体温よりも熱い夏

 

「お前いい加減離れろよ︙︙」
「嫌や」
「じゃあクーラーの温度もっと下げろ。熱いんだよてめえは」
「ほいほーい」

 


 

 真夜中。夏。
 そして、新一の部屋。

 八月に入って暫く過ぎ、日本の夏は連日連夜、暑さの記録を更新し続けていた。

 今日も東京では三五度を越したらしい。
 他の地域では三八度を越した所もあるらしく、それをニュースで見たとき新一はあからさまに『うげ』と言う顔をした。

 大学も夏休みに入って何処でも遊びに行き放題なのだが、あまりにも暑くて全く外に出る気がしない。
 そんなインドア生活を続けていた新一の元に、本日昼過ぎ、元々色の黒い肌を更に黒くした服部平次が現れた。

『思った通りの堕落生活やな。朝から晩までクーラーつけとるんか』
『うるせえな。暑い上に余計に暑苦しいテメエ見せにくんじゃねえよ︙︙何だその色 どっか海にでも行って来たのか』
『おう。三日くらい千葉ん海にな』

 勝手知ったる何とやら。
 平次は新一の了承も得ず、ずかずかと中へ入っていく。

 そして新一もそれを別段咎めもせず、後に続きリビングへ戻っていった。

 


 

『なんか飲むか
『おおきに。喉カラカラや』
『今日はホント暑いみたいだな。外で運動はしない方が良いって言ってた』
『︙︙せやなあ。運動は、中でするもんや』

 意味ありげに平次は微笑う。
 そしてその意味は、新一がグラスに氷と冷珈琲を入れ持って来た時に判明する。

 ︙︙渡したグラス。
 それと共に平次が新一を引き寄せたからだ。


『二週間ぶりやな、工藤』
『︙︙真昼間からサカッてんのかよ』
『しゃあないやん。そんなカッコで目の前チラつくんやもん』
『家ん中でどんな格好しようと俺の勝手だ』
『せやから悪いなんて言うてへんやんか』

 それどころか最高や。
 そう目が語ると、新一の腰を抱えたままゴクリとひと口それを飲んだ。

 新一の姿ときたらノースリーブのシャツに短パン。
 細い手足や首筋が、少し汗ばんでいるその姿が誘ってなくて何なのだろうか

 ︙︙再び微笑う平次。

 その口唇には氷が見え隠れしている。

『︙︙たく』

 それに微笑い返す新一。
 小さく息を付きながらも、両手を平次の頬に当てると︙︙

 ︙︙その氷を一緒に舐め始めた。

 


 

 そうしてワンラウンド終了。
 もつれ合ううちに狭いソファの上から下の絨毯に崩れ落ちた二人。

 しかし覆い被さっている体温の熱さに新一が逃げようともがく。
 平次が離す筈もなく、クーラーの温度を限度まで下げようとしたのだが︙︙

「アカンわ工藤。これ以上は下がらへん」
「マジで
「外気温が暑すぎなんやなー ちゅうか工藤が熱すぎ
「うるせえな。じゃあもう終りだ。俺、シャワー浴びてくる」
「まだ二回しかやってないやん︙︙工藤かてまだ足りてへんやろ
「︙︙ちょ、はっとり︙︙」

 起きようとした新一を平次は逃がさない。
 再び中心を巧みに弄り始め、その身体から力を奪う。

 ︙︙そうして新一が平次の背中に腕を回しキスをしてくるのに、二十秒と掛からなかった。

 


 

 その後、結局合計何ラウンドやったか覚えては居ない。
 でも、まだ日は暮れてはいないうちに二人はシャワーを浴びに行った。

 勿論そこでも平次は新一にちょっかいを出す。

「まだやんのか︙︙ ほんと溜まってたんだな」
「工藤かてそーやんか。復活早いで」
「ひとりでやるにも限界、あるしな︙︙」

 汗とお湯と蒸気と他の液体が混ざり合う中、声を殺しながらの行為は続く。

 

 ︙︙暑い熱い夏。

 体温よりも、熱い今年の夏。

 

 抱き合っている方が、涼しい夏。

 

[了]

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