ホワイトデー




・・・・蘭が、さっきから怖い顔をしている。

































「何だよ」

「ねえ、今日が何日か知ってる?」

「・・・14日だろ」

「今何時?」

「――――・・・21時25分・・・・だからそれが何なんだよ」























 リビング。

 夕飯をいつもの如く、毛利家にて馳走になった新一。



 食後の珈琲を飲みながら、夜のニュースを見ている。



















 画面に向いている新一。

 横から、凄く痛い蘭の視線・・・・・





















「やっぱり今年も忘れてる」

「?」

「そうよね。結局あたし、新一にとって単なる家政婦みたいなものとしか思われてない訳よね・・・・」

「お、おい蘭??」



















 今まで睨んでいたかと思ったら、今度は途端に哀しそうな表情。

 新一は流石に驚き視線を蘭に向けた。















 ・・・少し涙ぐんでいる・・・・・?


 何で?

 























 新一は考える。

 そりゃもう一生懸命、考える。



























 ・・・蘭が怒る理由・・・・今日は14日・・・・・なんかの記念日だったっけ・・・?



 あれは違うし・・・・・・・・・























 わ、わかんねえ・・・・

























「どうせ期待してなかったけどね」

「はっきり言えばいいだろ!」

「ちゃーんと新出先生も服部君もくれたのに・・・・」

「はあ?」























 どうしてそこに、校医の新出先生やあのひょっこりおせっかき探偵野郎まで出てくるのか。

 新一はますます訳が解らない。









 蘭はもう、怒る気力もなくなってしまった。

























「・・・その様子じゃ、誰にもお返ししてないんだ」

「へ?」

「じゃあまあ、許してあげる」

「蘭・・・? 全然訳わかんねーんだけど」

「いいの。あ、珈琲ゼリーあるけど食べる? もってくるね」

















 さっきまでと違って上機嫌でキッチンへ向かう蘭。

 答えは解らないままだが、何故か機嫌の良くなった蘭に新一まで嬉しくなり・・・・まあいいかと再び目を画面へ戻した。



 































ひとくぎり

































 そうして、24時を迎える10分前。

 いつも通り新一は自宅への道を戻る。



 途中、缶珈琲を買おうとコンビニに寄った。































「・・・・・・ん?」












 その時、目に入ったのは――――『ホワイトデーの贈り物』の宣伝ポップ。

 ・・・・新一はその瞬間、さっきまでの蘭の行動を全て理解した。





























 ああああああ~~~!!!



 そっかこれか!!

























 新一は腕時計を見て、まだ今日は残っているなと急いで適当なものを買う。

 そして急いで毛利家へ戻った。

 運良く信号にも掴まらず――――・・・・・

 あと2分という所で喫茶店脇の階段を駆け上り、事務所の扉を開ける。









 そこには・・・

























「・・・蘭」

「あれ? 新一忘れ物?」

「ホントに忘れてた。わり、コレ」

「え・・・」

















 差し出して、新一はコンビニの袋のまま渡したことに気付く。

 『しまった』と思ったが、蘭はそんなことなど気にはしていなかった。







 ・・・・ただ、新一が気づいて戻ってきてくれたのが嬉しかったらしく。



 だから、本当に嬉しそうに笑みをこぼした。

















「ありがとう・・・嬉しい」

「そ、そっか」























 新一はその表情にドキリとする。























「じゃ、じゃあな」

「うん。気をつけてね」





















 そうして新一はまた来た道を戻る。

 再びさっきと同じコンビニに寄り、今度こそ缶珈琲を買って。











 ・・・・・蘭の笑顔を思い出しながら家の鍵を開け、その時ハタと気付いた。





























「待てよ・・・蘭のやつ新出先生はともかく、服部にまでチョコ渡してたのかよ・・・・いつの間に・・・・」



































 今までの上機嫌はどこへやら。

 途端に気分が悪くなったのは、言うまでもない・・・・








































Fin