天国の週末[05]









 午前零時を過ぎて、服部平次の携帯に黒羽快斗から電話が来たらしい。

 工藤新一にではなく服部平次に。







 しかも酔っているらしく。

 酔うと『悪酔い』する事も、平次は知っているらしく・・・・・・・・・・・・・

















 







 ・・・・・・気が付くと新一はジーンズのまま熱いシャワーを浴びていた。





























「――――――――――・・・・・痛っつー・・・・・・・・・」













 タイルに座り湯の出る方向を見上げる。

 忘れていた目の痛みが、ズキズキとぶり返していた。























 ・・・・・・・・・あんなに外は暑かったのに。



 どうしてこんなに風呂場は涼しくて・・・・・・・・・熱いお湯が気持ちいいんだろう。

























 どうして・・・・・・・・・・







































 ・・・・・・・・・どうして俺は服部を・・・・・・・・・




































 何度も何度も。

 この気持ちに気付いてから何度も、自問自答してきた事だった。





















 男を好きになるなんて・・・・・・





 ・・・・・こんな、気持ちを持つなんて。



























 あのまま――――――――――・・・・・どうして蘭を好きでいられなかったんだろう?

























 そうすればこんなに動揺しないのに。

 友達の名前を聞いただけで、こんなに不安になったりしないのに。























 そうだよ・・・・・・・・





 普通、友達が友達に真夜中に電話してきたからって・・・・・・・・


 こんなに嫌な気持ちになんか、ならないのに――――――――――・・・・・・・っ・・・・・・・・・

























「ちくしょー・・・・・・・・」

「・・・・・何や、ホンマに脱がして欲しいんか」

「え?」











 突然頭から平次の声がして、新一は驚いた。

 シャワーの音でドアが開いたのにも気付かなかったからだ。



 平次も驚いていた。

 ジーンズを穿いたまま座り込んで、頭からお湯を浴びている新一に本当に驚いていた。

























 ・・・・・・でも。


 そんな姿に、ゴクリと唾を飲み込む。



























「はーん・・・・・ええなあ。めっちゃそそるわ」

「・・・・そうか?」









 そう言って平次を見上げる新一の瞳はどこか虚ろで・・・・・

 露になっている上半身の突起は、熱さのせいかハッキリとそれを主張している。





 更に薄く開いた口唇。

 視線を下ろすと、目の前のジーンズのジッパーは完全に下ろされていた。

















 ・・・・・ゴクリ。

 再び平次の喉が、鳴る。





















「電気、消せよ・・・・」

「・・・・え? あ、ああ」

「お前も上脱げ・・・・・・・・俺がこっちやるから」

「!?」











 平次の左手が電灯のスイッチを押した途端、新一の静かな声が聴こえた。

 

 ドアは開けっ放しでシャワーも出っ放しのまま。

 暗くなった空間から、伸びてきた指が平次のそれを(まさぐ)る。



















 ・・・・・・最初は布の上からゆっくりと。























「・・・・・・く、工藤・・・・?」

「何・・・・・・」

「ど、どないしたん・・・・・・っ・・・・・?」

「――――――――――・・・・・・お前、ずっと俺にこうして欲しがってたろ」

「うわ・・・・・・・っ」

















 カーキ色のパンツ。



 腰のボタンを外すと簡単に足元まで落ち――――――――――・・・・・・

 その時バランスを崩し、平次は浴室へ倒れこんだ。





 それでも新一の手は離れない。

















「・・・・・・後ろ、閉めろ。お湯が跳ねる」

「って・・・・ちょっ」

「上は脱げって言ったのに・・・・・・ま、いっか」

「え、え、え??」













 座り込んだ平次の股の間に新一がにじり寄る。

 ずっと撫でていた箇所に顔を近づけ・・・・・・・口を開いて最後の1枚を剥ぎ、平次のものを出そうとしたその瞬間。





 
新一の髪の毛を、強い力が引っ張った。





















 ・・・・・・・頭上からは、変わらず湯の雨が2人を打ちつける。





















「・・・お前正気か!?」

「―――――・・・・・・・・俺が狂ってるとでも言いたいのか」

「せやかて、お前コレ嫌いやろ!?」

「・・・・・・そりゃ・・・好きじゃねえけど・・・・・・でも」

「なら無理にせんでええ言うとるやろ! 何や突然!?」

「・・・・・っ・・・・・・じゃあもういい!!」













 新一はカッとなり、平次の手を振り払う。

 身体を押しのけ風呂場から離れようとしたが、今度は逆にその腕を引っ張られた。







 ・・・・・完全に平次の足の間に収まってしまう。


















「待てて! ホンマどないしたんや? 俺ら、ケンカする為にココいるんとちゃうやろ?」

「は・・・・っ・・・・・離せって!!」

「うるさいわ!! ちょお黙らすぞ!」

「っ・・・・!?」















 平次はとうとう喚く口唇を塞いだ。

 新一の真上から、本当に文字通り塞いだ。












 ・・・・・・少しジタバタしていたが、やがて息が苦しくなると大人しくなる。



 次にタイミングを見計らい、空気を与えつつ舌を割り込ませて行き――――――――――・・・・・・・



























「・・・・・・・・ん・・・・っ・・・・・・・」























 同時に剥き出しの突起を指で転がすと、堪え切れなくなった身体から甘い声が漏れ始め・・・・・・・



 薄く瞳を開いて、そしてまた閉じ・・・・・・・・・




















 ・・・その腕が浅黒い肢体に廻されたのを合図に、平次は新一の中心へと指を滑らせた。




































ひとくぎり

































「・・・・・なんかエッチやなあ、服のまんまて」

「ん・・・・・・・熱いし・・・・・・重いな――――――――・・・・・・・シャワー、止めるか・・・・・・・?」

「俺はええけど工藤が困るで? 窓開けっ放しやから・・・・・声モロ漏れるし」

「あ・・・・・そうか」

















 平次はキスだけで止めるつもりだった。

 でも、やっぱりそれだけで終われる筈がなかった。





 ・・・・・・あんな新一が腕の中にいたんだから、我慢出来る筈がなかった。

























 どれくらいの時間が経ったのだろう?











 シャワーを浴びながらと言うのは今までにもあったが、さすがに衣服を纏ったままというのは初めてで。



 しかも電気は付いていなく。

 ・・・・・僅かな月明かりが差し込むだけで。











 確かに何かに怒っていた筈だったのに。

 与えられる動きと熱さに、どうでも良くなってしまった・・・・・・・・・



















「でも工藤の声響くからなあ・・・・・・・・もう博士にバレとんのとちゃう?」

「・・・・・ちょ、変なこと言うな!」

「この窓、ちょーど研究室の真正面やろ? うっわーどないするん?」

「なっ・・・・・・!」














 その言葉に新一の身体が瞬間跳ねた。

 まだ挿れたままの箇所が明らかに収縮し、中のものを締め上げる。







 平次がニヤリと微笑った。



















「・・・・・・・案の定な反応で嬉しいで」

「や、ちょ、ちょっと・・・・・・っ・・・・・・・・もう、抜けって・・・・・・・・っ・・・・・・・・ぁ・・・・・!」

「まだまだや・・・・・・・お前も復活しとるやん・・・・・・・? ホレ」

「は・・・・・・服部・・・・・・っ・・・・・・んっ・・・・・」

「工藤がこーんな声出しとるて知ったら・・・・・みんな驚くやろなあ――――――――――・・・・・・・なあ・・・・・?」

「・・・ち・・・・・くしょー・・・・・・っ・・・・・」

















 ドアに寄りかかったまま座っている平次。

 新一を跨いで乗せている体勢の彼は、シャツも下も衣服を見に着けたまま。



 しかし自分は、下ろされたジーンズと下着が右足に引っかかっているという格好で。























 ・・・・・・・・いくら暗い中とは言え自分だけ裸体で挿れられているのだから、余計に体温が上がった。

























 平次の腹の辺り。

 視線の真正面に、そそり立つ自分自身。







 果てる寸前のそれも果てた後のそれも全て――――――――――・・・・・・・この男には見られている。





























 暗闇で微笑う瞳。

 操縦桿を握るように、親指を立てられ刺激を与えられる。



















 ・・・・・懸命に声を押し殺そうとする時に身体の奥から湧き上がる疼きが我慢できず、新一は途切れ途切れの掠れた艶っぽい声と共に、堪えきれない表情を平次に向けた。





























 面白いくらい敏感に反応する新一の身体。







 いつまで経っても、最初の頃と同じく新鮮な反応を返す身体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

































・・・・・・・・・マジで手放したくないわ、俺。































 平次は最近、そう思うことが多くなっていた。









 普段はあんなに冷静で。

 滅多な事がない限り感情を乱すことなどない工藤新一。



 それが、一緒の時には少し表情が豊かになり・・・・・・・・・

 こうして肌を重ねていると、その度に見たこともない表情と声で自分を惑わす。

























 ・・・・・・好きて気持ちは、どこまで行ったら止まるんやろ。



 こんなに好きになってしもて―――――――――――――――・・・・・・

 この先、俺はどうなるんやろ・・・・・・・?



























「どうした・・・・・・」

「・・・へ?」

「何でそんな顔して俺を見る・・・・・・・?」













 新一は平次を覗き込んだ。

 汗と湯と入り混じった液体が身体中を伝い、濡れた前髪から鋭い視線を送って。











 ・・・・・・未だ2人は繋がったまま。





















「シャワー・・・・・止めてええ?」

「・・・え」

「工藤の音だけ聴いてたいんや―――――――――――――・・・・・・・ダメか・・・・・・?」

「だ、だって・・・・・そしたら・・・・・・」

「せやな・・・・・スマン、さっき自分から言うたのに」

「・・・・・・・」

















 新一はもちろん嫌だった。

 嫌だったけど・・・・・・その時の平次の表情が、何故か気になってしまった。























 だから・・・・・・



 ・・・・・その先を予想し、新一は繋いでいる箇所を大きく締め上げた。



























「え・・・・・工藤?」















 その変化に平次が気付かない訳がない。

 突然脈を早くし始めた新一の中とそれに、目の前の顔を覗き込んだ。

















「・・・・・・・あんまり煽るんじゃねえぞ。解ったな」

「ええんか?」

「今日くらいは・・・・・お前の好きな様にさせてやるって決めたんだ―――――――・・・・俺も、素直になるって・・・・・・・決めたんだ」

















 そうして新一は腕を後ろに伸ばし蛇口をひねる。

 勢い良く流れ出ていた湯は、瞬く間に活動を止め・・・・・・・・・・







 滴り落ちる水の粒だけが、僅かに残った。



































 ・・・・・・・・・・驚くほどの静けさが訪れる。











































「こんな静かやったんや・・・・・・・・」

「・・・・そうだな」

「工藤の・・・・・・・心臓の音する」

「お前のだって聴こえる――――――――――・・・・・・ここからも、俺の・・・・・・中からも」





















 新一の言葉に、平次の身体が大きく脈打った。

 それはダイレクトに伝わり、竦ませた身体から少し声が漏れてしまう。







 ・・・・・小さかったけどそれは本当に良く響いて。

 咄嗟に口を押さえた新一は、耳まで真っ赤になった。



















「・・・・・・工藤」

「う、うるさい!」

「大声出すとヤバイ言うたやろ・・・・・・?」

「・・・・う・・・・」

「まあ、せいぜい頑張って声殺してくれや――――――――・・・・・・俺は俺でやらせてもらうし」

「・・・・・・っ・・・・・・んっ・・・・・」

















 そうして平次は新一の口を塞いだ。

















 ・・・・・・・・次に聴こえた音は、互いの肌を滑る生々しい音。




























 角度を変え、幾度となく重なる口唇から漏れる唾液の音・・・・・・・・・・

 更に平次の手の中から漏れる新一からの液体の音。



 所々、2人の口からの息が漏れ・・・・・・

 繋いだ箇所からも耳にはっきりと響く粘膜の擦れる音が漏れ・・・・・・

















 ・・・・・何より新一の口からは。

























 与えられる感覚の為に声にならない声が、止むことなく発せられていた。



























「く・・・・・どう、ホンマ声・・・・大きいって」

「・・・・んなこと・・・・・言ったって―――――――――――・・・・っ・・・・・・な、なんか・・・・・っ・・・止め、られ・・・・・な・・・・い・・・っ・・・・」






















 どうやら新一はこの状況にかなり興奮しているらしく。

 自分でも信じられないと言った表情と動きで与えられる刺激を受け止めていた。





 ・・・・・必死に声を殺そうと思えば思うほど、身体の中から妙な疼きが沸き起こり。

 懸命に平次の首にしがみ付き、その耳元に艶っぽい声を漏らす・・・・・・・・



























 ・・・・・・・・そろそろ平次にも限界が来ていた。





























「もう・・・・・ええか・・・・・・?」

「・・・・・早く・・・・・楽にしろ・・・・・っ・・・」

「口、押さえろや・・・・・・」

「――――――――――・・・・・っっっ・・・!!」





















 新一が平次の肩口にしがみ付こうとした瞬間、身体の奥まで突き刺さる感覚が駆け巡る。

 同時に右手で掴まれていたのも解放され、新一は耐え切れず平次の濡れたシャツの襟を掴んだ。









 ・・・・・・・・・それでもやっぱり声は漏れ。



 その声に平次は新一の中の自分を、再び大きく脈打たせた。

















「ちょ・・・・っ・・・・・服部、お前・・・・・なんでまだ元気なんだよ・・・・・・・っ・・・・・?」

「すまん工藤・・・・・・・・もうちょいこのまま・・・・・・・」

「わ、動くなバカ―――――――――――・・・・・・・・・・んんっ・・・・俺もう・・・・・・疲れ・・・っ・・・・・・・・・」

「明日も休みやんか・・・・・・な? もうちょい・・・・」

「・・・ったく・・・・・・・も・・・・・・しょーがねえな・・・・・・・・」

























 結局2人はそのままキスをして。


 今度は、2人とも衣服を全ての衣服を脱ぎ去り・・・・・・・・





















 ・・・・・・・もう1回、再びシャワーの蛇口を捻った。




































ひとくぎり





























「うわ・・・・・もうこんな時間じゃねえか」

「さすがに疲れたで・・・・」

「それはこっちの台詞だ!」













 何度目かの波が終わり、少し2人で眠ってしまった。

 気が付いて身体を洗って出てきた時、なんと外は夜明け間近で。



 着替えて新一の部屋に来た時は朝の5時を過ぎていた。













「なあ、寝て起きたら海行かへん?」

「・・・・・マジで?」

「最近波乗ってへんやろ。ボード腐るで」

「ん―――――――・・・・・・・」

「黒羽も行く言うてたで。白馬も連れてくゆうし」

「・・・・・・・快斗?」













 ベッドに腰を下ろした時に聞こえてきた名前。

 それで、新一は昨夜の電話の件を思い出してしまった。





 ・・・・・少し表情が曇るのに平次はすぐ気付く。















「せや。昨日の真夜中掛かってきたん、アイツでな。何や・・・・・・ムシャクシャする事あったみたいで訳解らん愚痴に付き合わされとったんや。せやから海、誘っといた」

「あっそ・・・・・」

「行こうや。『新一が行かないんなら行かねーぞ』って脅すんや・・・・・ったく何でアイツはそんなにお前が好きなんや?」

「・・・・・ふーん」














 新一がちらっと平次を見た。

 そして微笑う。













「快斗が行くんなら、行こうかな」

「は? 何じゃそりゃ!?」

「俺とあいつは相思相愛なの。邪魔すんなよ」

「なな、何言うとんねん工藤!?」












 わめく平次をよそに新一は窓を開けた。


 もうじき開ける空から舞い込んで来るのは、やっぱり温い風・・・・・・・




















 ・・・・・・・今日も暑くなりそうだ。


















「無理せんでええで? お前暑いの嫌なんやろ?」

「お前が誘ったんだろうが」

「いやいや、紫外線も肌に悪いっちゅーし・・・・・・・・ホラ、俺が付けたキスマーク、明日までに消えへんで?」

「何言ってんだ・・・・・? 『痕残すようなアホな真似はせえへん』って日頃言ってんのお前だろ? ねえぞそんなもん」

「・・・・・そうでした」


















 そう。

 平次は決して新一の身体にキスの痕を残さない。











 ・・・・・・それだけは最初から気を付けている事で、お陰で新一は夏でもそれを心配する事はなかった。





















 しゅんとする平次。

 我慢しきれず、新一は笑い出す。


















「な、何じゃい!」

「ったく・・・・・・・・・安心しろって。野郎に妙な気起こすのはお前だけだ」

「俺は別にやな・・・・」

「ん~ まあ俺を見て変な気起こすのは沢山いるかもしれねーけどな・・・・・夏になると多いんだよねー・・・・・俺ってソウイウフウに見えるか?」

「黒羽と同じこと言うなや!」

「は? 同じ?」



















 それに新一は嬉しかった。

 平次がちゃんと、昨日の電話は快斗からだと言ってくれたから嬉しかった。















 ・・・・・・そして、その快斗を一緒に海へと誘ってくれた事が嬉しかった。































 本当に。









 だから好きなんだよなあ―――――――――――――――・・・・・・・































「ん?」

「何でもねーよ。じゃあ時間になったら起こせよな」

「う・・・・解った」













 そして新一は平次に背を向け、横になる。

 すぐに吐息は聴こえてきて・・・・・・・・



















・・・・・ベッドの横に敷かれた布団の上に仰向けになった平次も、目を閉じるとすぐに眠りに落ちて行った。


































ひとくぎり



































 ・・・・・・・・・週末はまだ残っている。











 そして、これからも2人の気持ちが同じでいる限り、週末の逢瀬は続いていく・・・・・・・・



























 あしたも同じ気持ちでいるかとか。

 この次逢った時まで、お互い同じ気持ちでいられるかとか・・・・・・・

















 それは誰にも・・・・・・・自分達にも解らないけど。




























 天国の週末。





 今生きているこの瞬間は、確かにそう呼べるから。





























 ・・・・・・・・・だから今だけは。

































 今はまだ――――――――――・・・・・・・・

































 頼むから。









 俺からあいつを・・・・・・・・奪わないでくれ・・・・・・・・・・・・・・・










































Fin