ponytail




 彼女は、いつもポニーテールだった。







 ・・・・・・最初に逢った時から、ずっと。































ひとくぎり


























「なあなあ工藤くん? 東京の平次て、どんなん?」

「どうって・・・・・」













 甘い関西弁。

 独特のイントネーションが、耳をくすぐる。



 工藤新一。遠山和葉。

 西の名探偵を通して知り合った2人。







 土日を利用して蘭の家に泊まりに来たという和葉と、バッタリ駅前で会った。

























「相変わらずだよ。今日だって休みの日だってのに、剣道の稽古だし」

「・・・・・・カノジョとか、いるんかなぁ」

「どうかな。見たことないけど」















 カフェテラス。

 窓に面した席で、向かい合わせに座っている2人。



 新一は揺れるポニーテールを見る。

















「和葉ちゃん、今日どうすんの?」

「3時に蘭ちゃんと待ち合わせしてるんやけど・・・・・初めての場所やから、早く来すぎてしもて。工藤君に偶然会うて助かったわ。ありがと」

「いいよ別に。可愛い女の子とお茶するの大歓迎」

「・・・・・工藤くんてそんな性格(キャラ)やった?」



















 くすくすと和葉は微笑う。



 初めて会った時から髪型は変わらないのに、少しのメイクと赤い口元が、あの頃より時が経っている事を物語っていた。









 元々可愛い部類ではあったのだが。

 ・・・・多分、話題の中心が昔から『とある男』だからだろう。





 頬紅など付けていなくとも、充分なくらい頬が赤い。













 現在、13時。

 その約束の時間まで2時間程あった。





















「じゃ、俺にちょっと付き合ってよ」

「・・・・え?」

「スーツ買いたいんだけど、蘭と行くといっつもあいつの好きな色しか選ばねえから・・・・・・・和葉ちゃんから見て、俺ってどんなのが合うか見てくれないかな」

「く、工藤君の好みで選んだらええやん」

「自分が好きなのと似合うのって、違うって言うだろ?」



















 得意の工藤スマイル。

 少し首を傾げ、甘えるような表情で相手を視界に入れる。





 和葉は新一の視線に少し赤くなった。





















 殆どの女の子ならばココでKOだ。

 けど、和葉はそんな事はない。

















 ・・・・・新一もそれを知っている。

























「ね」

「・・・・・蘭ちゃん怒るで?」

「大丈夫だって。他の女ならまだしも和葉ちゃんだし」

「アカンて、買い物付き合うんはええけど、ちゃんとデンワしてからにしてや?」

「俺ってもしかして信用ない?」

「そうやなくて・・・・・・・・・」



















 やたらと慌てる和葉。

 耳まで真っ赤にして新一に言うのには、もちろん訳があった。





 軽く新一が微笑う。



















「服部が誤解すると困るから?」

「そんなんとちゃうけど・・・・っ」

「和葉ちゃん。ちょっとあいつ焦らせてみないか」

「・・・・え?」

















 次に新一は携帯を取り出し、短縮を押す。

 しばらくして留守電状態になったらしく、新一は淡々と話し始めた。





















「あ。俺、工藤。いまそこで和葉ちゃんに会ってさ、ちょっと借りるけどいいよな? そんじゃあ稽古、頑張れよ」

















 ぷち。

 即座に電源を新一は切る。





 和葉の声が入らないうちにだ。



















「く、工藤君!? 何ゆうてんの??」

「さて。じゃあ行こう」

「え?」

「あ。蘭? 俺。今さ、和葉ちゃんと偶然会ってさ・・・・・時間潰しに付き合ってるから、終わったら迎えに行くから電話しろよ」



















 立ち上がり、和葉の腕を引っ張りながら蘭に電話を掛ける。

 こっちも空手の稽古中らしく、新一は留守電にメッセージを入れていた。









 さっきの平次へのとは違い、言葉は静かだけど・・・照れたような、はにかむような想いが感じられる。
















 ・・・・その時の新一の表情。

 和葉は少しうらやましくなり、そして素直に『ええなあもう、この2人は・・・』と思った。







 だから、思いっきり新一の背を叩く。





















「解った。とことん付き合ったるわ!」

「きゅ、急に元気になってどうしたのさ」

















 そうして笑う彼女は、やっぱり太陽の様な笑顔。

 出会った時からずっとポニーテールの彼女は、やっぱりそれが一番似合っていたけど。

























 ・・・・・髪をおろした姿も可愛いだろうなと、新一は思った。





































Fin