工藤の日[01]


 余裕だと思っていたのに、つい本屋で雑誌を見ていて気づいたら約束の時間10分前だった。
 平次は焦って電車に飛び乗り、時間にうるさい新一にメールで『少し遅れる』と送る。

 言い訳してもすぐばれるから、会ったら素直に謝るしかないな~ と既に暗くなった外を眺めた。









 米花駅。

 強くなった雨に、強くなった風。
 屋根のあるはずのホームが水びだしだ。
 


 時間を見ると6時20分。予想よりも大分遅くなってしまった。
 平次はとにかく走って改札を出た。

 ・・・すると、左側の柱に寄りかかる影が平次を睨んでいる。






「工藤すまん! 少し所や無かったな」
「遅れるなんていい度胸じゃねえか。連絡ぐらい入れろ」
「へ? メール届いてへんの?」
「メール?」
「ちゃんと遅れるて送信したんやけど――――――――・・・けど遅刻は遅刻や。ホンマ堪忍な」






 素直に頭を下げる。
 てっきり怒鳴られるか無視されるかと思ったが、次に平次が見たのは・・・・・







 ・・・・・・真っ赤な顔をした新一だった。











「へ?」
「そ、それでつまみは買って来たんだろうな!」
「・・・・そら勿論」
「じゃあとっとと行くぞ。雨、これからもっと酷くなるらしいからな」
「そん前に、ちょおこっち」
「あん?」






 雨のお陰で不快指数100%の駅構内。
 汗ばむその空気の中、目の前の新一も髪の毛が額にはりついていて・・・・でもただ一箇所、口唇だけが乾いていた。





 ・・・・・平次の身体が疼く。






「ちょ、ちょっとおい、何処連れてく気だ!?」
「すぐ済むし」
「は?」
「工藤ってホンマ所構わず――――――――――・・・・俺の身がもたへんっちゅーねん」







 駅を出て、雨の降りしきる中を傘も差さずに新一を掴み進む。
 階段の下のコンビニの裏にまわると、その壁に押し付けた。








 ・・・新一は目の前の男を睨む。





 無意識なんだろうが、この目がいつも自分を惑わしていて気持ちを掻き乱す・・・・・










「何の真似だ」
「予想ついとるクセに」
「っ!」






 雨に濡れても乾く口唇に平次は食らいついた。
 熱い息と共に進入させる舌が、新一の僅かな理性を崩す。







「お前・・・・・・人が、来たら・・・・・っ・・・・」
「こんなトコ誰もけえへんて」
「ちょ、や、やめろ」
「今日は『工藤の日』なんやろ? せやからパーッっと飲も思て誘ったんやろ? 理由解ったらエエもんくれる言うたよなあ・・・・・・?」
「!?」
「俺にとってこれ以上のモンはあらへん」
「ち・・・くしょー・・・・俺はモノじゃねえ・・・・・っ」
 










 平次の手は、既にシャツの中で目的の物を探し当てている。
 











 指で転がす度に漏れる甘い息。
 ・・・・とうとう観念した新一が、次なる刺激を求めて自ら口付けをしてきた。










 でもそれが終わると、静かに身体を離す。
 







「もう終わりなん?」
「・・・・続きは部屋だ。風呂場でもいいけどな」
「こんなんさせといてからに・・・・拷問や」
「今日は俺の日だぜ? 俺の好きにさせてもらう」
 









 新一は微笑う。
 雨に濡れ、汗に濡れて綺麗に。









 ・・・・ああ工藤や。



 平次は素直にそう思い、二人は身体を何とか落ち着かせてからその場を離れた。
 






















ひとくぎり
























 9月10日は、工藤の日。




 ・・・・今日は俺が幸せな日。