君の心に住む人は






 今日も疲れたなぁ・・・・・・

















 刑事って、何でこんなに重労働なんだろうか。





 毎日毎日、事件は発生・・・・

 走り回って靴をいくつも潰して・・・・





















 本当に、体力勝負の世界だ。

































 真夜中。

 やっと一日の仕事から開放されたのは、午前0時過ぎ。











 高木ワタル。



 大学を卒業して、念願の刑事になって何年たった?



















 ・・・・駅で缶珈琲を買い、飲みながらふと考える。



 その時。

 後ろから走ってくる足音と共に声がした。



















「高木刑事! すいません、お待たせしました」

「じゃあ行こうか」











 現れたのは工藤新一。

 現在、都内の大学に通う若き警察の救世主だ。



 当初この彼を知らない時は

 『何でそんなコドモを頼りにするんだ?』なんて思ったが。















 ・・・・・一度その見事な推理劇を披露されてから文句を言うものは、もう警察内部には居なくなっていた。

























 帰りが同じ方向だからというのと。
 『遅くなったから、工藤くんを送り届けてくれ』との目暮警部からのお達し。



 それ故に2人は米花駅に降り立った。

 その時、新一の携帯が震えたのだ。



 

 高木は駅から車だから、新一を送るために電話が終わるのを待っていた。

















「すみません、わざわざ」

「構わないよ。工藤くんの家は帰り道だし――――――――――・・・・誰かとこれから、待ち合わせみたいだし?」
「え?」















 新一は目を見開く。

 珍しい表情に、高木はピンと来た。





















 ―――――――へえ・・・工藤くんてこんな顔するんだ・・・・



























 いつもは現場で会うことが多く。

 だから、張り詰めた顔しか見たことが無かったのだが。





 ふふーんと、高木は微笑う。





















「・・・・何、ですか?」

「いやー。いいねー待ってる人がいるのって」

「何言ってんですか。服部ですよ」

















 新一は笑い出す。

 ますます見たことの無い新一の表情に、高木は少し笑った。





















「高木刑事は・・・・佐藤刑事と、どうなってるんですか?」

「ええっ!?」

「――――・・・その様子じゃあ、まだまだですね」

「ぼ、僕の事はほっといてよ!」















 いきなり話を振られ高木は焦る。

 真っ赤になってうろたえる姿に、今度は新一が笑った。













「もたもたしてると、誰かに盗られちゃいますよ?」

「わ、解ってるよ」

「・・・俺も結構、好きだし。佐藤刑事」

「え!??」













 口の端だけ上げて、微笑う新一。

 闇夜に浮かぶ鮮やかなその表情。





 高木は瞬間、見惚れた。































 ――――――~~~~っっっ!!!こらこらこら~~!!



 俺の思考回路戻ってこ~~~い!!!































「・・・高木さん?」

「まままま、まあ、誰がだだだ誰を好きになっても、そそ、それはそれぞれのじじじ自由だよ、うん」

「日本語ヘンですよ」



















 自分もひとつ買った缶珈琲を飲みながら、

 新一はやっぱり微笑(わら)っている。













「あ、あのね工藤君」

「あー、もうこんな時間かー。やっぱ送ってもらえます? あの道、結構夜、変態が多くてやんなっちゃうんですよ」

「・・・・・へ?」

「俺って見かけは良いから、そのテのやからに大人気みたいで。別に蹴り食らわせりゃオッケーなんですけど、最近、面倒くさくて・・・・」



















 新一は『ふわぁ~』とあくびをしながら、そう語る。

 とんでもない事をさらりと喋る姿に、高木は呆気にとられた。











 どうやら日常茶飯事の様で・・・

 しかも、それをいつも難なくかわしているらしい。







 何故か・・・妙に納得をしてしまった。



































「ん?」











 ぷるぷると。

 新一のポケットが、震える。







 取り出し話し始めた彼。

 しかし『あ、そ』と一言だけ呟くと、早々に電源を切ってしまった。





 ・・・そして、ちょっと上目遣いに高木を覗き込む。

















「何かあったの?」

「いえ、その――――・・・実は、なんか迎えに来たらしいんで・・・やっぱココで・・・・」

「あ。そーゆう事か。解った」

「すいません、待っててもらったのに」



















 すまなそうな新一。



 ・・・・そんな顔にもドキリとする自分に『落ち着けワタル~』と心に言い聞かせた高木は、駅の反対側に走っていく新一を、手をひらひらさせて見送った。
































ひとくぎり



























 ・・・・反対側の駅を過ぎ、少し歩いた所に止まっているバイク。

 そして、それに跨っている影一つ。







 近づき、その影からメットを渡された新一。





















「お疲れさん」

「・・・・っとに疲れたぜ」





















 小さく息をつき、後ろに跨る。

 そうしてその背中に体重を預けると・・・・





























 ・・・・少しの間だけ、目を閉じた。



















Fin