碧の日




『見ろよ。すっげえ夕陽』



















 夕暮れ。

 遥か遠くに見える、大きな紅い太陽。



 まっすぐ視線を向け呟く新一。





















『ホンマや。明日もええ天気やな』

『・・・・地球の日、なんだって』

『へ?』

『碧は青。蒼は緑―――・・・みどりは地球。だから、明日はみどりの日』

『誰が言うたんや? それ』















 やたらくっさいこじ付けだから、平次は聞く。

 すると新一は微笑いながらこう言った・・・



















『・・・昔知り合った、気障な野郎だよ』


































ひとくぎり



























「ああ~ ちくしょ、腹減った」

「お前なあ・・・・・ちゃんと朝飯食って来とるんか?」

「そんな暇ねえ。そんな時間あったら寝る」













 講義と講義の間。

 喉の渇きを訴えた新一が、平次と自販機近くのベンチに座っている。











 ・・・・その目は眠気まで訴えて。

















「工藤、あんまそんな顔すんな」

「ああ?」

「今すぐトイレ連れ込んでキスかましたくなるやん」

「そりゃ目が覚めそうだな。するか?」















 ぽや~っとワンダのカフェオレを飲みながら、呟く新一。





 そのあまりの普通な会話の返し。

 平次はつい、耳を疑う。













「ホンマ?」

「次、心理学だろ・・・・寝ちまったらヤベエんだ。単位も危ねえし」

「相変わらず事件で飛び回ってばっかやもんな」

「うるせえ、あと15分しかねえぞ」



















 痺れを切らした新一。

 飲み終わった缶を捨て、ぐいと平次の腕を掴んだ。

















「行くのか行かねえのかどっちだ」

「・・・・・ええんか? 講義どころや無くなるで」

「そりゃお前次第だろ」

















 誘い以外の何者でもない、その微笑。







 2人は、人気の無い校舎の一番奥。

 ・・・既に知り尽くしたその場所へと、足を進めていった。






























ひとくぎり

























「・・・・・・ん・・・っ・・・・・」

「もう始まっとるで・・・・行かなくてええんか?」

「イイや――――――――――・・・・やっぱお前のキス、最高・・・・・・」















 ここは、本校舎とは違い別館で。

 それだけでも人気が無い場所なのに、全室和式とあってかはっきり言って殆ど使われていないトイレだ。





 何度目かの口付けを終え、一息付く。

 個室を出ると口唇をぺろりと舐め、新一は窓を開けた。



















 中庭の緑が、薫る風に乗ってくる・・・・・



























「明日・・・つーか。今日からゴールデンウイークだったっけ」

「せやな」

「あれ。明日って祝日?」

「ん―――・・・『みどりの日』やな」

「そっか、明日か」















 何かを思い出したような、その表情。

 平次が少し見惚れる。













「何がや・・・?」

「地球の日」

「はい?」

「・・・・忘れたのかよ。1年前、お前に言っただろ」















 新一がちょっとむくれる。

 その顔で平次は思い出した――――・・・・・・・



















『碧は青。蒼は緑―――・・・みどりは地球。だから、明日はみどりの日』

『誰が言うたんや?それ』

『・・・昔知り合った、気障な野郎だよ』

























「あー 言うてた言うてた。結局誰か教えてくれへんかったアレな」

「何・・・・お前まだ解んないの?」

「悪かったな」

「ふーん・・・・まあ、イイや」

「何でや? 教えろ」

「絶対教えてやんね―――――――――・・・・それより続き」

















 新一は、目の前の身体を個室へと押しやる。

 そして再びついばむように、その口唇に喰らいつく・・・・



















 平次も、それ以上は追求はせず―――――・・・・・・・





 目を、閉じた。




























ひとくぎり





























 碧の日。

 翠の日・・・・













 そう、明日はみどりの日。































・・・・・深緑の碧はお前の目の色。




















だから俺は、やたらと覚えていたんだ・・・・・・・・・・
























Fin