蛇紋石は静かに佇む

 

 

 

6月21日の誕生石(サーペンテイン serpentine)(和名:蛇紋石)

 

特徴:優雅さと気品ある品格の人格者
宝石言葉:高潔・上品・しとやか

 

 

5月4日の誕生石(ファントムピラミッド phantom pyramid)(和名:金字塔幻影水晶)

 

 

特徴:好きな事は力尽きるまでやるスポーツマン
宝石言葉:頑張り屋・努力家・健康

 


 

 

 

 

「だってさ」
「ん?」
「誕生石。月別だけじゃなくて、日別でもあるみたい」

 

 

6月21日。金曜日。
台風から温帯低気圧に変わったものの、雨の勢いは未だやまず。

黒羽快斗は、湿気による髪のはりつきを気にしつつ、手元のタブレットを差し出した。

 

 

その相手は工藤新一。
同い年で、同じ作りの顔を持つ唯一無二の存在。

東の名探偵。

 

 

・・・・彼の別な姿と、対極にある存在。

 

 

 

「へー。『優雅さと気品ある品格』ねえ」
「加えて『高潔』ってトコが俺じゃね?」
「はいはい。ほらアイス珈琲」

 

 

まだ6月だと言うのに東京は先日真夏日を記録。
ここ数日は雨と言うこともあり、気温はそんなに高くはなかったのだが。

・・・・この湿度だけは、そう慣れるものではない。

 

 

 

「さんきゅー。あ、ちなみに新一の5月4日はコレね」
「ファントムピラミッド・・・・・水晶か」
「『好きなことは力尽きるまでやるスポーツマン』だって。いやー、まんまだね」
「スポーツマンってのは違うと思うけどな」

 

 

 

ただ素直に新一は微笑(わら)う。
カランと氷が割れる音が心地よく耳に響くと同時に、「そうかなあ」と快斗は呟いた。

 

 

 


 

 

 

 

この季節は雨の季節だ。

夏至でもあり、一年中で一番昼が長い日のはずだが――――――――――・・・
雨のお陰で今日は夜が早かった。

現在、19時を過ぎたところ。

 

 

 

「服部まだ来ねえの?」
「さっき米花駅着いたってメール来た。つまみ買って来いって言っといたから、そろそろだろ」
「となると後は・・・・・」
「白馬はあと一時間くらいかな? さっき成田着いたって。本場のワイン頼んどいたから、期待しようぜ」

 

 

 

今日は快斗の誕生日。
彼ら四人が必ず集う、年に四度ある日のうちの一日。

・・・・地球上のどこにいても、必ず顔を合わせる日。

 

 

「お前、フランスまでワイン買いに行かせたのか」
「ワインは『ついで』に決まってんじゃん。なんかさ、あっちで事件あったらしくて」
「へー・・・事件、ねえ」
「あ。来たみたいだぜ、服部」

 

 

 

意味ありげな視線を向ける新一。
けれども快斗はそれに答えず、聞こえたドアホンに顔を上げた。

・・・・新一は軽く息をつき、笑みを見せる。

 

 

 

「じゃあまず夕飯にするか。快斗、服部頼む」
「オッケー」

 

 

 

この物騒なご時世。玄関の鍵は、当然ながら施錠済み。
新一はそれの解除を快斗に頼むと、自身は夕食の支度のためキッチンへ向かった。

 

 

 

 


 

 

 

 

特別な贈り物なんていらない。
ただ、存在を確かめられれば、それでいい。

今日は6月21日。
蛇紋石という名の誕生石が、ただリビングのテーブルに置かれているだけ。

 

 

不愉快なストレスや変化をそらし。
自分自身のバランスを保ち。

 

 

・・・・・集中力や洞察力を高め、身を護るというその石。

 

それは――――・・・・

 

 

 

 

 

彼がいま置かれている状況を知り尽くしているように、静かに佇んでいる。

 

 

 

 

特別な贈り物なんていらない。
だって。

こうして一緒にいてくれるその事。

 

 

 

 

それが・・・・・・

何よりものギフトだってわかっているのだから。

 

 

 

 

Fin