停電の夜には



 新一は闇が嫌いではない。













 小さい頃から、眠る時は必ず暗闇にしていた。


 途中でトイレに起きる事も無かったし。
 闇でも目が慣れてくると、窓から漏れてくる月明かりやビデオデッキなどからの電源で、結構明るかったので困らなかった。









 だから。



















 ・・・・・こうして夜に停電になっても、『怖い』なんて気持ちは起こった事がない。


































ひとくぎり



























「なんか楽しいな」

「・・・・予想はしとったけど残念やな」

「何が?」

「少しは怖がってくれんとツマらん」











 昼の間は暖かかった。

 けど、やっぱり夜になると冬が近いのを実感するこの頃。



 新一は新宿にある、平次のマンションに泊まりに来ていた。













 夕食はコンビニで買ってきた『おでん』。

 最近は下手に自分で作るより美味いし安いから、2人は適当に買ってきて食べた。





















 ・・・・そうして居間で男子バレーボールを見ながらくつろいでいる時に、ふと視界が真っ暗になった。























 停電。









 どうやらここら辺一体がそうらしく。
 窓から見える夜景も、ブラックホールの様に闇に支配されている。















「俺、暗いの平気なんだよ」

「平気はええけど・・・・・そんな楽しそうなカオする奴も珍しいで」

「そうか?」

「・・・工藤」

「ん?」

















 テレビの中から聞こえていた音と光。

 そして部屋の明かり全てが一瞬にして消えた。



 それでも配置が解るのは、窓からの月明かりが有るからだ。

















 ・・・・・平次は正面のソファに座っている新一の顎を持ち上げ、テーブル越しにその口唇を塞いだ。





























 新一は驚きもせず目を閉じる。



















「・・・・・随分と興奮してんじゃん」

「暗闇で出来る事いうたら、他に何があんねん?」





















 2度3度口づけを交わし、熱い息を吐きながら新一は呟く。

 その声が急に艶を増して来たから、平次は更に体温が上がった。



 平次はゆっくりと新一の隣に移動する。





















 ・・・・・互いの心臓の音が、どくどくと鳴り響いていた。




















「昨日もその前も一緒に居たのにな・・・・・ホント、解んねえ」

「何がや・・・・」

「どうして飽きないんだろうと思ってさ――――・・・・・抱き合ってキスして・・・・・触って触られて挿れて挿れられて・・・・・後はただ一緒に眠るだけの事が」

「当たり前やん。工藤好きやろ? 俺ん事」

「正確には『俺に惚れてるお前』がな」

















 暗闇に浮かび上がる綺麗な鎖骨。

 僅かな光が、更に新一を幻想的に見せる。





















 好き。



 ただそれだけの気持ちが、目の前の男にだけ自分に触れることを許した。




















 ・・・・・新一にとってそれは本当に一大決心。

 だって。










 自分と相手は、同じ『性』を持っていて。





 そして・・・・



















「バカてめ・・・・・・そんなガッつくな・・・・っ・・・・・・もっと、慣らしてからだっつの・・・・!」

「ホンマ・・・・いつまでも慣れへんなあ、工藤」

「・・・・~~っっ!! 慣れてたまるかこんなの・・・・・・っ・・・!」

「ま。そこが可愛ええトコやけど―――――・・・・」
















 この通り、自分が『受ける側』だったからだ。

























 好きだと気付いた時から覚悟はしていた。

 もし両想いになったとしたら、多分そっち側になるだろうと。



















 そりゃあ、身長とか体格とか。

 それはお互いさほど違いは無かったし・・・・性格も、自分の方が攻撃的だったけど。





 ・・・・『コナン』だった頃から影で支えられ。

 いつも後ろから見守られていた事に気付いた、あの時。


















 どうしようもなく、好きだと気付いてしまったあの時に・・・・・・・・・・































 『抱きしめる』のではなく。



 『抱きしめられる』姿を、想像してしまったから。












 















 新一は、こうしてこの男が自分に触れるのを許したのだ――――――――――・・・・・




































ひとくぎり



























「ん? ・・・・・・・勝ったのか」

「凄いで。3連勝や」

「・・・・・確か2セット取った所までは覚えてたけど・・・・・フルセットって事は、その後2セット取られてたのか」

















 一汗流した後、テレビが生き返った。

 どうやら試合が終わったらしい。



 新一は乱れた衣服そのままに、視線を画面に向ける。



















「喉乾いたやろ。何か飲むか?」

「・・・取りあえず水」

「しっかし・・・・・まだ電気付かへんなあ」

「いいんじゃねえの。夜が、夜らしくて」















 そう言う新一は本当に楽しそうだ。

 声が上ずっているのは、余韻のせいだけじゃないだろう。



 平次はキッチンでコップにミネラルウォーターを注ぐ。

 そうしている間も、新一はソファから視線を平次に向け続けていた。

















 ・・・・・衣服を整えようともせず、ただじっと。























「工藤、服・・・・・着いへんの?」

「何で? 俺、ゼンゼン足りてねえぞ」

「ほー」

「・・・お前もだろ?」



















 まったくもって綺麗な顔が微笑う。

 はだけたシャツから、さわり心地の良い胸が覗いて平次を誘っている。










 ・・・・・コップを差し出すと受け取る新一。

 


 ソファの上に無造作に投げ出された両足も、素肌のままだった。


























「ホンマに―――――・・・・今日はヘンやで? 工藤」

「俺もそう思う」

「・・・何やねんそれ」

「何だろうな・・・・」

















 お前されいれば。

 何にも、他に欲しいものなんてない。














 ・・・・そう思っちまうんだから、確かに俺は変なのかもしれない。






























 でもこれは事実。



 今の俺が思う、確かな真実。































 ・・・・・・なあ服部。





















 お前がテーブル越しにキスしてきた時に、俺はそれを強く思ったんだ・・・・・








































Fin