・・・・・・風が強くなって来た。











 平次は、ガタガタと揺れる窓に目をやる。























「この分やと・・・・桜、散ってまうかな」













 揺れる樹を見つめ呟く声。

 ひらひらと踊りながら下へ舞い落ちる花びらが、絨毯を作っている。























 桜。





 春になると、その姿で人々を酔わす、桜。

























 ――――――――――・・・・太陽の下もええけど、俺はやっぱ月に照らされるのが好きやな。























 桜を見ているはずなのに、平次の脳裏に浮かぶのは違う影。

 遥か遠くの地に居る―――――――――――・・・・・ただひとりの人物。



























 ・・・・・・・・平次に『切なさ』という感情を教えた唯ひとりの人物だった。
















桜思想[02]







 それは春のこと。

 







 休みを利用して、大阪へ遊びに来いと言った所あっさりとOKで。


 東京在住で都内の大学へ通う工藤新一。

 そして、彼の幼なじみである毛利蘭。













 ・・・・その2人が、この平次の家まで遊びに来たことが始まり。





















『悪かったな。3日も泊まって』

『遠慮すんなや。俺ん方が何べんも泊まらしてもろてるし』

『そういやそうだ』

『新一ったら、どうして素直にお礼が言えないの?』

『そんなええんよ~♪ またいつでも来たって!』











 駅の改札口。

 最後の最後まで遊びとおし、東京行きの最終電車になってしまい。



 また、4人は暫く逢えなくなる。









『今度いつ会えるん? 蘭ちゃん、今度うちがそっち泊まりに行ってもええ?』

『もっちろん! 服部君も一緒に来てよね』

『おお。そんであのホコリ被りまくっとる工藤んち一緒に掃除したるわ』

『・・・・悪かったなホコリくさくて』













 満面の笑みで言われ、嫌味なのか本気の親切心なのか新一には解らない。

 ただバカにされている事くらいは解ったから、素直に表情に出した。











 その顔が・・・・何故か平次は正視できなかったのだ。























 毛利蘭と工藤新一が視界にいるのがたまらなく嫌だった。

 数日前までは確かに『何しとるん?もどかしいやっちゃな~この!』という気しかなかったのに。



















 ・・・・・・・・アカンて、こんなん。



























 変に決まってる。

 だって、これは異常な感情だ。

























 ――――――――・・・こんなん知れたら・・・・・2度と、あいつと一緒におられへん。

































 いつまでも平次は、いなくなった新一の空間を見ていた。

 絶えず人が行き交い決して一時も同じ映像を残さない場所で。













 ・・・・・・瞬きも忘れ、ただ、じっと。



























「平次? 何しとるん、行こ」

















 そう、和葉に言われるまでずっと――――――――――・・・・・・・






































ひとくぎり

























 数日後の夜。

 相変わらず平次は部屋から桜を見ていた。


 あの日以降、寒さの戻ってしまった気候。

 それは少しだけれど桜が散るのを長引かせていた。



















「平次、入るで」

「ん――・・・」









 静かに襖が開く。

 声の主は、母親。









「また見とるん? アンタがそんな桜好きやったなんて思わんかったわ」

「まあ、今年からやけど」

「そうなん?」











 ボーっと窓に寄りかかっている平次。

 何の用やと問い掛けようとして、母親の手に封筒を見つけた。











「・・・・・手紙?」

「来とったで。工藤はんから」

「工藤?」











 渡すと母親はすぐに部屋を出て行った。

 平次は逸る気持ちを堪え、その封筒を開けにかかる。







 ・・・・差出人の性格が伺えるようなキッチリと糊付けされた封書。

 無理やり手で開けるのを諦め、ハサミを取り出した。





























 ・・・・・・・・・・・・・・とくん・・・・





















 中には、普通の便箋が2枚程。

 綺麗な字が視界に飛び込んでくる。























 ・・・・・・へ―――――・・・・工藤てこんな字、書くねんな。



















 そう言えば、今までまともに新一の字を見たことが無い。

 冒頭の『服部平次様』と書かれている文字に何故か動悸が速くなる・・・・











 ・・・・そしてその、内容は。

























「律儀なやっちゃ」











 読みながら平次は微笑う。





 今時の学生が使うかという、季節の挨拶から始まり。

 まずはこの間のお礼ときて。



 少しの近況と。

 相変わらずの事件簿。









 それらが、簡潔にまとめられていたのだ。















「・・・・・ん?」















 ふと。

 平次は最後のある一文に目を留めた。



 つい、それを声に出して読んでしまう・・・・・















「・・・・今日から3日間・・・・蘭の奴が空手の合宿に行っちまってんだ・・・・・俺の家の桜が・・・ちょうど今見ごろだから・・・・来ない・・・か・・・・?・・・・」

















 瞬間、平次の刻は止まる。

 そしてそこだけを読み返し・・・・目を、ぱちくりさせた。









 今日は金曜日。

 もちろん、学校は土日休講だ。













 今は―――――――――――・・・・夜の・・・・・8時・・・・・・





















「ばりばり間に合うやんけ!!」









 平次は部屋着だったから即効で着替えた。

 財布と携帯を握り締め、ジャケットを羽織って居間への廊下を走る。









「オカン!ちょお出かけてくるで!」

「は? 何ゆうとんの」

「工藤んちに花見しに行ってくるわ」

「ちょ、平次!?」













 この場に父親が居ないのが幸いだった。

 居ればこんな時間に出て行くのを許す筈が無いのだ。



 ま、帰ってきて怒られるとしよう―――――――・・・

 平次は足早に外へ飛び出し、夜の闇を走っていった。




























ひとくぎり

























『今日から3日間、蘭の奴が空手の合宿に行っちまってんだ。俺の家の桜がちょうど今見ごろだから、来ないか?』











 新幹線は空いていた。

 指定でなくとも楽に座れ、平次は窓に映る自分を見た。











 ・・・・・・嬉しそうな表情の自分が解る。













 あの便箋の一文が、平次のこの行動力の源。



 でも不思議だと思った。

 それは・・・・











 どうして、『蘭が居ないから、桜を見に来ないか?』なのか。

 『桜が見ごろだから見に来ないか』だけで話は充分通じるのに・・・・・・・・・















 ――――――――・・・蘭ちゃん居らんくて寂しいっちゅーことかい。

 ほんで、俺でも呼ぼか~・・・ってか。





 ま・・・・そんなトコやろな・・・・・























 平次はカラ笑い。

 それ以外に、理由が考え付かない。















 ・・・・これが新一の『想い』だと気付くのは・・・もっと後の、ことだった。























「・・・・こんな夜中押しかけて、もし門前払いくらったらどないしよ」













 着くのは多分、零時を廻るか廻らないか。


 寝てるかもしれない。

 それよりも『マジで来たのかお前? バカじゃねえの?』なんて言われたら・・・・・



 立ち直れないかもしれない。





















「惚れ・・・・とんのかな、やっぱ」













 頭の中に色んな映像が浮かぶ。

 どれもこれも、新一の顔ばかり。





 怒ってる顔や、笑ってる顔。

 ・・・・嫌味ったらしく喋る姿に、推理の時の真剣な表情。







 そして。

 





















 ・・・・・・・あの時自分の部屋で眠りについた、寝顔。

























「カンペキに桜の魔力(ちから)にやられてしもた―――――――――――――・・・・」

















 あの日を合わせて3日。

 新一は、平次の部屋で眠った。



 それも夜は必ず日本酒を飲んでいた。





 最後の夜には、いつもならこんな早く帰って来ないはずの父親までも夕食に参加していたのだ。

 そういえば父親がえらく新一を気に入っていた事を思い出し、平次はちょっと気分が悪くなってしまう。





 その父親がまたよく酒を注いだもんだから、断りきれず飲み続けた新一。

 とうとう部屋に戻った時には、即効布団へ倒れてしまった。











『スマンな工藤、親父の奴・・・・』

『・・・・平気だって。俺も嬉しかったからさ』

『嬉しい? 苦しいの間違いやろ』

『いや――――――・・・・ほら、俺・・・親父とこんな風に飲んだ事・・・・・・・まだないから・・・・楽しかった・・・・・』

『工藤・・・・』









 ハタチになってから新一はまだ両親と逢っていなかった。

 だから、こうして思いっきり飲み合った事がない。





 両親ともに揃っている夕食。

 何より、それが新一には眩しく目に映ってその中に入らせて貰ってるのが嬉しかった。











 当然の様にその後すぐに吐息が聴こえてきて。

 またしても平次は、その身体に布団を掛けた。











 闇夜にもはっきりと映し出される・・・・・・上気する肌。











 ゆっくりと上下する胸。

 細い首筋。

















 見飽きることのない、少し前髪に隠れた新一の綺麗な寝顔・・・・・・・・



























 ・・・・・・素直に、触れたいと思った。

































「―――――――――・・・・・あの口は男の口かいなっちゅーねん」

























 平次はだんだん瞼が重くなってきた。

 電車の振動が眠気を誘うのだ。











 ・・・・・・・・目を閉じた平次は、着くまでの約2時間をそのまま揺れに身を任せた。






























ひとくぎり



























 ・・・・・その時の工藤邸。







 樹が数本立ち並ぶ、中庭が見える部屋。

































「もう着いてっかな――――――・・・・・・手紙」





















 風は凪いで。

 空気はまだ冷たい。









 ・・・・・だからこそ宇宙は澄み渡っていて月がハッキリ姿を主張している、夜。





















 東京の桜も、もう満開。

 見頃はこの週末辺りがピークらしい。















「・・・・早く着いても今日だから、来るとしても明日かな」



















 賭けに出たのだ。

 新一は。











 蘭がいない事を書いて、だからお前を呼んだんだ―――――――・・・・というのを強調して。



















 笑って電話してくるかもしれない。

 『アホかお前? 蘭ちゃん居ないのがオモロないからて、わざわざ行くかいな』なんて言って。



 それとも『蘭ちゃんおらんのに行ってもしゃーないやん』て返されたらどうする?









 服部と蘭が会話する度に、妬いていたのは自分だ。

 でもその『妬く』方向が今と昔とでは違うのに気づいたのは―――――――――――・・・・あの夜から。

















 ・・・・・大阪から帰ってきて、それは更に強くなってしまって自分でも信じられない。

































「―――――――・・・・ホント、綺麗だな・・・・・桜・・・・・そうだ」

















 窓から見る桜はもちろんピンクの群れだけ。

 少し考え、寝間着にコートを羽織って新一は部屋を出た。





 その時。



























「・・・・・え・・?」













 携帯からメロディが流れたのだ。

 『事件か?』と液晶表示を見る。



 しかし、それは違った。



























「服部・・・・・・」























 そう、服部平次からだったのだ。

 新一は何故か深呼吸をしてボタンを押す。















「・・・もしもし」

『おう工藤、今大丈夫か?』

「何だよ・・・」

『何やとは何やねん!? 桜、見に来こい言うてたから来たんやないか!」

「え?」

『ほな、庭行っとるで』











 そうして電源は切れた。

 驚いた新一がベッドに登り窓を開けて下を見ると、やがて走ってくる影があった。





















 新一に気付いたその影が手を振っている・・・・





































「・・・・・・・・はっとり」





























 あったかい気持ちが、胸を満たした。

 たまらない想いが込みあがる。



























この感情はやっぱり――――――――――・・・・そういう事、なのか・・・・・・・?

































 新一はベッドを降りる。

 そして鼓動の速さを感じながら、急いで外へ向かった。


























ひとくぎり



























 新一はリビングへ行き裏口の方から庭へ出る。

 すると、上を唯見つめて立っている平次を見つけた。















「・・・・何してんだ?」

「月。不思議なもんやなーと思て」

「?」

「大阪の俺んトコからも、東京のお前んトコからも・・・・・おんなし月、見えるんやもんな」

「・・・・・・そうだな」













 平次は桜の樹の下に居た。

 其処から枝の間に見える、月を見ていたのだ。



 月と、桜と平次。

 その絵的にも完璧な構図。











 ・・・それが、また新一の心を鳴らす。



























 とくん・・・・・・・





















「・・・・蘭ちゃん、おらんのか」

「へ」

「そう、書いてたやろ」









 平次の視線は気が付くと自分に向いていた。

 そうしてゆっくりと、こっちに近づいてくる。











「お・・・・お前は・・・1人で来たのか?」

「は?」

「和葉ちゃん―――――・・・・・・一緒じゃねえのか」

「何でアイツ連れてこなアカンねん」











 いきなり新一の口から出た幼なじみの名前。

 少し平次は不思議に思い、そして嫌な予感が頭を掠めた。





 恐る恐る・・・・言葉に出してみる。











「工藤・・・・・お前まさか、和葉に気いあるんか・・・?」

「え?」

「そら・・・悪かったな、俺ひとりで来てもうて」

「な、何言ってんだ? 俺が逢いたいのはお前だって手紙にも書い―――――――――・・・っ・・・・・!」

「・・・・・へ?」

「――――――――・・・て・・・・る訳ねえじゃんなあ・・・・・・・・はは・・・」





















 静寂。





 2人の間に、暫く流れるのは気まずい空気・・・・・・・

















 新一は自分が何を言ったのか。

 平次は自分の耳に何が聞こえたのか。















 2人は見つめあい、その表情を互いに読み取ろうと相手の様子を伺う・・・・・



 そして、その空気に耐えられなくなったのはやっぱり新一だった。

















「違うぞ! いや、違うっつーか、逢いたかったのは本当だけど、でも、そんな意味じゃねえっつーか・・・・・・あああもう、何言ってんだ俺は!」

「工藤・・・・」

「お前、大体お前なあ、こんな夜中にいきなり来て常識外れだぞ!?」

「・・・・・・俺、今めっちゃ聞きたい事あんねんけど」

「人の話聞いてんのか!」

「いま嬉しいか? 迷惑か・・・・・?」











 新一の動きが止まった。

 平次の言葉の真意が解らないからだ。





 困惑の、色を浮かべる。













「・・・・・俺、お前の手紙見て飛んできたんや。ほんの数時間前、手紙渡されて読んで」

















 尚も新一は言葉を出さない。

 視線は平次へ向いているが・・・・それも少しすると逸らされてしまった。







 ・・・それは平次の心にちくりと刺さる。















 確かに、新一は自分に会いたかったと言った。

 ただしそれは普通に考えれば「ごく普通の、単なる会いたい」という事だ。







 この自分の気持ちとは違うのだ。

 今の新一の表情は、きっと『そういう』事だ・・・・・・





















「迷惑に決まっとるよな。ホンマ常識外れや、スマン」















 風が少し揺れる。

 さわさわと、樹々が音をたてる・・・・





 新一は舞い落ちる1枚のそれを目で追っていた。

















「・・・・・・・・嬉しかった」

「え・・・」

「決まってんだろ。友達が会いに来てくれたんだから、無条件に嬉しいよ」















 顔を上げて新一は平次を見た。





 いつもの、笑みで。

 少し自分より高い平次を上目遣いで。















 ・・・・・・・でも、ポケットに入っている手が震えていることを平次は知らない。





















 『友達』



 その響きだけが、強く脳裏を駆け巡る・・・・・・

















「なあ、飲もうぜ? 日本酒、美味いのがあるんだ」

「・・・・せやな」

「お前んち程豪華じゃねえけどさ。つまみも――――――・・・と、あれ、あったっけな。なかったらちょっと買ってくっから待ってろ」

「工藤!」











 その場から去ろうとした身体。

 つい平次は腕を掴んでしまい、驚いた新一はバランスを崩した。





 倒れるように寄りかかった先。

 それは・・・・















「うわ―――――――・・・な、なんだ!?」

「俺・・・・やっぱ帰るわ」

「え?」











 でも、平次に抱きしめられたと感じた瞬間すぐに離された。

 そして静かに呟いた平次の言葉に、疑問符を投げかける。





 『帰る』


 確かそう聞こえ、新一は顔を上げた。











「・・・・・・・今来たばっかりじゃねえか」

「これ以上おったら、多分自分無くす」

「どうして?」

「何でて・・・・・・せやから」













 工藤新一特有の眼光。

 それが、平次を釘付けにする。



 コートの下の寝間着からは鎖骨が見え隠れし。

 時折吹く風は、柔らかい新一の髪を揺らせる・・・・・

















 ――――――――――――・・・・・何で今まで平気でおれたんやろ。





























 こんな、自分を捕らえて離さない存在がそばにいたのに。



 どうして今まで平気でいられたんだろう。























 平次は新たな感情が生まれている事を知る。





















 少し甘くて、でも・・・・



 ・・・苦しい想い。



















 ――――――――――――・・・・・これは何ていう『感情』なんやろ・・・・・・?























「電車もうねえのに帰れるわけねーだろが。バカなこと言ってないで留守番してろ」

「・・・・・・あ」

「いいか? 大人しくちゃんといろよ」













 刻は、既に零時を廻っている。

 確かに新一の言う通りだ。









 平次はバツの悪そうな顔をして、今度はもう何も言わなかった。






























ひとくぎり

























玄関を出ようとした所で、新一は座り込む。

靴を履き立ち上がろうとして立ち上がれずにいた。











『俺、やっぱ帰るわ』



『これ以上居ったら、多分自分なくす』





















「・・・・・・何で帰るなんて言うんだよ・・・・・自分なくすって、何だよ」





















 膝を抱え。

 コートに顔を埋め。









 ・・・・余程その言葉が効いたのか、身体が震えていた。















 初めて寄りかかった胸は自分より広かった。

 大して変わらない背の長けの筈なのに、それは遥かに違う身体で・・・・











 ・・・・触れた瞬間、心臓が跳ねるのが解った。































「何で・・・・こんなに苦しいんだよ―――――――――・・・・何で・・・・・・・・」




















 脳裏に浮かぶのは、桜の樹。

 そしてその横に佇み、口の端だけ上げて微笑う平次の顔・・・・・




















「行かなきゃ・・・・」















 自嘲気味に微笑い、新一は何とか身体を起こす。

















 早く行って帰って来よう。

 ・・・・あいつが、本当に消えてしまわないとも限らない。





























 そうして扉は、静かに閉められた・・・・・




































ひとくぎり

































 2人とも、自分の気持ちで精一杯だった。

















 想いに気付いて。

 それは到底、信じられないことで。





 叶う想いじゃない事くらい、2人とも解りすぎるくらい解っていたから。





















 ―――――――――・・・・だから。





 だから、それは余計に違う方向へと気持ちが向いてしまっていた。






















 そばにいれれば。

 ただ、一緒に居られれば。



















 ・・・・・東京と大阪の距離はやっぱり遠いけれど、可能な限り出来る限りそばにいられれば。























 それが、今まさに『叶っている』はずなのに。



















 男と男。



 同性へ持つべきではない、感情。



























 ・・・・・決して『男』が好きな訳ではない2人。




 結局平次の帰る日曜の夜まで、お互いの間の空気が変わることはなかった―――――――――・・・・・




























 桜。





 春になると、その姿で人々を酔わす魔力を持つ桜・・・・・







 ・・・・・・・今も平次は、部屋で彼の地の桜を想う。