ほんとうの気持ち



「畜生・・・・・眠いじゃねーか」

「せやなあ。まだ6時やもんなあ」

「・・・・テメエは随分と元気だな」

「当たり前や。俺、実家やと朝稽古で5時起きやぞ」

「―――――・・・」















 11月に入って急に寒さの増した朝。

 少し闇が残る空を眺め、工藤新一と服部平次は米花駅へと向う道を歩いていた。



 

 ・・・・いつもなら言い返す新一。

 しかし、あまりの寒さと眠さにそんな気力も無い。















「何で俺は朝っぱらから・・・・・」

「諦めの悪いやっちゃな~ あと20分くらいあるし、スタバで珈琲でも飲も」

「当然お前持ちだろうな」

「そう来ると思たわ」















 早足だった新一。

 だから、予定より大分前に着く。



 新一は迷うことなく通りを挟んだスターバックスに入った。

 平次はキョロキョロ周りを見渡しつつ、その後に続く。















「あったけ~」

「何、飲む?」

「えーと・・・・」

















 早朝だが、ちらほらと客は居る。

 新一はメニューボードに目をやりながら席を確保した。















「俺――――・・・・キャラメルマキアート・・・と思ったけど、眠いからやっぱエスプレッソのマキ。」

「どっちも甘いやんけ・・・・俺は普通のエスプレッソでええわ」

「うるせえ。トールな」

「解っとるがな」















 店員の元気な声が響く所に平次は行く。

 新一が窓の外に視線を移すと、ポケットの携帯が鳴った。



 飲み物を指示した後、閉じられたそれを左手で開ける。

















『グッモーニン服部~ いま何処だ?』

「駅前のスタバや。黒羽、白馬の奴も一緒か?」

『俺を拾って来てんだから当然。あと20分くらい掛かりそうなんだよ、大丈夫?』

「中におるから今んトコ平気や。けど連れてくんのしんどかったで~」

『あっはっは、そーだろな寒いし。とりあえず中、いてよ。俺らも行くから』

「おう。なるべく早く頼むで」











 掛かってきたのは黒羽快斗。

 探偵仲間である白馬探から紹介された彼は、IQ400の超天才。



 東京大学を現役で合格し、適当に出席しつつも主席を守っているというとんでもない人物。











 そうして奥の4人がけの席に戻って来た平次。

 新一が、上目遣いで聞いてくる。















「・・・・誰からだ、電話」

「ん? 黒羽」

「着いたのか」

「いや。道、結構混んどるから、ここに居れて」

「ったく・・・・・道路が駄目なら空飛んで来いってんだ」

















 真顔で冗談を言う新一。

 というより、やはりまだ眠く、機嫌も悪いらしい。



 平次が向かいに座ってからも、何度も瞬きを繰り返している。















「・・・・そろそろ7時やな」

「まだかよ」

「しゃーないやん。交通事情は気まぐれなもんやで? 工藤と一緒でな」

「・・・・・・」

「いつまでもふて腐れてどーするんや。最近ずっと根詰めとったんやろ? ここらでパーッと自然にまみれて、身体労わってやらんと」













 今日、朝から出かけようと言ったのは平次だった。

 白馬探と、その友人として知り合った黒羽快斗も誘ったから、どこか郊外に行こうと。













『ええ考えやろ。こん次の週末空けとけな』

『行かねえ』

『・・・おい、工藤』

『何回言ったら解るんだ? 俺は疲れてんだよ、眠いんだよ。大体こんな時間に電話なんて非常識だと思わないのか』



















 本当に疲れていた。

 夜中の、1時を廻っていた。















 ・・・・・・・本当に新一は気が乗らなかった。

 だから、断った。



 言うだけ言って直ぐ電話を切った。























 連日の殺人事件。

 それが、複雑な糸で絡まっていて。





 風邪気味だった事も重なって、少し気が立っていたのだ。

























 ――――――――・・・・・・・・だから、その日は風呂に浸かりながら少し後悔した。



























 それから数日、平次からは何の連絡も無く。

 何となく新一も自分から電話もメールも出来なく。

















 ・・・・そう言えば、あいつが言っていたのは明日だったっけ。



 そう思っていた時にインターホンが鳴り服部平次が現れた。





















『な、何だお前!??』

『予定通り、明日ん朝決行。7時に米花駅集合やから』

『は?』

『東京から約2時間。向うは新潟県の沼田にある、玉原高原』

『俺は行かないって言っただろ!』

『―――――・・・・さて、風呂、貸してもろてええ?』

















 『無理矢理にでも連れてく』と言って、そのまま勝手に風呂に入りリビングに泊り込んだ平次。

 新一は結局逃げられず、朝早く起こされ、家を出て来たのだ。

















 解ってる。



 こいつも、白馬も快斗も―――――――・・・・俺を、本当に心配してくれてる。





















 ・・・・・解ってるんだ。



























「・・・・服部」

「ん?」

「―――――・・・・もう一杯、何か飲むか?」

「なら、コレと同じの頼むわ」





















 7時、13分。

 にわかに店内も混んで来た。





 ・・・小さくそう呟く新一の声は、でも平次は聞き逃さない。

























 そして更に、10数分。

 硝子の向こうから2人の男が走ってくるのを新一は見つけ、ふわりと微笑った。



























 ・・・・・・それは新一にとって、何日か振りの事だった。






























ひとくぎり





















「新一、なんか機嫌よくね?」

「そうか?」

「最近、警視庁の方忙しそうだったけど・・・あんま無理すんなよ。お前、刑事じゃねーんだから」

「そうですよ。僕にそんなに付き合わなくても良いと言ってるのに」

「頭使うのもええけど、ちゃんと身体も鍛えんとパンクしてまうで」

















 そうして彼らは車の中。

 互いに運転を代わりながら、久しぶりの面子の会話に盛り上がる。



 最初のドライバーは持ち主である白馬探。























 ――――――――・・・・俺も、まだまだ人間が出来てねえよなあ。





























『・・・・服部』

『ん?』

『―――――・・・・もう一杯、何か飲むか?』

『なら、コレと同じの頼むわ』



























 言いすぎた。悪い。

 心配かけて、ごめん。





 気にかけてくれて、サンキュ。



























 ・・・・・それが。



 少し反省した顔で、新一が自分からオーダーに行った時の想い。








































Fin