白い想い







「工藤君、あなたチョコレート好きだったわよね」

「へ?」

「・・・・・・・そこのコンビニで半額だったの。はい」

「サ、サンキュ」

















 灰原哀。

 ・・・いや、宮野志保。





 以前、共に苦難を乗り越えた少女が新一に小さな箱を差し出す。



















「それとコレ、大阪のお友達にもあげといて。あと、あなたによく似てるお友達と、背の高い・・・・ええと何て言ったかしら」

「・・・・・・・・服部と快斗と白馬の事か?」

「そうそう。宜しくね」



















 工藤邸の真ん前。

 門を開けようとした新一に声を掛け、4つの形の異なった箱を渡すと志保は隣の阿笠邸へと入っいった。





 突然のことに、数秒間止まってしまう。



















「何だ? 半額?」

 















 そして気付く。


 ・・・・・・・・・・・バレンタインを過ぎて余ったチョコの安売りだと。




















「服部なんていつ会うか解んねえのに。変な奴・・・・・」



















 鍵を開け家に入る。

 新一はマフラーを解きながら階段を上がり、部屋に入って暖房のスイッチを押した。



 そして、ベッドに上着を放り投げ、今もらったチョコを開けてみる。

























「お~ 俺のホワイトチョコじゃん。らっきー・・・って、そうだ蘭からのも確か・・・・」

















 カバンから取り出したのは、これも綺麗に包装された紙袋。

 幼なじみの毛利蘭から今朝もらったものだった。













 実は、工藤新一がチョコレート好きなのは結構有名な話で、毎年このイベントには全国のファンから沢山の包みが届く。

 14日当日には家にダンボールで・・・・・・・・・・・・何箱分くらい運ばれたのだろう?





 新一は、その2個の包みを嬉しそうに眺めた。





























 ・・・・何故か。



 こうして遅れて届いた贈り物というのは、意外性が高く嬉しい。

 



















 風邪ひいて昨日まで学校を休んでいた蘭はともかく、灰原は・・・・・・・・・・・

 昨日も一昨日も博士の家で会ってたのに。





 あれ?? 何で?

 

























「・・・・・・・・ま、いっか」















 新一は深く考えない。ここらへんがB型だ。さっさと包装紙を破き、それぞれの味見をする。

 なかなかうまいじゃん~ なんて呟きつつ、服を着替え始めた。

















 そして。



 明日会う約束をしている快斗と白馬はいいとして、大阪の平次の元へ『灰原からもらったぞ~』というメールをとりあえず送った。






























ひとくぎり

































「・・・・・・・・・どうせ深くは考えないのよね」



















 阿笠邸の2階。

 新一の部屋の灯りが見える位置にある、志保の部屋。



 カーテンの閉じられてる窓を見つめ、ぼそりと呟く。





















 ホワイトチョコにしたのは新一だけだ。


 でも、そんな事当の本人は、深く考えもしないだろう・・・・・・・・・・































「でも記憶には残ってるでしょうね。遅れて届いたものほど、意外性が高いものだから」



















 志保は微笑う。

 頭はいいくせに、変な所で鈍感な名探偵。















 ・・・・・・・・・・・きっと一生、こうして見ているだけの存在。





























「それにしても。そろそろ『灰原』はやめて欲しいわね・・・・・・・・・もう子供から戻ったんだから」



















 『灰原哀』は子供の時の名だ。



 今は『宮野志保』という彼よりも少し年上な・・・・・・・・・・大人になった、自分の名がある。





















「・・・・・さてと」















 今日も寒い夜。

 志保は軽く息を付くと、伸びた髪をかきあげバスルームで暖まろうと部屋を出た。















Fin