天国の週末[03]





 駅前の『ロンシャン』は洋菓子が美味しい事で有名な店だ。

 結構単価は高いのだが、嫌な甘さはなくつい2・3個は軽く食べれてしまう。



 特にカフェオレは、きちんとミルクと珈琲を飲む直前に分けて入れてくれ、またそれが本当に美味しいから新一はこの店を待ち合わせ場所にする事が多かった。













「服部は?」

「・・・・・俺降ろしてどっか行っちゃったぜ」

「あ、そ・・・・」














 ひとりで現れた快斗。

 確か平次も一緒だと聞いていたのだが――――――――――・・・・・・・



 しかし何か不機嫌だ。












「ケンカでもしたのかよ」

「べっつにー」

「ま、いっか・・・・・とりあえず何か食う?」

「俺買ってくる。新一は何がいい?」









 丸テーブルの上にはカップがひとつしか置かれていない。

 きっと快斗が来てから一緒にケーキを頼むつもりだったのだ。



 それが解ったから、彼は財布を取り出し希望の品を聞くと、ウインドウケースへと向かった。















 ・・・・・・・・・なんで来ねーんだよ服部。

















 快斗が背を向けた時に、新一は息を付く。

 そして窓の外に視線を移した。



 だんだん闇が色濃くなって来ている・・・・・・・・・・・・・





















 もしかして・・・・・俺んちに向かってんのかな。























 ここには来なくとも、自分の家には行っているのかもしれない。

 

















 週末。

 今日は金曜日。



 2人で過ごせる、数少ない貴重な週末・・・・・・・・・・























「はい。2個平気?」

「・・・・・・え? あ、ああサンキュ」

「俺も2個。晩飯前だから、こんなもんだよな」











 とは言っても腹いっぱいにはなる量だろう。

 座ると快斗は、一緒に持って来た冷紅茶を一気に飲んだ。





 そして深呼吸。













「すげえ勢いだな」

「今日は疲れた。も、ホントに疲れたのなんのって!」

「へー。どうしたんだよ」

「―――――――・・・・・・・・相談したいってのは、その事なんだけどさ」











 フォークでケーキを一突き。

 小さめのそれは、たったふた口で快斗の口に収まる。



 次に紅茶で流し込んだ後、続きの言葉を出した。











「し、新一って・・・・・・・・好きな奴、いるだろ?」

「は?」

「まあ、今は離れて暮らしてんだろ? そーゆう時ってさ・・・・・・・他の奴に目、向いちゃうもん?」

「・・・・・ちょっと待て。言ってる事が全然解らないぞ」









 新一は焦った。

 表情には出さないが、確実に動揺していた。
















 快斗にまさか・・・・・・服部との事ばれてる・・・・・・・・・・・・?
















「あ、あのさ快斗」

「悪い。別に変な意味じゃなくて――――――――――・・・・・って、どんな意味かって言われるとアレなんだけど・・・・・・・ちょっとあってさ」

















 快斗の様子がおかしい。今まで感じた事のない雰囲気だ。



 というか・・・・・・快斗に好きな奴がいたのか?

 幼馴染の彼女――――――――・・・・の事だろうか。








 何故か急に喉が渇いた新一。

 手元のアイスカフェオレを勢いよく飲んだ、その時。










「お~ 随分と深刻な顔しとるやん」

「服部!?」

「てんめー・・・・・・・・のこのこ現れやがって・・・・・」

「まだご機嫌ナナメなんかいな・・・・・・まあええわ。俺は何食おっかな~」














 服部平次が現れた。

 勿論、新一は驚く。



 そしてモンブランと珈琲を持って来た彼は、新一と快斗の間に座った。














「・・・・・どっか行ったんじゃなかったのか?」

「黒羽に置いてけぼりされたんや。まいったで」

「だって服部ムカツクんだもんよー」

「そや。工藤ほい、ゴマ付き団子」

「――――――・・・・・・・あ、覚えててくれたのか」




















 ・・・・・・・・・?
























 快斗はその時の微妙な雰囲気を感じ取る。

 少し不思議な顔をして、キョロキョロ辺りを見渡した。


















「どうした? 快斗」

「いや・・・・・」

「何ぞ気配でも感じたんか?」

「・・・・・んー・・・・・でも消えちまった」

「そーいや工藤、キッドは今回どんなんやった? 詳しく聞かせろや」

「ああ? 別にいつも通りだって言っただろ」















 目の前にいるのは、東西の名探偵。

 事件絡みの話になると瞳の輝きを増す―――――――――・・・・・・日本屈指の彼等。







 時々、快斗は2人が羨ましくなる。



















 『探偵』と『探偵』。

 同じ立場にいる2人の関係。



















 ああやって共に謎を解く関係なんて。







 ・・・・・・・共に、戦って行ける相手なんて。



























 俺には―――――――――――――――・・・・・・・・・・・































「快斗?」

「・・・・・何や。またボーっとしくさって」

「俺帰るわ・・・・・」

「え?」

「新一、また電話する。ごめん」















 快斗は寂しそうな表情をしていた。



 ・・・・・・・外見が派手な分だけ、それは浮き立って。

















 新一も平次も、掛ける言葉が見つからず――――――――――・・・・・・・・・

 そのままオレンジの影は消えて行った。






























ひとくぎり



























 工藤邸。

 あれから程なくして2人は新一の家に来た。





 ・・・・・外は相変わらず暑く蒸していて、口数も少ないまま。













「黒羽、結局何やったんや?」

「解んねえ」

「車乗っけてる時も変やったけどな・・・・・・・アイツがあんなんなるん、珍しいで」

「・・・・・・・」















 新一は黙ったまま鍵を開け、リビングに入るや否や新一は冷房のスイッチを押す。

 そのままキッチンへ入り冷蔵庫を開けた。



 ビールを2本取り出してソファに深く腰掛けた平次にひとつ渡す。















 そして自分も隣に座り―――――――――・・・・・・こつんと、その肩に頭を乗せた。























「工藤?」

「・・・・・お前来ないかと思った」

「へ?」

「今日も暑かったよなあ――――――――・・・・・・・もー目が痛くってさ・・・・・」

















 新一は目を閉じている。

 そのまま寄りかかり、次に眼鏡を外した。











 ぼやけた眼差しをゆっくりと平次に向ける・・・・・・・・・・





















「そーいや朝はコンタクトやったのに――――――――・・・・・また、ヤバなったんか」

「・・・・・キッドが出るなんて予想外だったから、油断した」

「目ぇ真っ赤やで? ホンマ無茶しよって」

「しょーがねえだろ・・・・」












 平次は新一の瞼を撫でる。

 そのまま指を頬に滑らせ包んだ。









 例え焦点が合っていなくとも、余計に威力を増してその視線は平次を射る――――――――・・・・・・・・























 ・・・・・・吸い込まれる様に、軽く口唇を合わせた。




















「・・・・・・・」

「・・・・何だよ」

「いや―――――――――・・・・・・さっきな、黒羽に怒鳴られたんや。『俺を見る時はちゃんと俺を見ろ』って」

「はあ?」

「工藤と目え似とるなあ思てたん、バレたみたいでな」

「・・・・・・そりゃ怒るよ」













 至近距離。

 相手の目の中に自分がいるのが確認出来るその距離で、平次は快斗の名を出した。












「だから置いてけぼりにされたんだろ」

「そーやねん! まあなあ・・・・・なんぞ悩んどるみたいやったけど」

「―――――――・・・・服部」

「ん?」















 新一が睨んでいる。

 見つめているとはとても言い難い程、睨みを利かせている。



 平次は、ちょっとたじろいだ。

















「な、何や!?」

「お前の目に映ってんのは誰だよ・・・・・・」

「へ?」

「ここに入ってからずっと快斗の事ばっかじゃねえか・・・・・・・そんなに心配だったらアイツんトコ行け」

「ちょ、工藤?」

「・・・・・・俺、白馬に電話する事あっから」












 静かに新一は平次の腕をすり抜ける。

 そうして、振り返りもせずリビングから出て行った。





















 階段を登る素足の音。



 平次は呆然と残像を見つめていたが・・・・・・扉の閉まる音が微かに聞こえた時に我に返る。























「・・・・・・逆効果やったかな」













 指にコツンと眼鏡が当たり、平次はそれを拾い上げる。

 自嘲気味の微笑いと共に灯りに透かした。



 度がキツくて平次は目を細める。




















「今日は怒鳴る思うたんやけどなあ・・・・・・・・・」




















 溜息を深く。


 ・・・・・またそれも自嘲気味に。





























『どうして俺の前で他の奴の話するんだ!? 俺がそばにいるときは俺の事だけ考えてればいいだろ!』










 ・・・・そんな言葉を。

 平次は1度も新一の口から聞いた事がなかったから、聞きたかったのだ。
















『お前の目に映ってんのは誰だよ・・・・・・』

『ここに入ってからずっと快斗の事ばっかじゃねえか・・・・・・・そんなに心配だったらアイツんトコ行け』

『俺を誰かと重ねんじゃねーよ――――――――・・・・・・見るなら、『俺』をきちんと見やがれ』

















 平次は2人を思い返す。

 自分を誰かと重ねて見られていた事が我慢ならず、直接言って来る黒羽快斗。



 そして・・・・・











 自分を確かにその目に映しながらも。

 ・・・・他の事を考えている平次に対して、文句を言いつつも感情を押し殺す工藤新一。




















 本当に、似ている様で正反対の2人――――――――――・・・・・・・・・・






















 テーブルの上にビールが2本乗っている。

 それは既に温く・・・・・・・




 平次は冷蔵庫へと戻すと、代わりに冷えたものを2本取り出し上への階段を登り始めた。





























ひとくぎり






























「どうして俺の前で他の奴の話するんだよ・・・・・俺がいるときは、俺の事だけ考えてればいいじゃねえかよ・・・・・・・・・・・」












 電気も付けず新一はベッドの上で膝を抱えていた。

 窓からの灯りで充分に部屋は照らされているが、その視界はぼやけている。









 ・・・・・眼鏡を置いて来たからだ。
















 ふと月を見上げる。

 窓を開けると、珍しく気持ちの良い風が入り込んできた。



 蒸し暑い夜だけどそれは幾分かひんやりしている。
















 ぐう。



 ・・・・・・するとお腹のあたりで音が鳴った。

























「――――――――――・・・・・・さっきケーキ食ったってのに、何だ俺の腹・・・・・・・・・」
























 何だかおかしかった。

 色々あれこれ考えて、悩んでいてもお腹は減る。




 ・・・・・それは生きている証拠だ。






















「あ。そーだゴマ団子――――――――――・・・・・・・って下に置いて来たんだっけ」
















 思い出してベッドを降りようとした。

 だが、下へ行けば平次がいる。



 ・・・・・あんな事を言ってしまった手前、新一は流石にためらった。


















 自分の家でなに遠慮してんだ俺は・・・・・・・・


















 もう一度腰を下ろす。

 そしてがくりとうな垂れた。
























 ―――――――――――――――・・・・・・これが工藤新一だなんてな。














 は。



 全くキッドが見たら大声上げて笑いそうだぜ・・・・・・・・・・・・・






















 冷静沈着で。

 どんな些細な事も見逃さず。



 いつでも、どんな時でも確実に相手のトリックを暴く平成のホームズ・・・・・・・


















 自信満々の余裕の笑みと。

 巧みな口述。





 それはこれまで生きてきて、自分自身さえも信じてきた『自分』だった筈。




















 ・・・・・・・・けれども『真実(ほんとう)の自分』が他に在る事に気付いてしまった。























 もう独りには戻れなかった。

 ひとの温もりを知ってしまった今、それがない生活は考えられなくなってしまった。



















 近くにいるのに。

 確かに、一番近くにいるはずなのに。









 想いが強くなればなる程――――――――――・・・・・・・不安は大きく心に圧し掛かってくる。


























 週末だけなんて、嫌だった。

 もっともっと一緒にいたかった。



 けど、そんな事を言ってしまって鬱陶しいと思われたくなかった。





















 この家を出れば自分は完璧な『工藤新一』を演じなければならない。

 快斗にも探にも、自分と平次がこんな関係であることを悟らせる真似は出来ない。






 ・・・・・・勘の良い2人に隠し続けるのは容易じゃない。
























 だから新一は、平次に対して『完璧な友達』を演じていた。

 学内で逢っても必要以上の会話をすることなく、表情も声も『仲間』に対するものにしか見せなかった。



























 好きになり過ぎた方が辛い・・・・・・・・・・・



 強くなり過ぎた想いは――――――――――・・・・・・余計に言葉を飲み込ませる。
























「・・・・・・・・・痛っつー・・・・・・・ちくしょー・・・・・・・・」




















 ツキンと。

 再び眼の奥が痛んだ。























 ・・・・・この痛みは(あかし)だった。

























 単なる『仲間』でしかなかった平次。

 もちろん男に興味なんかある筈もなく、それは平次も同じで。



 なのにどうしてか肌を重ねてしまった、あの夜の『証』――――――――――・・・・・・・・

















 こんな風にもやもやと悩んでいると、必ず眼が痛む。

 日差しのせいもあるけど、それ以上にこの身体にはあの時の事が鮮明に焼きついているらしく。























 あの事を、思い出さずにはいられない・・・・・・・・・・・・・・













































「・・・・・・・せっかく週末だってのに。何で俺はこうダークなんだ」

「ホンマやな」

「!?」










 新一は顔を上げた。

 幻聴かという表情で扉の方を見る。



 そこには――――――――・・・・黒い影が寄りかかっていた。

 声で平次だと解る。













「せっかくのビール温くなってもうたから、新しいのもろたで」

「・・・・・・」

「目え――――――――――・・・・まだ痛むんか」

「・・・・ああ」

「そか。せやったら灯り付けん方がええんやな」












 視線を電灯スイッチへ向けるが、その答えに平次はそのまま中へと入ってきた。

 静かに扉は閉まる。











 新一は平次の方を向いていた。

 しかし灯りのないこの空間では、眼鏡のない新一には平次は闇と同化していて表情が見えない。



 黒いシャツを着ているから余計にだ。













「・・・・・・・行かなかったのかよ」

「行って欲しかったん?」

「・・・・」

「行ってどないすんねん。アイツに用事なんてあらへんし、こんな時間に行くなんざ非常識やろ」













 確かにその通りだった。

 言葉を飲み込む新一の隣に平次は腰を下ろす。



 月明かりを背に受けていて、その表情は見えない・・・・・・・





















 ・・・・そのまま、数分。





























「なあ、工藤」

「・・・何」

「外、行こ」

「え?」

「ちょうどええ、この団子とビール持ってくで!」

「うわっ」










 平次はその手を掴み部屋を出た。

 団子を新一に持たせ、自分はビールを抱えたまま階段を駆け下りる。




 ・・・・・途中バランスを崩しかけながら。












「どこ行くんだよ!?」

「ええから黙って付いて来いや」

「ちょ、眼鏡ないと見えねえんだって!」

「俺がいるやろ! ホレ! 鍵閉めるし早よ出え!」

「・・・・・な、何なんだよ一体?」










 平次に押されて新一は靴を履く途中のまま外へやられる。

 すると扉を開けた時、気持ちの良い風を受けた。












「うわ・・・・・けっこー涼し」

「せやろ~? 蒸し暑い部屋ん中にいると思考まで腐るで」

「・・・・そうだな」












 ふわりと新一が微笑った。

 この家に入ってから初めての新一の笑顔だ。



 平次も無性に嬉しくなる。












「何へらへらしてやがる」

「工藤が笑ったから」

「・・・・・ばっかじゃねえの」












 目を逸らしながら新一は赤くなる。

 いくら視界不明瞭でも、平次の満面の笑みが読み取れたからだ。






 ホントに今更何を赤くなる事があるんだか・・・・・・・・















 とっくに身体の隅々まで知って知られている関係だと言うのに。

 未だに返す反応は、何も知らなかった頃から変わらない。

















「行くで。ビール温くなってまうわ」

「なあ、俺腹減った」

「せやから団子持って来たやろ!」

「どっか店入ってメシ食おうぜ」

「アホ。その分俺らの時間減るんやぞ?ええんか?」

「・・・・・・じゃあコンビニで握り飯」











 第3者が廻りに居ない時なんて、こうした夜くらいのものだ。

 学校では仲間が数多くいるし、適度に有名なせいでいつでも人の目を気にしなければならない。



 わざわざ気持ちを押し殺す場所に行くより、最初から誰の気配もない所に行った方が良いに決まってる。







 まあ。

 本当はこうして外に出ないのが1番なのだが・・・・・・・・・・




















 歩き始めて数分。





 ・・・・・平次が言葉を出す。




















「気、晴れたか?」

「ん?」

「さっきはスマンな。黒羽の事ばっか言うて」

「――――――・・・・・・・もういいって。あいつを心配してくれたのは嬉しいし」














 新一にとって、平次とは違った感情で大切な快斗。

 その快斗を(ないがし)ろにするような人間であるなら、例え平次でも許しはしないだろう。











 ・・・・・・それだけ特別な存在だという事を、平次も解っている。


















 夜空を見ながら新一は歩いていた。

 ぼやけていたが、でもそれなりに綺麗に視界に飛び込んでくる。



 『ある程度見えない』世界というのは結構面白いものだ。





















 ――――――――――・・・・・・・人の心も、きっとこんな風に全部が明瞭じゃない方が良いのかもな。





























 表情が解るから、不安になる。




 見えるから、心配になる・・・・・・・・・・






















 見えないほうが良いこともある―――――――――――――――・・・・・・・・・・






















「お。コンビニ発見~!」

「なあ服部・・・・」

「ん?」

「・・・・・俺さ、昨日お前の夢見たって言ったろ?」

「ああ――――――――・・・・そんな事言うてたっけか」














 コンビニの明かりが見えてきた手前で、新一が言葉を発した。
























 夢。



 ・・・・・・・それは確か平次が日本ではないところで。




















「俺・・・・・・泣いてたんだよね。夢の中でお前見て」

「泣いてたあ?」

「どーしてかなーって・・・・・考えてたんだけどさ」



















 新一が『夢の中』とは言え『泣いていた』という事を聞いて、平次は驚いた。























 新一は泣かない。

 どんな哀しい事があろうと辛い事があろうと、涙だけは絶対に見せる事はない。















 ・・・・・それは平次の前でだって、絶対に。
























「今、何となく解ったかな」















 新一は微笑った。



 ただ、静かに。
























「何でや?」

「それは言えないけどな」

「はあ? 何じゃそりゃ」

「さてと。握り飯買って来よっと~」










 新一はそのままコンビニへ入る。

 慌てて平次もその後を追った。































 ――――――――――・・・・・・・あれは、多分『未来』だ。


























 いつまでも一緒にいられる訳がない。

 いつまでも大学生じゃいられない。









 始まりがあったんだから、終わりだっていつか来る・・・・・・・・・・・・

























 ・・・・・だからあれは。

































 さっきとは違い生ぬるい風が流れる。















 金曜の夜。

 今日は週末・・・・・・









 ・・・・・2人が一緒に居られる数少ない週末。




















「くど~ 俺『おかか』と『明太子』な」

「ふーん。はい」

「・・・・・へ?」

「俺サイフなんて持ってきてねーもん。お前が買ってくれるんだろ?」










 コンビニ。

 きょとんとした瞳。



 そう言えば、殆ど拉致状態で引っ張ってきた新一は財布なんぞ持って出れる状況じゃなかった。

 自分がそうした事に平次は気付き、カラ笑いする。










「せやったせやった」

「俺はコレ。『野沢菜』な」

「1個でええんか?」

「あと飲み物・・・・・・・・ちょっと待ってて」










 冷たい飲み物が入った棚の硝子に、思いっきり顔を近付ける新一。

 そして目当てのものを見つけた。



 ひょいとカゴの中へ入れる。












「あと煙草。宜しく~」

「へいへい・・・・」

「んじゃ。外いるから」










 会計を任せ、新一は表に出る。


 ・・・・ぼやけた視界の向こうに、ひときわ明るい光が見えた。
















「あれ月かな・・・・・明日も暑そ・・・・・・」














 どうやら明日も晴れらしい。

 何だか嫌な汗も感じてきた。







 新一はげんなりして言葉を漏らし――――――――――・・・・・・・・

 深く息を付いて瞳を閉じた。