The maximum day




 ・・・・・・今日も天気が悪い。

 新一は、朝起きてカーテンを開けてその景色を見てがっくりとする。







 やっぱり、1日というものは晴れやかに始めたいものなのに。























「洗濯しよーと思ったけど止めた」















 今日は平日だが、授業はない。



 次に窓を開けてふわわと欠伸をしながら、ふと目の前の阿笠邸に視線を移す。
 洗濯ものを干している宮野志保の姿が見えた。

















「宮野~ グッモーニン~」

「おはよ・・・・・ずいぶん遅い朝なのね」

「そっち行っていいか?」

「・・・・たまには自分で朝食くらい作ったら?」



















 そんな表情をしつつも、どこか嬉しそうなのは何故だろうか。

 だが新一はそんなことには気付かない。



 寝間着だったのを着替え、また欠伸をしながら隣の家へと移動した。




























ひとくぎり























「あれ? 博士は?」

「朝早く出かけたわ。釣りですって」

「ふーん・・・・・・またなんか便利な機械でも作ったかな。夕飯、豪華だといいな」

「あまり期待はしてないけど」













 クスクスと志保は微笑う。

 新一が、じっと見た。













「・・・・・何よ」

「いや。よく微笑うようになったよな、お前」

「何か文句でもある?」

















 今微笑ったと思ったのに、新一が余計なことを言ったばかりに表情が元に戻る。

 でも、相変わらず美人なのには変わりない。













 同じ刻に元の身体に戻って、数年が過ぎ。



 ・・・・・・肩より短い髪の毛だった彼女は、今ではもう腰に届くほど。















 もともとの大人っぽい顔つき。

 それに加え、最近ではほんのり色づく化粧が新一に『女の子なんだなあ』と実感させていた。























「髪。だいぶ伸びたな」

「そうね・・・・・」

「切らないのか?」

「切って欲しいの?」

「い、いや別に・・・・・・聞いてみただけだけど」




















 だって貴方は、髪の毛の長い女の子が好きなんでしょう・・・・・・・・・?































 心の中で、志保は呟く。























 いつもいつも。



 出逢った時からそばにいた、あの人みたいに。





























 ・・・・・・・・・・だから私も。































「綺麗だもんな。切んの勿体ねえよな」

「え?」

「あ。味噌汁まだある? おかわりくれよ」





















 にっこり微笑う新一。

 志保は少しの間止まっていたが、ふと我に返りお椀を受け取る。















 少し・・・・・・胸がどきどきしていた。





























 ・・・・・・・・・・どうしたのかしら私。



 別に、工藤君が言った事に深い意味なんてないのに・・・・・・・・・





























 解ってる。

 彼には、あの人がいる。







 私の入り込む隙なんて、どこにもない・・・・・・・・・・・・・・・・





























「はい」

「サンキュ。なあ、今日暇?」

「どうして?」

「トロピカルランドの招待券、もらったんだ。良かったら一緒に行かねえか」

「私と・・・・・?」


























 志保は真面目に驚く。



 困った、というよりは・・・・・・・・・どうしたらいいのか、解らないと言った顔で。



























「今日俺、授業ねえんだ。蘭は2・3日大阪行っちまってるし・・・・・・・この券の有効期限、明日までなんだよ」

「・・・・・・そうなの」



























 ・・・・・やっぱり。

 私を誘うなんて、おかしいと思ったわ。















 毛利さんがいないから・・・・・・・





 ・・・・・・バカね。
 何、期待なんかしてるのかしら私。



























「解ったわ。付き合ってあげる」

「じゃ、車出してくる。用意しとけな」

「別に・・・・・・このままでいいわよ」

「宮野いっつもそんな格好じゃねえか・・・・・・・・・何だっけ―――・・・・・・・・・この前さ、園子んとこのパーティーに着てったワンピース・・・・・・・・・あれ、着てくれよ」

「・・・え?」

















 志保はきょとんとする。

 そりゃあ、いつも殆ど研究所や大学の研究室に出入りしてるから服装は、白衣に動きやすいパンツスタイルが多い。



 たまにスカートもはくけれどやはりスーツ系だ。

 今も、TシャツにGパン姿。



















「どうして?」

「どうしてって・・・・・・・・・似合ってたし」





















 新一も、同じくきょとんとする。

 志保がどうしてそんな事を言うのだろう? とでも言いたげに。





















「あ、貴方それ無意識な訳? それとも、いつもそんな感じなの?」

「・・・・・は?」

























 つい、志保は声を大きくする。









 ・・・・・・・・・・らしくなく、顔を真っ赤にして。





























「ど、どうしたんだよ」

「いいわ、着てあげる。その代わり・・・・・・・・・ちゃんとエスコートしないと承知しないわよ」

























 何故か脅すように新一を睨む。

 そうして右手の人差し指で、ちょこんと目の前の口唇を突っついた。











 ・・・・・・・・・極上の、微笑みを見せながら。





























「わ、解った」

「じゃ、極上に仕上げてきてあげる。楽しみにしてなさい?」





















 それだけ言うと、志保は2階へ上がっていく。

 妙な迫力に押された新一は、ちょっとドキドキしつつ車を取りに自分の家へ戻っていった。
































ひとくぎり































 その日の、トロピカルランドでは。

 かの有名な東の名探偵が、やたらと綺麗な女を連れていたと・・・・・・・・・・・































 ちょっとした騒ぎになったらしい。










































Fin