「工藤。お前、最近オカシイんちゃうか?」

「おかしい? 俺がか」

「推理に迷い見えるし、集中力も欠けとる――――――――・・・顔色も良おないみたいやし」

「風邪気味なんだ。心配すんな」

「おーい工藤君、ちょっとこっち来てくれないか」











 都内の、とあるビルの屋上。

 大学の生活にもだいぶ慣れてきた2年目の、工藤新一と服部平次。



 2人はこの寒い雨の中で起こった、ひとりの少年の事故現場に来ていた。





 またしても事件に引き寄せられた彼ら。

 せっかくの週末は、結局顔なじみの警察関係者と共に過ごすことになってしまった。











「・・・・・ホンマに大丈夫なんやな」

「自分の身体は自分が良く解ってる」

「なら、ええけど」

「工藤君?」

「いま、行きます」















 いつも通りの眼光。

 普段通りの口調。



 でも。





















 ・・・・・・・・小雨の中での現場検証は、確実に新一から体温を奪っていた。












吐息は語る[01]









「せやから言うたのに」

「・・・・・うるせえ」

「明日からロスや言うてなかったか? どないするん」

「行くさ。もちろん」

「一晩で下がる熱と思えへんけどなあ」











 工藤邸。

 赤い顔をして布団から顔を出す新一が、苦しそうに声を出す。



 やっぱりというか何というか。

 朝から感じていた寒気が、雨に打たれたお陰で本格的な熱を生んでしまっていた。











 ・・・・・だから平次は微笑う。



















「マジで腹立つな・・・・・」

「ん?」

「お前、俺が寝込むと喜びやがる」

「そらそや。こんな色っぽい工藤、滅多に見られへん」

















 再び微笑。

 薄闇の中、その表情がぼやけ見え、新一は身体を震わせた。



 そうして水を求む。

















「温くなっとる。入れ替えてくるわ」

「いい・・・・それで」

「そうか?」

「どうせ温くなるんだ―――――――――・・・・・お前が、飲ませるんだから」

「それもそやな」















 力なく微笑う新一が身体を起こす。

 平次が左腕でそれを抱えると、自身の口に水を含んだ。

















 ・・・・・・・ゆっくりと液体を流し込む。

























「・・・・・ん」

「・・・・やっぱ熱いで。早よ寝え」

「熱いかな―――――・・・・・すっげえ、寒いんだけど・・・・・」

「そら風邪ひいとるんやし」

「だよな・・・・・」















 ずるりと。

 再び新一はベッドに横たわる。



 先ほど飲ませた薬が効いてきたのか、眠そうに目を細めた。















「工藤」

「・・・・なんだ」

「ロスから戻ったら、話したいことあんねん」

「はなし・・・・・?」

「ああ。ホンマは今日しよ思とったんやけど、無理みたいやし」

「・・・・・」

「・・・・工藤?」



















 会話の途中で言葉は吐息に変わる。

 汗ばんだ額に手をやり、新一の腕をしまうと平次は息を付いた。











 ・・・・・その寝顔をゆっくりと眺める。



 



 

























「・・・・・・・・・・もう終わりにせんとな」































 平次は思い出していた。













 あれは去年の冬。

 暖冬と言われていた予報が外れ、各地で豪雪が確認された頃。





 やっぱり今日の様な事件の後で。



 

























 ・・・・・・・・・・・新一と、酒を飲んだのが始まりだった。




























続く