誘拐と記念日





「あれ? どないした」

「桜子誘拐しに来た。」

「は?」






























ひとくぎり



























 東京は新宿。

 此処は、服部平次の東の地での住みか。



 とある高層マンションの最上階。













「こいつ連れて実家、帰らないだろ」

「いや・・・連れてこ思うとったんやけど」

「何で?」

「な、何でて」













 リビング。

 ソファでごろごろしながら、新一は桜子とじゃれる。

















 『桜子』



 それは、平次が一年程前から飼っているアメリカン・ショートヘアの猫だ。

















 名の通り、もちろん女の子で――――・・・・・・・

 平次のプライベートの大半を独り占めしている、新一にとって、かなり憎らしい存在。



 その桜子を抱え、新一は平次を見る。

















「休み明けまでココ帰らんし・・・・」

「俺があずかる」

「ええって。そんな気い使わんでも」

「何で俺がお前に気を使うんだ? 俺がこいつといたいだけだ」

「工藤・・・・?」



















 平次は、新一の様子がおかしいことに気付く。

 何だかこれはまるで・・・・







 それきり、下を向く。























「・・・・工藤」

「お前何時に行くんだっけ? なあ桜子。今日何食いたい? おいしいもん食おうなー」

「にゃ~!」



















 ごろごろと、桜子が喉を鳴らす。



 その嬉しそうな桜子とは反対に、当の新一の表情は暗く―――――――・・・・・

 平次は、その身体を桜子ごと抱きしめた。







 







「・・・お前、ほんと猫くさい」

「工藤。ちょっとの間行方不明になってもええ?」

「何だそりゃ」















 新一は顔を上げる。

 平次は上目遣いに、今更ながら顔を赤くしてしまった。



















「―――――・・・誘拐したる」

「へ?」

「桜子も連れてくし、工藤も連れてく」

「は?」

「4日は何とかこっち帰って来るつもりやったんやけど・・・・こうなったら、大阪くまなく案内したる」

「!」























 新一は、驚く。





 ・・・てっきり4日の事なんて忘れてると思っていたからだ。



























 『ゴールデンウイークは大阪戻らなあかんのや』











 そう言って来たのは、ついこの前のこと。



 だから、ムカついた。

 だからこそ、せめてあいつのべた惚れな桜子は連れて行かせないと思っていた。















 だって。



 せっかくこういう関係になってから・・・・・・・初めての、自分の誕生日。



















「しょーがねえな・・・・」

「何や。あんま嬉しそうやないみたいやな」

「・・・・でも、お前は桜子が居ればいいんだろ。俺はオマケか」

「みゃ?」

「んな訳ないやろ!」

















 焦る平次に新一は微笑う。



 笑って、そして・・・・

























「・・・・俺はお前しかいねえのに」

































 背を向け、平次に聴こえないように口唇を動かした。
































ひとくぎり































 なあ、服部。

























 ・・・・・・・・どうやったら俺は、桜子よりもお前の近くに行ける?

























Fin