真夜中の衝撃




「工藤~ 珈琲入ったで」

「サンキュ」

「・・・・・さっきから何しとるん?」

「チャット」















 真夜中。

 その、24時過ぎ。



 大阪から久々に遊びに来た平次に飲み物を入れさせ、新一は自室のデスクトップで忙しなく手を動かしていた。

 













「ほー。誰と」

「千葉県警のナギサさん」

「千葉県警?」

「ああ。佐藤刑事の友達でさ、この間警視庁に行った時に紹介されたんだ。俺に興味が有るんだって言われてアドレス交換した」

「そんなアッサリ交換したんか!?」













 机の上にカップを置いた平次が叫ぶ。

 新一は顔をしかめながらそれに口を付け、また画面に目をやった。













「心配すんなって。俺だって誰かれ構わず教えてねえよ――――――・・・・・なんつーのかな、佐藤さんの友達だけあって『面白い』んだよ、この人」

「・・・・オンナ?」

「女。けど、女っぽくない。かといって、男っぽくもないんだよ。あれを『中性的』って言うんだろうな」

「ほー・・・・」

「会えば気に入ると思うぜ? 俺がそうだったからな。さすが刑事だけあって話も通じる部分多いし、頭も良い。それに・・・・・」

「ん?」















 饒舌な新一は珍しい。

 他人の事をこれほど話す事もかつて無かったから、平次は少し驚き、そして。











 ・・・・上目遣いで微笑いながら言葉を続けた。



























「かなりの、美人だからな」
































ひとくぎり



























 千葉県警の、ナギサ刑事。

 それは警視庁の佐藤刑事の同期で、大学時代の同級生でもあったらしい。



 用があって警視庁に来ていた時に、バッタリ会った所を紹介された。















 背は高い方だろう。

 新一と目線がさして変わらないから、170は越えている。



 髪は短く、少し栗毛で。

 ハキハキとした物言いと低めの声は、今まで新一の廻りに居ないタイプだった。













 しかも美人。

 10人居れば、10人はそう答えるだろう整った顔立ち。





 化粧は勿論していたが、素顔もさして変わらないと思わせる程の素肌感。





















 ・・・・・女子高だったら間違いなくモテてる部類だな。





















 それが、新一の第一印象。























「―――――――・・・・で。その刑事サンと真夜中に何やっとんねん」

「メッセンジャーで会話。なに、妬いてんの?」

「せやかて随分語り合っとるやんか・・・・・」

「彼女は俺に興味があるって言うし。俺も彼女に興味湧いたし?」

「・・・・・解った。ほんなら気が済むまで仲良うしとれ」

「誕生日なんだって、今日」















 せっかく自分が此処に来ているのに新一は構ってくれない。

 だからパソコン画面から目を離さない彼に、平次は本気で拗ねた。







 ・・・・でも、身体を逸らした途端に思いがけない言葉が聞こえてくる。















「は?」

「言われてたんだ。誕生日を迎える24時を挟んで、俺と話したいって。でも・・・・電話は断った。お前が来る事になってたし」

「・・・・・」

「もちろん、今抱えてる事件の助言が主だったけど――――――――・・・・・・・24時廻ったら『おめでとう』って言って欲しかったんだって、俺に。最近、嫌なことあったらしくてさ・・・・・色々相談に乗ってたんだけど、俺も偉そうにアドバイス出来る経験もしてないし、まあ世間話かな」

















 それはどんな関係なのだろう。

 どんな、感情なのだろう?











 そしてこの人はどういう人で、どういうつもりで工藤と・・・・・・・・・



























「・・・・貸せや」

「え!? ちょっと、服部?」

「――――――・・・・・・・・『誕生日オメデトさん。という訳で、工藤は返してもらいます。服部平次より』おっしゃー! エンター!! 以上終了!」

「わー!!! てめコラ、勝手な事すんじゃねー!」

















 だから平次は新一を押しのけ、そのチャット画面に打ち込むと送信し、終了させた。

 それは一瞬の出来事。



















「うるっさいわ!! お前の魂胆くらいバレバレや! ワザと俺を煽るような事しくさって!!」

「うるせえ・・・・大体、先月の約束ドタキャンしたのテメエだろうが!」

「奈良の事件抱えてたって言うたやろ? んな事でいちいち怒んなや!」

「・・・・・『んな事』だ? ああそう、俺に会う事ってのは『そんな事』なのかよ?」

「ああ言えばこう言うんか?? ホンマ可愛いないやっちゃな!」

「!」















 怒涛の言い合い。

 けれども、平次の最後の一言で新一が止まった。











 ・・・・・・じっと睨むその目に、平次も冷静さを取り戻す。































 ―――――――――――・・・・・・・ホンマにもー・・・・・



 それが凶悪に可愛いっちゅーねん、アホ。



























「俺がいつもどんだけ逢いたがってるんか・・・・・・知らんのはお前や」

「は・・・・服部、ちょ・・・・っ・・・・」

「せやのに―――――・・・・・のん気に女とチャットしくさって」

「けど・・・・あれは、失礼だ・・・・・」

「・・・・続きしてもええで? こーんな状態で・・・・・・キーボード、打てるんやったらな・・・・?」

「っ・・・!」

















 椅子に座ったままの新一。

 それを背後から平次は、シャツを捲り肌を滑り撫でまわす。















 ・・・肌寒い所に、熱い感触。



 新一は久しぶりのそれに、抵抗など見せずに身を任した。





















 勿論、キーボードどころか画面に目をやる余裕もない――――――――――・・・・・・





















 と、その時。

 平次は指で新一の弱い箇所を遊びながら、パソコンの液晶に何か出ているのを見つけた。





























「ん?」

















 ・・・・・チャットはさっき、強制的に終了した筈。


 けれども、再び浮かんで来たメッセージには・・・・・・























 
君が服部平次くん? 工藤くん借りちゃってごめんね。
 それと、お祝いの言葉ありがとう!


 今度、美和子や工藤君達と一緒に飲んでくれる?
 色々話、聞きたいんだ。



 ・・・・あ、ごめん。もしかして、今取り込み中?

 そーだよね、こんな時間だもんね・・・・



 失礼しました。それじゃ、また今度!





















「な、なんやこのオンナ!!??」

「・・・・ん・・・・な、に・・・・?」

「おえ工藤、このナギサっちゅーオンナに俺達ん事しゃべったんか??」

「な・・・に言ってんだよ」

「せやかて、コレって何もかもお見通しっちゅー事やんか・・・・・・」

「――――・・・・・へ?」















 平次の手が止まったので、新一も少し冷静になる。

 そうして目の前の画面を見て、少し固まり・・・・・・











 ・・・・ひとつの答えに辿り着いた。





























「おい・・・・さっきそれっぽいメッセージ、無理矢理返信したの誰だったっけ?」






































ひとくぎり





























 ・・・・・それから数日後。



 平次も新一も、揃って噂の彼女に会う事になるのだが。















 最初に挨拶した時の意味ありげな微笑み。

 それが、あまりにも綺麗だったから。























 ・・・・・やっぱりばれてるよ。



 そう、2人は顔を見合わせ項垂れた。













































Fin