traveling[04]





「まったくも~ 何で探偵サンたちってば、こう厄介な状況を引き起こしてくれるのかな~」











 快斗は周りを見渡しながら、息を付く。

 新一の携帯が繋がらないから焦っているのだ。



 ・・・・平次から連絡が来たと思ったら、今度は新一が行方不明。

 本当に次から次へと問題を起こしてくれる2人だ。





 快斗は息を付いた。


















 ――――――――・・・・・まさか人さらい?





















 こんな異国の地であまり考えたくない事だが、有りえない事ではない。

 あの容姿は全世界共通の芸術だ。



 



















 ・・・・・危ないおっさんとかに連れ去られてなきゃイイけど。




















 歩き回っているうちにだんだんと暑くなってきた。

 天候の影響で離陸が遅れている便が多いせいか、人もまだ多い。



 そろそろ電光掲示板も見に行っとかないと・・・・・そう思っていた時、快斗の携帯が鳴った。

 番号も確かめず出る。










「新一?」

『すまんなー。俺や』

「・・・・なんだ服部か」

『何やその言いぐさ。ええこと教えたろ思っとったのに』

「え!? 新一見つかったのか??」








 開口一番が『新一』だったのはしょうがないだろう。

 それだけ心配していたのが解るから、平次は苦笑しつつ次の言葉を出した。











『おう。ちょお変わるで』

『・・・・快斗か? わり、携帯の電池切れちまって、連絡出来なかったんだ』

「しんいち~~」

『服部と急いで戻るからさ、真ん中の座ってた所で待っててくれ』

「解った。待ってる」












 新一の声が聞こえて安心した快斗。

 彼自身も驚くほどの涙声になってしまい、同時に身体の力も抜けてしまう。



 電話を終えるとつい座り込んだ。

























「ったくよ―――――・・・・・良かった――――――――ホント・・・・・・」



























 無事で何より。

 声が聞けて、何より。





























 ・・・・・君が生きていてくれるなら、それが何よりも一番。

 

 



 この世界にいてくれるだけで、それだけで――――――――――・・・・・・

 



























 快斗は深呼吸。

 震えている身体を起こし、立ち上がる。



 時はもう20時半。

 

















 





 うわ。

 久々にキちまったな・・・・・・



























 快斗は自分の手のひらを見つめながら、落ち合う場所へと向かって行った。



























ひとくぎり































「工藤。お前ちゃんと黒羽に謝れや?」

「解ってるって」

「多分、えらい顔色悪い思うし」

「・・・ああ」











 ごった返す人間の波。

 窓から見える雪が、もの凄い勢いで硝子に叩きつけている。



 2人はシーティング・エリアへ入ると快斗を探した。













「新一! 服部こっち!!」

「あ、おった」

「快斗」









 少しキョロキョロしていると、左前方から快斗の声が聞こえる。

 椅子が並ぶ中ほどで手を振っている彼を見つけた。









「良かった。とりあえず、コレ買っといた」

「あ・・・スタバ」

「のど渇いちゃったし。ちょうど空いてたし」

「黒羽」

「さっさと座ってくんない? 苦労して席とっといたんだから」











 突っ立ったままの2人を快斗は座るように促す。

 只でさえ混んでるこの場所で、自分以外の2つの場所を確保するのは大変だったのだ。



 ショルダーや買った珈琲などがその役割を果たしていたから、快斗はそれを持ち上げた。

















 ・・・・平次と新一は大人しく腰を下ろす。















「快斗、あのさ」

「そういやさっき出たぜ。21時過ぎに搭乗手続き開始だって」

「え?」

「そーか。ま、とにかく飛ぶんや」

「ひとまず安心だな」

「・・・・・・快斗、ちょっと」











 新一が快斗の腕を掴む。

 何故か、怖い顔をして。










「?」

「服部。悪いけど俺らの席とっといてくれ」

「おう」

「な、何だよ??」











 その行動に、快斗は訳が解らず困惑の表情を浮かべた。

 平次に振り返るが、『行ってこいや』と言わんばかりに手を振っている。

















「え、新一!?」

「いいから」














 ぐいと引っ張られ連れて行かれたのは、ショップとショップの間にあるスペースだった。

 そこは簡易的な空間。







 ・・・・少しだけ喧騒が遠のいた。





















「快斗」

「・・・な、何」

「俺は、ここにいる」

「それは・・・・そうだろ」

「服部を捜しに行ったら迷子の女の子、拾っちゃってさ・・・・・両親とはぐれたみたいだから、捜してたんだけどなかなか見つからなくて。取りあえずお前に電話しとこうと思ったら、携帯の電池が切れてた」












 新一は快斗を壁に寄りかからせ、語り始める。



 決して声を大きくはしていない。

 でも、目だけはしっかりと見つめていた。








「・・・・」

「しかたないから空港の職員を捕まえて電話借りたんだけど、お前話し中だったから、服部の携帯に掛けてみたら繋がった。それで子供のこと話したら・・・・・驚いた事に、この子供が何故か服部の捜してる子供だった」

「え?」

「1時間くらい前にな。この空港で倒れた母親の子供だったらしい」















 服部平次は、空港内にあるスターバックスの売り場の列に並んでいた。

 すると、前に並んでいた日本人女性が突然倒れたのだ。





 驚いた平次。

 呼べども返事はないし、無理に揺り動かすのも危険。



 だから店員に救急車を呼んでもらうように頼み、自分もそのまま病院へ付き添ったのだ。












「幸い大事には至らなくて直ぐ意識を取り戻した。そして、まだ空港に夫と子供がいることを服部は聞いた。だから、電話番号を聞いて連絡し、病院に来てもらうことにした」

「・・・・そんな事になってたのか」

「ああ。だけど寸前に子供が大泣きしたらしい。きっと母親がいなくなったのを感じ取ったんだろうな――――――――――・・・・・・そうしてるうちに母親を呼びながら駆け出してしまった」

「・・・・・・」

「運が悪く人が多過ぎた。小さな子供は、直ぐに視界から消えてしまった。でも、その家族にはもうひと組一緒に旅行に来ていた友達夫婦がいた。そしてその友達夫婦は自分達が捜して病院に連れて行くから、今は早く彼女の元に行ってやれと先に送り出したんだ」















 病院に着いた彼は、妻の無事を確かめて安堵した。

 しかし彼女は子供を捜さずにここへ来たことを怒り、早く空港へ戻るように言った。



 だが顔色は未だ悪く。

 それに医師からの説明があるので来て欲しいと、看護士に言われてしまった。





 そばにいた平次は提案する。

 これから空港に戻るから、自分もその子を捜すと。









 ・・・・・ご迷惑お掛けして本当にすみません。

 そう彼らは言葉にすると、何度も何度も頭を下げたと言う。














「病院を出て直ぐその夫婦に電話をし、事情を説明した。子供はまだ見つかってなかった。見つけたと思ったら、すぐに人混みに紛れてしまうの繰り返しだったらしい」

「その途中で、新一が・・・・・?」

「ああ――――――――・・・・後は服部と一緒に来た夫婦が子供を無事、連れて行ったんだ」

「なら良かった」























 一通り話し終えた新一に、快斗は微笑った。

 力無いその表情に新一は目を細める。

















「・・・・・本当に悪かった」

「何で新一が謝んのさ。人助けしたのに」

「お前にそんな顔―――――――・・・・二度と、させたくなかったのに」

「新一・・・・」

「・・・・とにかく俺も服部も、ちゃんといるから」



















 新一は目の前の頬に手を添えた。



 触れた箇所から伝わる体温。

 快斗は、深く息を付き目を閉じた。

















「そうだな。あったかい」

「だろ」

「・・・やっぱ新一は誤魔化せねえな」

「服部も気付いてるけどな」

「マジで?」

「マジマジ」

















 その手に更に触れ、からからと笑う快斗。

 もう震えは伝わってこない。





 新一は、ようやく安心した。



























 黒羽快斗は父親を亡くしている。







 ・・・・・・・・数年前に突然、この世からいなくなってしまった。



















 『死』というものは身近にあるものだと知った。

 『二度と会えない』時は、突然にやってくるものだと解った。




















 だから――――――――・・・・・



 快斗はこんな時、自分でも止められない状態になる。





























 平次がいなくなり。

 新一までも、連絡が付かなくなった。





 ・・・・嫌な汗が流れてくる。



















 新一は前に『その快斗』にさせてしまった。

 だから、気をつけていたのに――――――――――・・・・・


























「うーん。俺もまだまだか」

「無理に平気そうにすんな。今晩は一緒に寝てやるから」

「ほんと!?」

「今日は俺と服部、お前と白馬の部屋割りだったけど・・・・この際どーでもいいしな」

「やったー♪」










 その提案で、快斗はすっかり上機嫌。



 ・・・・・新一は微笑った。























「じゃあ戻るか」

「新一」

「ん?」

「・・・ホントにありがとな」

「よせ。照れる」





















 外は凍てつくほどの寒さだけど。

 この空港内は、汗ばむくらいに熱い。





 ・・・・それは身体に感じる気温だけのせいじゃない。



























 3人が乗る飛行機は、21時過ぎにようやくイタリアへと飛び立つ。

 その地では。









 さらにもう一人、仲間が増えることになる。