特効薬の君



「ホンマ寒いな~ こん家」

「無駄に広いから暖房入れても意味ねえんだよ。だから、最近は自分の部屋しかいねえな」

「そーらしいな。リビング、人が住んどる様に思えんわ」

「12月になってからココのソファに座った事ねえし。綺麗なもんだろ」

「・・・・・・せやけど掃除くらいしろや。ホコリ、たまっとるやん」















 もう少しでクリスマス。

 そんな時期に、久しぶりに服部平次は工藤邸へ遊びに来た。


 玄関先で迎えた平次に、新一は微笑う。















「そうなんだ。だから、お前が来てくれて嬉しい」

「は?」

「大掃除の時期だしなー。お前、クリスマスまで泊まるだろ」

「俺に掃除やれ言うんか!?」

「いいだろ。その分、夜は楽しい事が待ってんだし」

「・・・・あのなあ」
















 久しぶり、という期間は人それぞれ。

 新一と平次にとっては『約三ヶ月』だ。



 メールや電話で連絡は取り合っていたものの。

 互いに学生というのもあって、こうして生身で逢うのは本当に久しぶりだった。











 それでも新一節は相変わらずで。

 直球な彼の言葉と視線は、もう慣れていると思っていた平次の体温を急上昇させる。



















 ・・・・・・すぐに新一は気付いて微笑った。




















「お前、まだ俺に慣れねえのか」

「な、慣れるわけないやろ」

「どうしてだ? キスもセックスも、とっくに済ましてんのに」

「それとこれとはちゃう!」

「・・・・訳わかんねー。それが強引に押し倒してきた奴の言うセリフか」

















 呆れた顔をして、新一は背中を向ける。

 リビングに寄らずさっさと階段を上った。









 その通り。

 先に新一に告白し、勢いで押し倒してしまったのは平次だ。



 でもその先はきちんと合意の上。

 決して、無理矢理ではない。



















 ・・・・・・しょうがないではないか。


 本当に、何度逢っても『工藤新一』を目の前にすると、時が止まってしまうのだ。





















 それに大阪と東京という遠距離。

 これが、想いをさらに募らせる要因であるのも確か。







 小さく息を付き、平次は後に続いた。

 






















「なんかオカシイな・・・・・」














 平次はふと、思い出す。

 去年も同じ様な状況があったのを思い出す・・・・・





 久しぶりに逢ったのにツレない新一。

























 その理由は――――――――――・・・・・・
































ひとくぎり































「暖房入れたから、しばらく我慢しろ」

「俺は平気やけど・・・・工藤」

「!?」

「―――――・・・・案の定やな。ここんとこずっと寝込んどったんか」












 名を呼ばれ振り向いた新一を、平次は捕まえる。

 そのまま額に自分のそれをくっつけ、今度は大きく息を付いた。














「やっぱバレたか」

「んな赤い顔してよお言うわ」

「これでも熱は下がったんだ。昨日までは、38度超えてて流石に起きあがれなかった」

「ほー。根性やな」

「だから、近づくなってのに」






















 至近距離。

 はた、と気付いて新一は平次の顔を押しやる。





 まだ風邪気味なのだ。

 健康体の人間には、近寄らない様にするのが病人の努め。















 ・・・・しかし平次は離れない。



















「おい」

「そー言われて素直にハイて聞けるかい」

「あのなあ。去年も同じこと言って正月早々、実家で寝込んだのは何処のどいつだ?」

「もう免疫出来とる」

「俺はウイルスか」

「そうや。『俺』っちゅー『特効薬』しか効かへん困りもんのな」

「・・・・全くその自信はどこから来るんだ」



















 新一は苦笑する。

 そして。













 近付いてくる口唇。

 それを、素直に受けた。





























 ――――――――――・・・・・・互いの息が熱いのを確かめる。




































 角度を変え、二度三度。

 ようやく部屋が暖まり始めた頃に、ふたりは身体を離した。



















「ハットリワクチン、注入完了~」

「何だそりゃ」

「クリスマスまで日もないんやで? さっさと完全復活してもらわな」

「お前が無茶しなきゃすぐ治るって」

「・・・・どーゆー意味じゃい」























 さらりとクギを刺され、平次はカラ笑い。




 まあきっと今夜はそういうコトになるだろうけど。

 でも一応、俺の体調を考えろよ? という事。



















 ――――――――――・・・・でも一度抱き合ってしまえば、身体の欲求は簡単には止められまい。




























 何しろ三ヶ月ぶり。

 だから新一も、根性でここまで体調を戻してきた。







































 クリスマスは、もうすぐ。
























 ・・・・・久しぶりの二人きりの時間。




 過ごせる時に、思い切り楽しまなくちゃな――――――――――・・・・


















































Fin