寒いけど暖かな朝



「おー。晴れたなー」

「せやけど布団干すには寒いな~」

「明日は15度越すって言ってるぜ?」

「なら今日は掃除だけにしとこ。工藤、こたつ上げて」















 2月に入って寒い日が続いている。

 朝の9時過ぎにベッドから這い出た東と西の名探偵は、差し込んでくる眩しい光に目を細めた。



 昨日は珍しく平次のマンションへ遊びに来た新一。

 大きな欠伸をしながら、リビングにあるこたつの布団をぱっぱと上げる。

















 ・・・・すると、物体が中から飛び出てきた。



















「いねえと思ったらこんなトコで寝てたのか・・・・・」

「ん? どないした」

「桜子。こたつでひと晩明かしたみたいだぜ」

「またかいな~。最近いくら言うても駄目なんや」















 笑いながら散乱している雑誌を片付ける。

 そのしまりのないツラがどうにも癪に障ったから、新一は少しふくれた。





















「・・・・・ま。俺にとっちゃ、夜に邪魔されなくなってウレシイけど」

「何か言うた?」

「言ってねえ。さっさと掃除機持ってきやがれ」















 出てきたのはこのマンションで平次が飼っている猫。

 アメリカン・ショートヘアの、桜子(サクラコ)だ。



 まだ仔猫の頃に平次が親戚から引き取ってきて以来、ずっとこの部屋で暮らしている。

















 最初の頃、新一はこの猫がどうにも好きになれなかった。

 『単なる友人』としてしか外で接する事の出来ない自分と違い、いつも当然の様に誰の前でも悠然と平次と居られるこの存在。













 ・・・・そして一番ムカツクのは。



 その平次当人が、『その効果の何もかもを解っていて』新一の前で桜子を可愛がっているという事だった。



















「っとに始末に追えねえっての。こんの確信犯」

「さっきから何ブツブツ言うとるんや・・・・・次、そこの窓開けてくれへん?」

「にゃっ!」

「・・・・・こっちも確信犯だったな」

「わー!! こら工藤! 桜子に何しよーとしとるん!?」

















 無表情のまま、新一は戻って来た桜子の首根っこを掴んでベンラダヘ持って行く。

 それを見た平次は焦り、叫んだ。















「別に? こいつも日に当てたほうが良いと思って」

「そいつは布団やないっちゅーに!」

「何だよそんな焦っちゃって・・・・・俺がこいつをイジメるとでも?」

「い、いや別にやな」













 ぷらーんと桜子を右手からぶら下げる新一。

 しかしされてる当の本人は、暴れるでもなく騒ぐでもなく、新一に『にゃにゃ?』と無邪気な顔を向けている。















 ・・・・だから苦笑して桜子を胸に抱き戻し、微笑った。



















「こいつの方が信じてくれてるみたいだぜ? 飼い主はそんなに焦っちゃってんのに」

「にゃー♪」

「せ、せやかてお前目がマジなんやもん」

「――――――・・・・・さーて、お前ごはん食べるか? 掃除は服部に任せて俺達は朝食にしような~」

「工藤~!!」















 わめく平次を置いて、新一は肩に桜子を乗せてキッチンへ向かう。

 暫くして掃除機の音が聞こえてきた。

























 窓から差し込んでくる光が、気持ち良い。









 ・・・・・空気は冷たいけど、天気はすこぶる快適な典型的な冬晴れだった。




































ひとくぎり

































「寝とる・・・・・」























 そうして約数10分。

 家中の掃除を済ませて戻って来た平次がキッチンで見たのは、新一と桜子の寝顔だった。



























 テーブルに突っ伏した形で顔を少し見せて。



 その肩口の所に、まるまった茶色。



















 まさか待ちくたびれた訳ではあるまい。

 だとすると、睡眠時間の少なさが原因か?



























 ・・・・・昨夜は思い当たるフシが有り過ぎて、平次は苦笑しつつその正面に座り、暫くその光景を眺めていた。














































Fin