思わぬ遭遇







「ちくしょ~ 何だよ寒いな~」

















 曇り空。

 ついでに、とめどなく落ちてくる雨粒。



 ニュースによると、本日の気温は11月下旬並らしい。























「こんな事なら冬物のジャケット着てくるんだったぜ」













 薄いパーカーな姿で身を竦めているのは、黒羽快斗という名の少年。

 米花駅に降り立ち、改札を出たところで独りごちる。





 傘を開こうとした時、ふと視界に入ったのは自販機。

 快斗はポケットから小銭を取り出し、暖かい紅茶を買った。




























ひとくぎり

























「ん?」















 米花駅前の横断歩道。

 ひとりの少年が、不思議そうな顔をしている。

























「・・・・・・・あれ? 工藤いま逢うてきたばっかりやのに・・・・・・・何であそこにいるんや」





















 向かいの駅の自販機の所に、たった今まで一緒にいたはずの工藤新一を見る。



 この人物の名は服部平次。

 大阪在住で、この連休中に東京の新一のところに遊びに来ていた関西の探偵である。





 首を傾げつつ青になって歩き出し、彼に近づいた。



















「工藤! どないしてん、俺なんか忘れもんしたか?」

「・・・・・・は?」

「しかも着替えまでしとるなんて――――・・・・・・・・・・・どっか行くんか」

「アンタ、誰」

「へ?」





















 平次は目を丸くする。



 この男は、何を言っているんだろうか?























「俺の記憶力に間違いはねえ。お前なんて知らない」

「ちょ、ちょお待てや!? その顔、その声、その目つきで工藤やないって言うんか?」

「・・・・・俺は黒羽。人違いだ」



















 少し濡れた前髪。

 寒いからかパーカーの帽子を被って。













 その時、強い風が雨と共に吹き込む。

 平次は一瞬腕で顔を覆い、次に目を開けた時にはもうその『クロバ』と名乗った少年は消えていた。





 暫く立ちすくむ。

























 ・・・・・・・・・俺、疲れとんのかな。



























 目を擦り、平次は気を取り直して切符を買う。
 そうして改札を通り、一路大阪へ帰るべく歩き出した。






























ひとくぎり



























 こんな所で西の探偵に会えるとはね・・・・・・・・





























 快斗は微笑う。



 水溜りを飛び越え、人並みをすり抜け。
 目指す今度の標的である『米花シティービル』へと向かう。


 そこが今度のキッドとしての仕事場だ。





























 ・・・・・・・・・・・工藤のフリして、ちょっと探り入れてみても良かったかもな。































 黒羽快斗は怪盗キッド。勿論、快斗はあの少年が西の服部平次だという事を知っている。

 工藤新一に関しては当然の如く。自分に酷似しているのも承知だ。





 ある事件から、快斗はこの2人に興味を持っている。































「いけね。とりあえず下調べをしないと・・・・・・・・・・・時間、ねえんだった」































 そうして快斗はまた微笑う。


 近く大阪での仕事がある。
 その時に服部平次にでも会ってみようか?







 ・・・・・・・・もちろん『黒羽』として。

 今日の事は覚えてるはずだから、あいつの反応面白いだろうなあ。

































 雨は、まだ降り続く。



 米花シティービルに着いた快斗は、廻りに人影がないのを確認すると闇の中へ飛んで行った。










































Fin