文字は語る




「・・・あれ。携帯変えたのか」

「工藤もそろそろ買うたら? 今のん、206やろ」

「会話できりゃいいし。別に困ってねぇよ」











 いつもの如く工藤家に遊びに来ている服部平次。

 でも、今日は手に携帯電話の紙袋を下げて来たから新一が聞く。



 リビングで『じゃーん!』と差し出されたもの。

 画面の大きいこれは・・・



















「503か。それ、出たばっかだろ」

「おー。ゲーム入っとるで~ こら電車ん中とか、ええ暇つぶしや」

「へえ・・・・」



















 興味を示したらしく、覗き込む。

 ぴこぴこと説明書を見ながら、平次は『ほうほう』と小さな端末機を操作しだした。



















「ケータイにメールって・・・便利か?」

「便利っちゅうか、面白いで」

「・・・ふーん」



















 面白い? そんな表情をする新一。

 それもそのはず。



 いつもノートパソコンを持ち歩く新一にとって、あんな小さい携帯にメール機能が付いている所で『打ちにくくてしょうがない』だけとしか思えないからだ。



















「工藤も買わへん?」

「何で俺まで」

「まあ、パソコンより不便やけどな。結構ハマるで~」

「ハマる?」





















 ・・・・んな訳ねえだろうが。



















 しかし自分を放っておいて新しい携帯に夢中な平次。

 人ん家まで来て何してやがんだ・・・・そう思う新一がふて腐れるのも無理はない。





 かまってくれないから、面白くないのだ。





















「てめえ何しに来たんだ? 俺に用がないんだったら、さっさと帰りやがれ」

「これでいつでも連絡取れるで~ 俺、パソコン持ってへんし・・・・明日の9時から使用可能らしいし」

「人の話聞いてんのか!?」

















 たまらず、新一は平次の手から説明書を取り上げる。






 きょとんとする平次。


 新一が、何だか怖い顔をしている・・・・



















「何怒っとるん?」

「別に」

「・・・ははーん。拗ねとるんか」

「誰がだ!」

「そーゆう工藤の性格にも、こーゆー端末はピッタリやと思うんやけどな~」

「どーゆう意味だ」



















 平次はぺろりと自分の口唇を舐める。

 そうして、目の前のも舐めた。



















「・・・っ!?」

「・・・して欲しいの、言えへんかったら文字で言えるやん?」

「だ、誰がして欲しいって・・・・」





















 にやにやと平次は微笑う。

 ちょっとムカついたが、とりあえずこっちの相手をしてくれたから新一もそれ以上は言わなかった。
































ひとくぎり































 数日後ふたりが出かけた時。

 ふら~っと立ち寄った店に並んでいた、Pシリーズの赤。



 それに、何故か新一は惹かれた。















 見ると、新製品の503と書いてある。

 そして次の瞬間、『これ下さい』と言っているのに新一自身が驚く。

















「・・・・また即効やな」

「こいつが俺に買ってくれ~って光線、発してたんだ」

















 もとから赤は好きだった。

 これは良いキッカケかもしれない・・・・





 そう、新一は思った。



























 ともあれ。



 それから平次の言った通り、携帯には携帯のメールの面白さを見つけた新一。

 数日後にはすっかりノートパソコンと上手く連動して使いこなす姿を平次に見せる。



















「俺の言った通りやん」

「とにかく軽くていいな。意外と情報も早いし」

「・・・なあ、工藤」

「何?」















 ぴこぴこと手元のボタンを押す新一。

 隣の平次に、見向きもしない。







 ・・・・平次はもちろん面白くない。



















「工藤!」

「いまお前にメール送ったぜ。後で見てみろよな」

「へ?」

「じゃーな。また明日」



















 目の前のドアが閉まる。

 それぞれの家に戻るために、別れるいつもの内回り電車の3両目。



 硝子の向こうで、新一が笑って手を振った。



























 やがて電車が消えて見えなくなり、平次はメールチェックをしてみて・・・・・





















 ・・・・耳まで、真っ赤になったのだった。



















Fin