癒しの空間






「服部~ 起きろ~」

「んー・・・」

「海行こうぜ海。今日は海の日だぜ~」

「・・・・何や黒羽。朝から元気やな」















 ここは服部平次の部屋。

 東京での住まいである、新宿のとある高層マンション。



 その奥の一室が平次の寝室。

















「何だバレバレかよ」

「ちゅー事は・・・・工藤も居るんか?」

「いるよー。一緒にシャワー浴びたから」

















 自分に馬乗りになってじゃれてくる快斗。











 まだ洗って濡れたたままの髪。

 大抵の人間ならばこの姿なら新一と区別がつかないのに、さすがに平次には解ってしまうようだ。







 石鹸のいい香りが漂い、重い瞼を開ける。



















「――――・・・・・・勝手に人んち入って勝手にシャワー使うなって、あれ程言うとんのに」

「こまけーこと言うなって! あ。メシ出来てるってよ。 白馬お手製ブレックファスト~」

「あいつも来とんのか・・・・・」

「オラ服部! さっさと起きて食え。お前の車で行くんだからな」

「はいはい・・・・・」















 キッチンの方から新一が姿を現した。













 快斗と同じく濡れた髪。



 暑いからって、2人して昨日髪を切ったらしく。

 それがまた同じような髪型だったから、驚くというより呆れたものだ。























 ぼーっとしたまま、平次はぺたぺたと部屋を出る。



 すると珈琲の良い香りがした。























「もう10時だ。低血圧な訳でもないだろうに」

「・・・自分ちで何時まで寝てようがええやんか」

「服部。ぼやけた顔暑苦しいから、水浴びてこい」

「せやからここは俺の部屋じゃ! どんな格好しようが暑苦しかろうがほっとけ!」

「・・・・その黒さってさ。洗っても落ちないワケ?」

「これはアカやないっちゅーに!!」





















 ホントに、朝からこの騒がしさは何なのだろうか?





















 大体、平次は疲れていた。



 昨日遅くまで大阪に居て、最終でここに戻ってきて・・・・・

 このところの暑さのせいか、尋常じゃない事件が起こっていて・・・・



















 ・・・・後味の悪い殺人というのは何度も見て来たけど。



 昨日のはさすがに平次もぐったりしてしまった。





















 で。

 ろくにシャワーも浴びず、ベッドに撃沈したのが昨日の夜・・・・

























「はあ・・・・・」









 結局、平次は言われるままシャワーを浴びる事にした。

 ぺたぺたと素足の音をさせながら衣服を脱ぎ歩く。



 そして風呂場の扉を開けようとした時、腕を引っ張られた。



















「!?」

「ほらよ。入浴剤」

「は?」

「疲れた身体は、やっぱ風呂に浸かるのが一番だからな」

「・・・・工藤」

















 それは新一。





 ひとつの小さな水色の球を平次に渡すと、早々に背を向ける。

 そして、リビングへ消えて行った。























 ・・・平次はゆっくり扉を閉める。























「もしかして・・・・気ぃ使てみんなココ来たってか?」





























 府警の誰かに聞いたのだろうか。

 じゃなければ―――――・・・昨日の自分の様子なんて、知らないはずだ。







 でも。

































「・・・・嬉しいやんけ」

















 慣れてない。

 こんな事は、した事はあってもされた事なんてない。























 平次はシャワーの蛇口を捻る。

 そして、赤くなっているだろう自分の顔に・・・・思い切り水を浴びせた。




























ひとくぎり

























「それにしても。君、何で昨日大阪にいたんだい?」

「ん~ ちょっとドライブ」

「・・・・それで朝、俺を拉致しに来た訳か」

「いっやー。偶然、服部見ちゃってさ~・・・・でも、なーんかすげー暗い顔してたから、声かけらんなくて」















 リビング。

 探の作ったサンドウィッチを頬張りながら、朝食を取る3人。















 快斗は昨日、『キッド』としての仕事を大阪でしていた。

 その帰りに平次を見かけたのだ。



 得意の変装で警官に化け、その暗い表情の理由を探ったら・・・・・



















 ・・・声を掛けれなかった。

























 だから快斗は考えた。

 どうしてもらったら、一番気が晴れるか。









 自分だったら・・・・・

 





















「で、こーゆーワケよ」

「自分が持ってってやれば良かったのに。入浴剤」

「俺が持ってってもしょーがねーだろ? 服部には新一が一番なんだし」

「・・・・何だそりゃ」

「僕や黒羽君じゃ意味ないって事ですよ」

















 平次にとって、新一は特別だ。

 そして新一にとっても多分・・・

















「新一だって心配したろ。あいつ、自分の辛い事は言わねえからな~」

「ま、まあそりゃ・・・・」

「終わったんならさっさと片付ける! ハーブティー、飲むんだろう?」

「はいはい」





















 今日も外は暑い日差し。

 世間は今日から、夏休み。































 今日は皆で海へ行って、思いっきり身体を動かして・・・・























 美味しいものを思いっきり食べて、眠ろう。





























 だって夏はまだまだこれから。





























 そして、その頃の平次はというと。



 ・・・・気持ち良さそうに、お湯に浸かったまま眠っていた。











































Fin