lunch time





「あ。いたいた」

「佐藤さん?」

「ねぇ工藤くん、ちょっとお茶しない?」






















ひとくぎり





















 お世辞にも良いとはいえない天候。

 その丁度お昼時、新一は大学の敷地内で見知った人物に気付いた。



 佐藤美和子。

 いつもお世話になっている目暮警部の部下で、本人は全く気づいていないが警視庁内ではかなりの人気を誇る人だ。















「何しるてんですか・・・・・? ここで、何かあったんですか」

「違うわよ。今日は非番なの」

「・・・・もっと解んないんですけど」

「聞いてよ! またお母さんが見合いもって来たの。休みに家にいるとうるさいのよ~」

















 スーツじゃなく、パーカーにジーンズのスカートというラフな格好。



 背が高くてスタイルの良い佐藤刑事。

 ちょっと高いミュールも履いてるから、こうして並ぶと、新一と大して身長が変わらない。







 その佐藤が、とにかくどうしてこの大学に現れたのか。

 さすがの新一も首をかしげた。

















「工藤君さ、今日まだ授業ある?」

「いえ・・・・昼メシ食べたら帰ろうかと」

「よし、お昼おごる。だから、今日1日私に付き合って」

「ええ?」

「先約有り?」

「・・・・・っていうか・・・・俺といても、あんま楽しくないですよ」

「あら、そんな事ないわよ? 貴方と一緒にいると、道行く人々みんな振り返るから気分いいもの」













 美和子はにっこり笑ってその腕を組んだ。

 瞬間肌に当たった感触に、新一は顔を赤くする。

























 ・・・・・・結構着やせするタイプなんだ・・・・・そう心の中で、思って。













 









「どうしたの?」

「い、良いんですか? 彼氏とかに怒られちゃいますよ」

「それ嫌味? いないから母さんが見合い持ってくるんじゃない」

「あ・・・それもそうですね」

















 自分が何を言ってるんだか新一は焦る。

 はははとカラ笑いしつつ、『じゃあ荷物とってきますから』とその場を離れた。






























ひとくぎり























「あれ・・・・・」

「工藤君?」

「・・・・・どうしたんですか高木さん」















 校舎内の廊下。

 ロッカーからショルダーを取ってきた新一の前に、何故か警視庁の高木刑事が現れた。

















「そうか。この大学通ってるんだ」

「事件でも起きたんですか?」

「違うよ。弟がね、ここなんだ。3年生で・・・・ちょっと仕事のついでに近くに来たから、届けるものもあったし」

「へ? 高木さん、兄弟いるんだ」



















 新一はちょっと驚いた。



 そう言えば、事件関係以外であまり話をしたことがない。

















「工藤君は2年だったよね。もう帰り?」

「ええ、でもこれからちょっと・・・・・」

「あ。デートだ?」

「・・・・・って言うんですかねえ・・・・実は、佐藤刑事に誘われて」

「え!? さ、佐藤さん?」























 高木が面白い程に動揺した。











 そう言えば高木さん・・・・・・そうだったっけ・・・・・・・こりゃ面白いかも。

 心の中でそう思い、新一はニッコリと高木に微笑う。





















「そうなんです。これから一緒にお昼食べに行く所なんですよ」

「へ、へえ」

「もし良かったら高木さんもどうですか?」

「ぼぼ、僕は仕事中だし・・・・・・」

「じゃあ仕方ないですね。そういや俺、初めて見ましたけど・・・佐藤刑事のラフな私服姿、すっごい可愛いですね~。あ、じゃあ待たせてるんで行きますね」

「ちょーっと待っった!!」























 くるりと背を向けた途端、高木が新一を引き止めた。

 ゆっくり振り向くと、そこには困った表情をした高木ワタル。















 ・・・・・・新一は、意味ありげに微笑う。























「何ですか?」

「だ、だからね、その、つまり・・・・・」

「・・・・・・今日のランチは高木さんのおごりですよ?」





















 そう言った途端、高木の表情がぱっと変わる。

 年上の人にこう言うのもなんだが・・・・・可愛いいなあ高木さん。と新一は思った。

















 まあ、人の恋路がどうのと言ってられる立ち場じゃ自分もないのだけど・・・・・・・・・

























「そういや、蘭さん今日は旅行かなんか?」

「へ?」

「・・・・・駅前でボストンバック抱えてるの見たんだ」

「ああ、あいつは合宿で静岡に行くって言ってました」

「ふうん。相変わらず空手頑張ってるんだね」

























 もちろん、高木には何の悪気もない。

 しかし今の言葉は確実に新一を不機嫌にした。







 今日の朝。

 蘭から電話があって、これから3日間合宿に行くんだと言われた。



 もちろん新一は女子部だけだと思ったのだが、なんと男子部も合わせてのことらしく・・・・・・・・・

 新一はやっぱり面白くなかったのだ。













 前に蘭の同じ大学の空手部の人達に会った事があった。



 ・・・・・・・・・その中に、明らかに蘭に惚れてる輩がいたのだ。



















 その事を一気に高木は思い出させた。































「高木さん、やっぱり仕事中はマズイんじゃないですか・・・・・・?」

「え?」

「きっと佐藤さんもそう言いますよ。すいませんでした誘ったりなんかして・・・・・・・じゃ、また」

「く、工藤君?? え? どうして?」

























 呆然と立ちすくむ高木。

 新一は、もう振り返ることはなく歩き始め・・・・・・・やがて高木の視界から消えた。


























ひとくぎり























「工藤君、おっそ~い!」

「すみません、車あっちですから行きましょう」

「車、持ってるの?」

「人混み苦手なんですよ。だから移動はこればっかりですね」

「へえ~」





















 高木さんには悪いけど。

 俺だって、やっぱり人間なわけで。











 今日は人の幸せ手伝ってやれる気分じゃなくなっちゃった・・・・・・・・・





























 ・・・・・・それに、追っかけてきて俺たちに割り込んでくるくらいじゃないと駄目だよ。



 ちょっと癪に障っちゃったからさ・・・・・・・ごめんね高木さん。

































 新一は空を見ながら、小さく息を付く。



 未だに幼なじみから抜けられない2人と、先輩と後輩から進めない2人。





























 さて・・・・・・・・・どっちが先に前に進めるんだろう?

















Fin