そのままの君でいて
もっと素直になれたらいいのに。
・・・あんなこと、言うつもりじゃなかったのに。

「何だよ。まだ気にしてんの?」
「・・・別に」
「それを『気にしてる』つーんだよ」
・・・・また、ケンカしちまった。
新一はベッドに仰向けになり、天井を睨む。
あんな事、言うつもりじゃ無かったのに。
出てくる言葉はいつも心と反対のことばかりだ。
椅子の背にもたれるのは快斗。
その様を、黙って見守る。
「――――・・・俺ってホント性格悪いよな」
「そう?」
「俺、真面目に言ってんだけど」
「俺も真面目に答えてんだけど」
にま。
満面の笑みを。
やっぱり黙って快斗は向ける。
・・・新一は、調子が狂ってしまう。
「この性格直さなきゃとは、思ってんだけどさ―――・・・」
「うりゃ」
「あてっ!」
ついボーっとした時、視界に星が飛んだ。
なんと快斗が、そこに転がっていたサッカーボールをぶち当てて来たのだ。
間髪入れず腹の上に乗っかる。
「フザケタことをぬかすのは、どのクチかな~・・・・」
「ちょ、やめろ!! お前さっきギョーザ食っただろう!」
「新一も食ったろ?」
「~~~~~~~っっっ」
・・・・・・約、1分経過。
「――――舌使うのは反則だぞ・・・・・・」
「上達したろ~」
「お前なあ・・・」
「・・・・・そのまんまの新一で良いんだからな」
「え?」
突然の告白。
至近距離の綺麗な顔に、自分と似た面影を見る。
・・・・瞳の中に、自分が映る。
唐突すぎて、赤くなる暇も無い。
「変える必要なんて、ねーからな。新一の良い所も悪い所も全部、俺は知ってる。それがお前だろ? あいつだってきっと・・・・・多分、解ってる筈だ」
「快斗・・・・・」
眼差しは、鋭く。
でも優しく。
語る口調は、まさしく世紀の大怪盗。
「な?」
「―――・・・しゃーねぇな。お前がそう言うなら」
「そうそう。名探偵は、いつだってそーじゃなきゃ」
またもや自信満々の笑み。
・・・全く、こいつにはかなわない。
その時また顔が近づいてきた。
今度は、しっかり口唇をガードする。
「はいはい。いーかげんにしろ」
「ちぇ~」
「お前こそ『キス魔』治した方がいいんじゃねぇのか?」
「新一がいる限り無理」
これまた真顔で。
しかも、さらりと言ってのける快斗。
新一も決して嫌がっていないから、どうしようもない・・・

その頃、工藤邸前。
「はあ・・・工藤の性格解っとった筈やのに・・・・・俺も成長しとらんな~・・さて、どないしよ」
・・・・バイクの音に気が付いた影が、今、窓を開ける。
