traveling[03]




「いねえとはどういうこった・・・・・」







 



 

 新一は空港内を歩き続けていた。

 狭くは決してない場所を、2回3回ぐるぐると。



 ・・・・いい加減、疲れてきた。











 探し続けて30分。

 快斗から連絡が来ないから、まだ自分達の乗る便の掲示は出ていない筈。



 新一は腕時計を確認した。










「・・・まさか迷子じゃねえよな」





 






 その線は薄い。

 土地勘は人一倍ある男だし、何より英語は自分同様に流暢なのだ。



 言葉が解る分、迷うことはあるまい。


















 だとすると本当に何らかの事件に巻き込まれた――――――――――・・・・・・?





















「おいおいおいおい。こんなトコまで来て面倒なのは御免だっつーの」



















 心配しているのか、していないのか。

 新一は深く息を付きながら傍の椅子に腰を下ろした。



 そうして暫し、行き交う人波に目をやる。

 








 ・・・・・で。


 大きく息を付いた。
















「はあ・・・・」















 再び携帯を取り出し、ダイヤルしかけた新一。

 すると視界に小さい頭が入り込んできた。



 黒目に黒い髪―――――・・・・・・・日本人の女の子だ。

 今にも泣きそうな顔で、新一を見上げていた。












「ど、どうした?」

「・・・・・」

「あれ? もしかしてチャイニーズ・・・・・・じゃないよなあ?」

「パパ・・・ママ、いない・・・・・っ・・・」

「え? まさか迷子?」








 ぎょっとする新一。

 小学生になったかならないかくらいのその子は、するとやっぱり泣き出してしまった。




 

 ・・・・・足にしがみついて離れない。














「お、おいおい・・・・・まいったなー」












 小さなその頭を新一はぽんぽんとすると、ゆっくりと撫でた。

 尚も泣き続ける女の子に少し目を伏せる。




















「・・・・父さんや母さん、すっごく心配してるだろうに」















 小さな子供がこんな所で迷子になるのは大変なことだ。

 

 ただでさえ日本じゃないから。

 回り中わからない言葉ばかりで、不安で不安でしょうがないのだ。















 ・・・・だからこそ、こうして自分という日本人と会って日本語を聞いたから、安心して泣き出してしまっている。

















「ああもう、こっちが先だな。あいつは取りあえず後だ」

「・・・っ・・・」

「よしよし。お兄ちゃんが一緒に探してやるからな。名前は? 言えるか?」

「あや・・・・」

「あやちゃんかー。可愛い名前だね」











 

 新一はとびっきりの笑顔を子供に向けた。



 最強な武器となるその表情は、小さな子にも効くようで。

 すぐにその『あやちゃん』は泣きやんだ。












「いい子だ。それじゃどーすっかな・・・・・迷子センターなんてココあったっけ」

「・・・おにいちゃん」

「ん?」

「おしっこ・・・・」

「ええー!? ちょ、ちょっと待った、ちょっと我慢しろよ?」











 そう言って足にすがりついてきた子供を、新一は速攻抱え上げる。

 右を左を見渡し少しの所に『TOiLET』の標識を見つけると、人波をすり抜け目的の場所へと向かった。




























ひとくぎり

























「本当にありがとうございました。なんてお礼を言ったらいいか」

「ええですって。ほな、空港で心当たり当たってみますんで」

「ご迷惑お掛けして本当にすみません」












 ロンドン市内のとある病院。

 ひとまわり以上は年上だろう男性に見送られ、服部平次はロビーを出た。



 玄関を出てすぐ待っていたタクシーに乗り込む。

 そして、慌てて携帯の電源を入れた。














「今何時や・・・・・ああもう20時なるやん! あいつら怒っとるやろな~~」















 タクシーの運転手に一言『携帯、すんません』と断ると慣れた番号を押す。

 しかし暫く鳴らしていたが、相手が取る気配がない。



 だから次の番号を押す。

 するとワンコールしないうちに『服部か!?』という大声が聞こえた。











「・・・・あいっかーらず声デカイのー 黒羽」

『のんきに何言ってんだテメエは!? 何処にいるんだよ! あん!?』

「すまんな。ちょおアクシデントに遭うてタクシーん中や」

『タクシー?』

「詳しくは戻ってから話すわ。そーいや工藤は隣、おらへんのか?」

『オマエ探しに行ってまだ戻ってこねえよ』

「そーか・・・・・いや、携帯通じへんから」

『え!? マジ?』












 そこまで話すと快斗は携帯を切った。

 突然の終了に平次はつい携帯を睨むが、快斗にとっては自分より新一が大事なのだから仕方ない。



 というか今自分が怒れる立場に無いのだ。

 
















「・・・・・工藤、出んなあ」










 そうしてさっきから何度かリダイヤルしている平次。

 しかし一向に出る気配がない。





 流石に心配になり、空港に着いたのでもう一度快斗に電話を掛けた。












「おう黒羽。工藤、出たか?」

『出ねえ。お前もう空港?』

「せや、ほんなら俺このままちょお探すわ」

『俺も探してるから、何かあったら電話よこせ』

「解った」












 どうやら快斗も動き出しているらしい。

 すると、平次はある予感が頭をかすめた。






















 ――――――――――・・・・・・まさか工藤・・・・・・・

















 それは根拠のない予感だったけど。

 今まで何度も偶然を重ねてきた彼らだからこその、また感じるそれに。









 平次はある場所へと真っ先に向かって行った。