カナシミブルー

 

 普段は決して弱みを見せない分、ふとした時にものすごく抱きしめたくなる時がある。

 最近は雨が多くて、三月や四月なんかよりずっと寒い日が続いて。
 だから・・・

 きっと人肌恋しくなっているだけだ。

 そう平次は自分に言い聞かせながら・・・
 腕の中の口唇に触れた。

 


 

「なあ。お前明日講義は
「・・・工藤は
「行かねー」
「どないしたんや・・・今月になって変やぞお前」

 真夜中。
 ひと波終った後、ごそごそ擦り寄ってくる新一。

 まるで猫みたいな仕草に、平次も猫をあやすように顎の下を少し撫でた。
 すると顔を上げ、微笑う。

「そうだな。変だよな」
「ああ。変やな」
「でもこーゆー俺ってお前好きだろ
「そらなあ・・・けど」
「じゃあもっかいヤろうぜ。俺、全然足んねえ・・・」
「ちょ、くど・・・」

 新一は平次の滑らかな鎖骨を撫でた。
 そのまま指は下へ降りて行き、綺麗な脇腹から腰へと滑らせる。

 再び、綺麗な顔が微笑う。
 耐え切れず平次は身体を反転し、自分よりも細い身体を組み敷きその足を割って入った。

 ・・・やっぱり変や。
 何、あったんや

 そう問いたいが平次は止める。
 至近距離での新一の表情はとても淫らで艶やかで、自らを進める度に震える身体がもっと見たかったから。

 聞いた所で答えてくれはしない。
 言葉で弱音を吐かない彼は、こうして快感を得る事により気を紛らわしているのだ。

 関わった事件でまた嫌な事を言われたのか。
 難癖付けられたのか。容疑者の関係筋に逆恨みされたか・・・

 何にせよ、新一の深層心理に突き刺さったのには間違いない。

「はっとり・・・やめるな、まだ・・・抜くな・・・」
「・・・俺はかまわんけど・・・お前顔色悪いで もう寝た方がええんちゃう
「まだ寝たくねえんだよ・・・下手に寝たら・・・夢、見るから」
「夢

 だから新一は疲れたかった。
 くたくたに、没頭して、心も身体も疲れ果てて寝れば・・・

 夢なんか見ずに眠れるから。

「解った。足、もっと開けや」
「っ・・・
「ホンマ損な性分しとんなあ・・・ま、こーして俺頼ってくれんのは・・・嬉しいんやけどな」
「はっと・・・り・・・」
「・・・工藤」

 でもやっぱり平次は心配になる。
 これは『本当の彼』では無い。

 本当の工藤新一は・・・

「服部・・・
「寝ようや。お前、今日はもう無理や」
「そんな事ねえ」
「俺は逃げへんて。明日も、明後日も居てるから。そばに・・・居るから」
「・・・」

 こうしてすがる様な瞳も。
 熱いのに冷たい身体も。

 勿体無い気もするけど、これはヤケになってるだけだから。

 目の前にいる気弱な彼も『工藤新一』には間違い無いのだけれど・・・
 今、彼に必要なのは『快楽』では無いのだ。

 ・・・必要なのは。

「じゃあ寝る。でも・・・目が覚めて隣に居なかったら許さねえからな」
「へいへい」
「・・・ごめん。俺ばっかりで、お前に・・・してやれなくて」
「どーせなら普通の時に思いっきし甘えてくれると嬉しいんやけど
「うん・・・ごめん」

 そうして平次に口唇を重ねる新一。
 ただ触れただけのそれはでも・・・

 今までで一番幸せな甘い味がした。

 


 

 普段は決して弱みを見せない分、ふとした時にものすごく抱きしめたくなる時がある。
 最近は雨が多くて、三月や四月なんかよりずっと寒い日が続いて。

 だから・・・
 きっと人肌恋しくなっているだけだと思うけど。

 

 平次は・・・

 やっと眠った腕の中の口唇にもう一度そっと触れ、眠りに付いた。

 

[了]

 

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