永遠の半年

「久しぶりやな」
「・・・」
「怒っとる?」
「どけよ。急いでんだ」




















 夏はとうに過ぎていた。
 










 当然だ。
 10月ともなれば、学生の衣替えも終わり、冬を待つばかり。












 ・・・肌寒い日が続いていたそんな日の夕暮れ。
 ひょっこりと、こいつは現れた。




















「冷たいなあ」
「言ってる意味が解らねえ。どけ、俺の車だ」
「乗せてや。足、ないねん」
「知るか」




















 この男の名は服部平次。
 もともと関西の人間だが、大学進学を機に東京へ来た。











 しかし―――――・・・2年に進んだばかりの桜の頃。
 彼は、突然姿を消した。




















 ・・・あれから半年。
 










 一度も連絡を寄越さなかった。
 大学側に聞いても、大阪の実家へ問い合わせても・・・・何も教えてはくれなかった。





















「逢いたかったで、工藤」
「・・・だから退けって言ってるだろ」
「嫌や」
「っ・・・ちょ、何す・・・っ!!」
「―――・・・あったかいな・・・・・・この半年ずっと、寒うてかなわんかった」
「え?」




















 振り切って運転席に乗ろうとしたその瞬間。
 新一は、強い力で抱きすくめられる。

 最初は逃れようともがいていたが、耳に届く声の小ささに驚いた。
 だから。

 










 ・・・廻された手に触れた。




















「お前は、勝手だ」
「解っとる。言い訳はせえへん」
「じゃあ説明しろ。あの日、あの夜から消えた理由を」
「助手席に乗ってもええ? ちょお、長なる思うし」
「・・・ああ」




















 新一が頷くと、彼は微笑う。
 そのまま身体を離して車へ乗り込み、フロントガラスから見える夕日に目をやった。











 それを背に―――・・・何故か新一がこちらを見ている。




















「どないした」




















  一向に入ってこない新一。
  平次は再び、外へ出る。

 上目遣いに睨まれ・・・・・・『やれやれ』と肩をすくめた。





















「・・・何や。言わんでも解ってもうたか」
「消毒液の匂いが染みついてる。それに、手も腕も身体も前よりずっとやつれやがって・・・バレないとでも思ってたのか」





















 抱きしめられた腕。
 背中に廻された感覚が、あの夜とはまるで違った。





















 ・・・だから解ってしまった。




















「大丈夫やって。こーしてココ、おるし」
「そういう問題じゃねえ」
「工藤」
「お前は何も解ってない。俺が、この半年・・・・・・どんな気持ちでいたと思ってんだ」
「・・・スマンて」




















 そのまま新一は運転席に乗り込んだ。
 










 声を震わせ。
 肩を、震わせ。





















 ――――・・・そうして車は2人を乗せて走り出す。






























 夕暮れの中。
 互いの『半年』を、語りながら。















Fin