ!!」











 平次の肩をよじ登り、すりよる小さな影。

 明らかに嫉妬しているらしいその姿に、新一は笑いが止まらない。













「工藤、あんま笑うと落ちるで」

「わ、わりい・・・・いや、久々に見たなこんな桜子」

「そーやなあ・・・・いて! コラ引っかくなっちゅーに!」











 そうして大通りまで行った2人と1匹。

 タクシーでそれぞれの病院へまず直行し、手当てと薬をもらう。



 新一は2・3日ちょっと動けそうもないが、桜子は擦り傷だけだったらしく、ご飯を食べたらすぐに元気に飛び回っていた。















「動物ってタフ・・・・」

「お前も動物や」











 21時も過ぎて平次のマンションに戻った2人と1匹。

 食事も食べ終え、平次がいれてくれたカフェオレを新一は飲む。











「しばらく泊まるやろ?」

「ああ。成田から直行でここ来たから着替えも持ってるし、宜しくな」

「桜子! 風呂も入っとらんのに走り回るんやない!」











 ある程度拭いたが、染み込んでいる泥が跡を残す。

 平次は追っかけ捕まえ『ほなちょお、風呂入ってくるわ~』と桜子と共にバスルームへ消えた。























 ふう。



 ひといき、新一はつく。























 ――――――――――――・・・・・良かったな、服部。





























 あんなお前は、もう2度と見たくない。



















 強いと思ってたんだ、お前の事。

 いつだって、俺を影から支えてくれてたから。















 なのに、あんなに抜け殻になっちまうなんて・・・・・・・・

























「・・・・・・俺は抜け殻どころか狂うかな」



























 もし服部が突然消えたら。

 俺の目の前から黙っていなくなったら。







 きっと『服部平次』の存在自体、なかったものとして生活する・・・・

























「バカだよなあ・・・・・なるべく離れて生活しても、余計に苦しくなるばっかりだ」



















 どんなに遠くで暮らしても。

 ロスの家に行って、遊んで気を紛らわしても。





 身体に染み込んでしまった温もりが思い出されるだけ・・・・・



















「あったか―――――――・・・・ちょっと寝よ」











 暖房が心地良い。

 ソファの感触も伴って、新一は睡魔に襲われる。









 やかんの蒸気の音。

 遠くで聴こえる、シャワーの音・・・・















 ・・・・・・昨日よく眠れなかった分、新一はあっという間に眠りに落ちた。




























ひとくぎり

























「寝とる・・・・」

「みゃ」









 少しして、ほこほこになった1人と1匹が現れる。

 腰にタオルを巻いただけの平次は、そのまま冷蔵庫に行きビールを出した。



 そして眠る新一に近づく。















「くどー。ちょお起き」

「・・・?」

「チョコ、食お」

「・・・・チョコ?」









 そのとき平次が持ってきたものは。

 ビールの他に、ひとつの小さな箱だった。











「今日、バレンタインなんやってなー。忘れとったわ」

「・・・・14日だっけ今日?」

「せやから丁度ええわ。ほい、こん前渋谷行ったら美味そうな白いのあったから、買うてみたんやけど」

「へえ」









 剥き出しのチョコ。

 英語の羅列から見るに、外国製らしいが・・・・











「ん。うまい」

「そら良かった」

「お前も食えよ。甘いけど、甘くないし」

「意味解らへ・・・・」

「ほら」











 白い指が、白い丸いものと共に平次の口唇に入る。

 面食らう表情が面白くて、からからと新一は微笑った。















「うまいだろ」

「・・・っちゅーか・・・・・甘いだけやん」

「そんなもんだチョコなんて。な? 桜子も食うだろ~?」

「みゃ~♪」











 ぴょんと膝の上に乗ってくる。

 そうして新一から白いかけらをもらうと必至に舐め始めた。



 その様を嬉しそうに眺めている表情に、自然に平次の手が伸びる・・・・・











「・・・・何」

「工藤も食ってええ?」

「俺は食いもんじゃねえぞ」

「こんなに甘いのに―――――――――・・・・・・・・・?」

















 頬を覆う手。

 冷たくて、暖かい感触・・・・





 そのまま両手が、新一の膝から桜子をおろす。













「・・・・桜子が妬くぞ」

「3人でしよか・・・?」

「バカじゃねえの」















 新一はそのまま平次の腰からタオルを盗った。







 綺麗な腰のライン。

 それは褐色の肌と共に、目に焼きついて・・・・













「・・・・憎たらしい身体だな全く」

「ん?」

「何でもねえよ・・・・・」



















 そうして2人は口唇を重ねる。







 ゆっくりと。

 何度も何度も角度を変えて・・・・・・



























 ・・・・・・今年初めての、互いの体温を感じながら。













































 ・・・・人の心は覗けない。







 でも、この暖かさは嘘じゃない――――――――・・・・・





























 今日の新一の想いを、平次は知らない。





 ・・・・・・・平次のあの想いを、新一は知らない。



























 桜子の4日間を、2人は知らない――――――――――――・・・・

























「なあ、そう言えば川原で拾ったこの首輪って・・・・桜子のじゃねえ?」

「あ。前にあそこでなくしたやつやんか」

「なくした?」

「・・・・そーかあ、この鈴の音やったんか」

「?」























 それでも、こたえはきっと。



 それぞれの左の胸に、きっと・・・・・























・・・・・ほんとうの気持ちは存在しているものなのだ。















Fin